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破滅の魔女は異世界を救う  作者: 藤川秋
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第62話 仲間

携帯が欲しいな、と思った。

いつでもどこでも、他人と連絡を取り合える便利な機械は、冒険者通しが連絡を取り合うには最高の代物だと思うのだが。


「アルは、警備の仕事が終わったら、どこか他の街に行くの?」


「今のところは何の予定も立ててない。誰かとパーティーを組んでる訳でもないからな」


「へえ、ソロなんだ。私と一緒」


「そうなのか?意外だな。それだけ魔法が使えるなら、誰かしら誘ってくるものだろ」


「全然。知り合いも特にいないし、一緒に試験受けた人達は妙によそよそしいっていうか」


「一体何をしたんだ、お前は……」


別に大した事はしていない。

他の人からすれば、そうでは無かったというだけの話で。


実力の差というのは、ほんの少しの差であれば羨望の目で見つめられるものだが、開けば開くほど畏怖の対象へと変貌する厄介な代物でもある。例えば私のように。

魔女呼ばわれされたり、真顔で化け物扱いされたり、たとえそこまでいかずとも、こうしてソロプレイを余儀なくされる程度には人が寄り付かなくなる。

まともに話したことすらないくせに、周りが勝手に近寄り難い人間像を作り上げるのだ。

人間誰しも、理解できないものになど近寄りたくないのである。

例えば、怖いから。例えば、面倒だから。

理解できないから、どう対応すればいいか分からなくて、予測の出来ない未来に恐怖して、それならば遠ざけてしまえばいいと距離を取る。

中には、敢えて攻撃することで排斥する者もいる。典型的な例は、いじめをすることだ。


(そういう時期もあったな)


まあ、ここまでごちゃごちゃ言っておいてなんだけれど、別に私はこれっぽっちも気にしていない。

強がりではなく、寧ろ諦めというか、一生付いて回る宿命のようなものだから、いちいち気を使っていては自分の身が持たないのだ。


故に私は、基本的にはぼっちである。

如何せん、一人でいることにも慣れてしまったし、それはそれで気楽で楽しいので、周りが距離を取りたいというのなら、こちらから無理に接するつもりも無い。

今のところ、魔物もほとんど問題なく倒せているし、しばらくは誰かとパーティーを組むことも無いだろう。


「アルは、何でパーティー組まないの?」


「組んだことが無いわけじゃないんだが……Cランクに上がった頃に、入ってたパーティーを抜けてな。それから組む相手が見つかってないんだ」


「抜けちゃったんだ、前のパーティー」


「方向性の違いってやつでな。俺は、もっと上を目指したいと思っているし、ランクの高い依頼をどんどん受けたいと考えていたんだが、他のメンバーはそうじゃなかったみたいだ」


「なるほど。それじゃ、しょうがないね」


意思や目的を共有することは、グループとして活動する上では特に重要なことだ。

意識の違いは、行動に現れる。少しでもずれが生じると、トラブルを生み出す原因になりかねない。


「旅すがら、メンバーを探してみたりもしたんだが、上手くいかなかった。なるべく、早い内に見つけたいとは思ってるんだが……」


「やっぱり、ソロよりはパーティーの方がいいのかな」


「それはそうだろう。特に、Cランク以上になったら、ほぼ必須と言ってもいいくらいだぞ」


「え?何で?」


「何でって、お前……それこそ、サイラース森林にいるような高ランクの魔物を、一人で倒そうとする馬鹿なんているわけが無いからだろう。ルールとして決められてるわけじゃないが、パーティーを組んでいないと、依頼によっては受注すらさせてもらえないって話だぞ」


(全部一人で倒してたとか言えない……)


サイクロプスとか、一人で四体同時に倒したけれど、尚更口が裂けても言えない。


しかしながら、依頼すら受けさせてもらえないのはさすがに困るな。

サイラースでなら、実力の程はおおかた知れ渡っているし、問題なく過ごせるかもしれないけれど、いつまでもここに居るとは限らない。

私が異常なだけで、アルの言っていることは正しいし、一人でいいなどと悠長に構えている場合ではなくなってきた。


「───あ、良いこと思いついた」


「ん?なんだ急に」


「私とアルで、パーティー組まない?」


簡単な話だった。

お互いに仲間がいないなら、私達が仲間になってしまえばいい。

とは言え、他にもちゃんと理由はあるけれど。


「……本気か?」


「本気。別にいい加減なこと言ってる訳じゃなくて、魔法を教わりたいならその方がいいかなと思って。実戦でどういう風に使うのか、間近で見た方が為になると思うよ?」


「それは、確かに」


そう。それこそが一番の味噌だ。

日常で使うのと、実践で使うのとでは勝手がまるで違うわけだから、仕事を共にするということは、大幅に成長できるチャンスでもある。

相性は勿論大事だけれど、それだけでもメリットは十分にあると言えるだろう。


「まあ、すぐに決めなくても大丈夫だから、一応考えておいて」


「───いや。組もう、パーティー」


「……本気か?」


同じ言葉を返しちまった。

この前もそうだったけれど、やけにあっさり決めるというか。それが前向きであれ後ろ向きであれ、思い切りは良い方なのだな。


(もう少し考えた方が良いのでは……?)


まあ、本人が良いのなら、今はそれでいいか。

駄目な時は、ちゃんと言えばいいだけの話だ。折角、その機会もあるのだから。


「俺も、本気だ」


「分かった。それじゃあ、改めてよろしくね」


「ああ」


こうして私は、この世界に来て初めて、仲間ができた。

対等な関係、という意味でなら、二度の人生の中でも初めてかもしれない。

早速、明日あたりにでもギルドに申請しに行くとしよう。

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