第49話 試験結果
全員がもれなくソファに座ったところで、早速本題が切り出された。
「さて、試験の結果を聞こうか。彼女の仕事ぶりはどうであった?」
「私としては、何ら問題はないかと思いますが。他の方々はどうでしょう?」
その問いかけに、誰もが問題ないと頷く。
第三者の立場として呼ばれた人もまた、不正は特に無かったと判断したようである。
正直なところ、呪文を必要とせず魔法使いらしい格好も仕草も一切感じられない私を見て、何かしらの難癖をつけられたらどうしようかと考えていたのだが、その心配は杞憂に終わり安心した。
「まあ、そうであろうな。当てが外れることが無くて何よりだよ」
そう言いながら、アルヴァンさんは机の上に何かをそっと置き、それを私の方へ差し出した。
差し込む光に合わせて薄ら光るプレート。
打ち込まれた文字は、見覚えのある羅列。
「ギルドカードじゃないですか」
「うむ」
「え、先に作っちゃうのって有りなんですか?」
「別段問題は無いだろう。受からなければ、破棄すればいいだけの話なのだからな」
(そういう問題か……?)
本部長がそれでいいと言うなら、これ以上は何も言わないけれど。
ランクが上がったからといって、何かが劇的に変わるわけでも無かったが、プレートにはしっかりとCの文字が刻まれている。
「ありがとうございます」
「君のことだから、すぐにまたカードが作り替えられそうな気はするがな」
「さすがに、それはどうでしょうね」
「今回は、こちらの都合でCランクに留めさせてもらったのだ。私としても、機会に恵まれることを祈っているよ。それから一つ、頼みたいことがある。これを君に持って行って欲しい」
「これは?」
「サイラース支部に送る、試験結果の報告書だ。試験を受ける旨の手紙は先に送ってあるが、冒険者の情報が変われば支部全体に知らせておかねばならん。故に、サイラースの分は君に頼みたい。どちらにせよ一旦戻るのであろう?」
今まで特に触れては来なかったが、王都に一緒にきた配達員の彼は、試験には同行しておらず先にサイラースへと帰してある。
その際、支部からの申し出を受理したことと、こちらでそのまま試験を受ける旨を書類に書き起こし、彼に届けてもらっている。
アルヴァンさんの言う通り、ダンカンさんには自分の口から報告をするつもりでいたけれど。
「本部からの正式な文書を、私が届けるのは些か問題があるように思いますが……」
「君の言いたいことも分かる。だがはっきり言って、君に任せた方が安全で、尚且つ一番早く届けられる。よもや、大事な書類を無くしたり、ましてや途中で開けたりなど、聡明な君ならばするはずもあるまい?」
半ば脅し文句のように言いながら、その実妙に褒められているようである。
裏を返せば、本部長にはそれだけ信用されているということか。
ならば、その期待に答える他無い。
「承知しました、お任せ下さい」
「うむ、是非とも頼んだ。それから、言うのが遅くなってしまったが。合格おめでとう、シオン」
「おめでとう、シオンさん」
アルヴァンさんに続いて、まだ部屋に残っていた試験官達も、祝福の言葉をかけてくれた。
彼らと握手を交わす。
あまり親密な関わり合いをしてこなかった彼らではあるが、心からの祝辞であることは態度や表情から分かった。
友達のようになることは出来なかったけれど、実力が認められたと思えば、それだけで十分有難い。
「明日にはもう出発するのか?」
「そうですね、届け物もあることですし。王都を楽しむのはまた今度にします」
「そうか。是非とも、また王都に寄るといい。少しでも、君の成長した姿を見られることを楽しみにしている」
「はい、精進します」
アルヴァンさんと、再び堅く握手を交わしてから、私はギルドを後にした。
大事な書類は収納魔法できっちりしまって、空きっ腹を満たすべくお店を探す。
今日こそは、ゆっくりと身体を休めよう。
何を食べようか。何が食べられるだろうか。
頭の中は、すっかり食事のことでいっぱいになるのだった。




