第43話 昇格試験を受ける
翌日のこと。
眩しい光に起こされて、今日も王都グランベールでの一日が始まる。
実のところ、私と配達員の彼はサイラースには帰らず、それぞれギルドが手配してくれた宿に泊まっていた。
昨日の話し合いで、昇格試験をすぐに受けても構わない旨を話したところ、それならこちらも楽で助かるとすぐに手を回してくれたからである。
件の、第三者を付けた方が周りもうるさく言わないのではという進言も、その通りだと賛同を得ることができた。
さすがは本部長と言うべきか、伝手もあるとのことなので、纏めてお願いしたところで昨日の話し合いは終了した。
昨日の時点では当然、受注する依頼の選別や人員手配が終わっていないのだから、詳しい話は何も聞けず終いだったが、それもすぐに解決することだろう。
第三者を立てるのには少し時間がかかりそうな気もするが、多少待たされたところで特に問題あるまい。
「失礼しますよ」
朝食を取り終え、街に出るでもなく部屋で寛いでいると、扉がノックされた。
呼びかけと共に中に入ってきたのは、この宿の女将を務める女性だった。
「女将さん。どうしました?」
「お客さんが来てましたよ。ギルドに来て欲しいとのことでしたけれど」
「本当ですか、ありがとうございます」
わざわざ呼び付けるということは、もう準備が終わったのであろうか。
人を探してくるのに、短くても3日程はかかるかと思っていたのに、随分と早い呼びつけだ。
別の部屋に泊まっていた彼も呼び、支度を済ませてギルドへ向かうと、昨日と同じ客間へと通された。
「おはようございます、アルヴァンさん」
「うむ、おはよう。昨日はよく眠れたか?」
「はい。とても居心地の良い宿でした」
「ならば良い。早速だが、本題に入ろう」
促されて、ソファに座り込む。
その時、アルヴァンさんの横に居た男性と、初めてまともに目が合った。
そう、実は知らないおじ様が、先程からこの場に一緒にいるのだ。
おじ様だけでなく、比較的若い男性達も、その横に並んで座っている。
「先に紹介しておこう。彼らが、今回の試験官を務める者達だ」
呼ばれた順に挨拶する。
年齢の若い方はギルド側の人間で、一番歳を重ねていると思われる男性は、仲介役として呼ばれた人であった。
どうやらその男性、元は王宮に務めていた騎士なんだそう。
今は王宮から命を受けて、主に貴族の子供達が入学する騎士養成学校で教員を務めているが、運の良いことに今日がたまたま休みだったということだ。
何より驚くのは、そもそも何故彼と本部長が知り合いなのかということである。
その答えは、本部長自身が貴族の出であり、同じく王宮に務めていた元騎士だからなのだ。
自己紹介の際は、同じギルドの人間として対等に接するため、お偉い方が相手でない限り名前しか述べないそうだが、実際にはきちんと名字も持っている。
服装が豪華なのは本部長故かと思っていたが、貴族だからという点も含まれていたようだ。
どうして騎士がギルドに、と思う人もいるかもしれないが、国としては冒険者もまた重要な戦力の一つであるので、信頼の置ける人にギルドを預けるのが一番都合が良い。
その点、家柄も良く、腕前も申し分無かったアルヴァンさんを本部長に据えることは、メリットが大きい話だったのだろう。
彼と本部長は、一緒に働いていた時の同期で、仲の良い仕事仲間であったという。
確かに、それなら試験官としては適任だ。
実力も申し分無いし、立場的には王家側の人間なのだから、監視の面でも影響は大きい。
「皆様、どうかよろしくお願いします」
私の呼びかけに、彼らは優しく頷いてくれた。
「さて、肝心の試験内容だが。実は、早急に解決してほしい依頼がある。ランクとしても丁度良かったので、それに決めさせてもらった」
「具体的には、どのような?」
「ここからしばらく向かった先に、鉱山があるのだがな。もともと、魔物が全く出ないというわけでもなかったのだが、奥に厄介な魔物が住み着いてしまったようだ。それを討伐してきて欲しい」
「なるほど、承知しました」
鉱山となると、生活面にも大きく関わってくるところだ。
まともに仕事が出来なければ、その分お金が稼げなくなる。それは、ダメージとしてはこの上なく大きい。
ギルド側としても、あまり長く放置しては市民からの評価が下がってしまうだろう。
お互いのためにも、迅速な解決が好まれる。
この前の調査依頼に比べれば、ランクとしては下回るが、決して気を抜かないようにしよう。




