第42話 認めてもらえた
「ふ……はは、ははは!」
豪快な笑い声が聞こえる。
その声の主は、他の誰でもない、アルヴァンさんのものであった。
「いやあ、これは参った!なに、君が只者でないことは、私も見ればすぐに分かるのだがね。その程度のことで、この私を誤魔化せるとでも思っているのかと、思わず殴り飛ばしたくなったのだが。まさか本当のこととは思わなんだ」
「物騒なことを仰いますね……」
「ははは。あくまで気持ちの問題だ、気にするでない」
随分と気が晴れたのか、先程の顔からは想像もつかないほど朗らかに笑っている。
もともと、目鼻立ちははっきりしていても、比較的柔らかい印象の顔立ちをしているので、こうして笑っている姿を見ると、とても優しい人のように見える。
決して冷たい人ではないようだが、少なくとも仕事に関して、とても厳しい人だということはよく分かった。
「良かろう。事実ならば、昇格させることに何の異議も無い」
「あの、まだ一つしかお見せしてませんけど、よろしいんですか?」
「言っただろう、実力は理解していると。だが、この内容で報告書を通そうというのなら、ただ力があるだけでは何の意味も持たん。だから私は憤った。君なら分かるだろう?」
「はい。実力のある人は他にもいるでしょうが、書いてある通りに魔法を使える人は、ほぼいないと言えるでしょうから」
報告書というのは、一つの記録であり、一種の重要な証拠でもある。
会社の書類を偽装すれば罪に問われるように、ルールを守って集団生活する以上、嘘偽りの無いものでなくてはならない。
この世界においては、普通なら、収納魔法やテレポートなどは夢物語でしかない魔法だ。
だからこそ、報告書の正当性を証明するためには、実際に魔法を使ってみせるしかないのだ。
「そういうことだ。だが、君は目の前で、当然の如く魔法を使ってみせた。あの状況で平然と扱うことができるのなら、わざわざ見せてもらわずとも全てが真実だと理解できる。故に、ランクを上げても問題ない」
「それならば、私も異議はございません」
「うむ。だがまあ、ひとまずはCランク辺りが限度だな。それより上は、さすがに騒ぎ立てる者も多かろう。実力だけで言えば、十分に価値はあるのだがな」
「そればかりは、どうしようもありませんね」
私としても、今すぐにランクを上げたい訳でもないので、特に構わない。
本来なら、きちんと仕事をこなし、それに見合った評価をポイントとして付けて、初めてランク上げが行われるのだ。
それを、入ったばかりの新人がいきなり飛び級で上がったともなれば、納得できない人が出てきてもおかしくないだろう。
そればかりは、圧力で抑える訳にもいかないのだし、本部長の判断は間違っていないと思う。
「こちらも体裁というものがあるのでな。君には申し訳ないばかりだが、一つよろしく頼むよ」
「構いません。上げてくださるだけでも、有難い限りです」
「君は賢いのだな。立場というものをよく弁えている。まあ、こんなナリをしてはいるが、私はその辺うるさくない方なのでな。君は随分肝も座っているようだし、もっと寛いでくれて構わないのだぞ」
「有難いお言葉ではありますが、お気持ちだけ」
「そうか、まあ良しとしよう。強要するものでもないしな。それと、これも同じ理由で頼みたいのだが、一応のルールとして昇格試験は受けて欲しい。君ならば難無く受かることだろう」
「承知しました」
Cランクからは、昇格試験があるという話はリーリアさんに聞いたことがある。
きちんと試験を受けて合格したのなら、ギルドの体裁を守ることができるし、誰かに文句をつけられることも無いだろう。実力を証明したことになるのだから。
より確実に足場を固めるなら、第三者を立てて試験するのもありだろうか。
人を選ぶ必要はあるけれど、試験が不正だなどと騒ぎ立てる者がいる可能性を考えれば、良い対策にはなるはずだ。
(……疑りすぎか?)
けれどやっぱり、どの世界にもそういう面倒な人間というものは存在するのだろう。
やらずに損するより、やって損する方がこの場合は遥かにましに違いない。
というより、そもそも試験とは何をするのだろうか。
この前のように、試験官の指示にしたがって何かをするのか、はたまた他の方法なのか。
当然話はしてもらえるだろうけれど、聞かないことには何とも言えないところだ。
「試験はいつ頃、受けさせていただけますか?」
「君が望むなら、今すぐにでも。試験とは言うが、実際にやることは普通に依頼をこなすだけだ。万が一に備えてと、不正をしていないか見張るために、試験官が二人同行する」
どうやら、実戦形式のようだった。
そうなると、第三者を付けるのは少しばかり難しそうだ。
危険に晒されても問題なく、かつ信用できる人物となると、かなり限られてくる。
一応話はしてみるけれど、もし無理そうなら、後から難癖つけるような捻くれ者が出ないことを祈る限りだ。
めでたくも、100pt達成しました!
本当にありがとうございます!
予定もありまして、更新ペースが落ちてましたが、またぼちぼちと更新して参りますので、よろしくお願いします。




