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破滅の魔女は異世界を救う  作者: 藤川秋
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第40話 王都へ到着する

「本当に着いてしまいましたね……移動中も思いましたけど、凄すぎますよ、この魔法」


私の隣から、感嘆の声が上がった。

最初の頃は唖然としていた彼も、王都のすぐ側まで辿り着く頃には気を取り直していた。


「あそこに見えているのが王都ですよ」


「へえ……さすがというか、物凄く大きい街ですね」


直線距離にして、およそ500km。

ごく普通に、道なりに進めば700kmはあるのではないかという場所に、王都は位置していた。

途中に幾つかの小さな街を経由しながら、長い旅路を終えた先に出迎えてくれるのは、重厚な壁に囲まれた巨大な城郭都市である。

門の前には長い行列ができていて、すぐ中に入れるという訳ではなさそうだった。


「確か、王都に入る時はギルドカードを提示しないといけないんですよね」


「はい、その通りです。王都は入る度に税金がかかりますけど、人によって取られる額が違うんです。特に、冒険者なんかは出入りが激しいですから、他の人より安くしてもらえるんですよ」


「なるほど、それを判断するための身分証ってことですか」


確かに、冒険者が仕事をするためには、ほぼ毎日街の外に出なければならないのだから、同じ値段設定では不公平すぎるというものだ。

カードを受け取った際に、必ず提示するように言われたことも、この話を聞いた後ならばより納得できる。


「シオンさんは冒険者なので左側に並んでください。入ってすぐ右側のところで合流しましょう」


「分かりました」


効率化のためだろうか、左右で列が分かれているようだった。

あくまで配達員でしかない彼は右側へと並び、私は言われた通り左側に並ぶ。

ギルドでよく見かける風貌の人達が、同じ列にずらりと並んでいるのが見えた。


「次、どうぞ」


思いの外、列はさくさくと前に進み、あっという間に自分の番が迫ってきた。

カードを見せ、指定された金額を払えばお終いであるので、手慣れた人達は先にお金を用意して待っている。

門番の側まで近付き、会話が聞こえてくれば、お金を用意するのに時間はかからない。

流れにしたがって、何の問題もなくお金を払い終えると、王都グランベールへと初めて足を踏み入れた。


たとえ王都といえど、街並みそのものはサイラースとさほど変わりない。

石造りの家々に、石畳の道。同じ国内なのだから、似通っていて当然の話か。

都会に出た途端、高層ビルに包まれるような目新しさも特になく、技術や文化のレベルにおいて劇的な違いは無いようだった。

しかしながら、街に漂う人々の熱気は、勝るとも劣らず凄まじい。

その点、国の中心というだけあって、街の広さに負けないほど辺りは賑わっていた。


「こちらへ、シオンさん。本部は、この大通りを抜けた先にありますよ」


エスコートに従い、ひたすら大通りを歩き続けると、目的の建物が見えてきた。

サイラースよりもさらに大きく、平屋の多いこの世界では珍しい三階建てで、その風貌はまさにギルドの本部に相応しい。

中は、およそ右半分が吹き抜けになっていて、そこから二階の様子を少しだけ覗くことができる。どうやらフリースペースらしい。

開けているのは二階部分までなので、三階に何があるかは行ってみないと分からないが、知る機会があるかは今のところ不明である。


「私は仕事を済ませてきますので、ひとまず二階で待ってていただけますか」


「了解です」


報告書を渡しに行くのを見送ってから、二階に上がり席を探す。

奥側に空いている場所を見つけ、無事に確保すると、座って一息ついた。


「さすがに疲れた……」


送迎係に任命されたのが昨日。

そして、今日の集合時間が正午。

一応、時間としては丸一日空いているものの、これまでの怒涛の流れによる疲れを癒しきるには、少々時間が足りなかった。

今日もまた、ここに辿り着くまでにテレポートを何回も使っているので、魔力も体力もそれなりに消費している。

魔法を使っているだけと侮ってはならない。意外と疲労感がずしりと来るものである。

たぶん、というか確実に、この後もまた魔法を披露しなければならないのだろう。

それまでに少しでも休んでおきたい。


ついでに言うなら、甘いものが欲しくなってきた。

でも手持ちにお菓子は無い。残念だ。

この世界だと砂糖は高級品らしく、食文化としても、地球にあるようなお菓子は存在しない。それもまた残念だ。

予め用意しておいた果物にかぶりつきながら、地球のお菓子に想いを馳せる。

食に関して、そこまで肌に合わないことは無かったけれど、たまには味も見た目も凝った料理が食べたくなるというものだ。

何だか、お金が必要以上に増えすぎる一方なので、いっそのこと高いお金を払って調味料を揃えるか、そういった料理を提供する所で食べるのもありかも知れない。


「王都の人なら、そういうとこ知ってたりするかな……」


そんなことを聞く暇があるのかという話ではあるけれど。

本部の人はともかく、支部長とかフレイルさん達あたりには、そのぐらいは要求していいように思う。


特にモーリスさん。

今回、一番の原因はあの人だから。

王都の場所を知れたのは良いことにしても、余計なことを口走ったのは確かだ。

こと戦闘になると切れが凄まじいのに、それ以外のノリがあまりに軽すぎる。

ゆるゆるのがばがばだ。とてもよろしくない。

ひとまず、彼は空気を読むというところから学んだ方が良さそうである。


「シオンさん、お待たせしました」


「あ、おかえりなさい」


「今、本部長が書類に目を通してる最中なので、もう少しここで待機していて欲しいそうです」


どうやら、無事に書類は届いたようだった。

だが、問題はこの後だ。

果たして、ここの責任者は、話を聞いてどのように思うのか。

だいたい予想はつくけれど、余計な期待はせずに待っていることにしようか。

皆様、あけましておめでとうございます!

今年も恙無く更新して参りますので、よろしくお願いします。

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