第39話 新たな事実
「えっと……送ってくださるというお話だったのですが、本当ですか……?」
結局、本当に送る羽目になった。
不安げな面持ちの彼を見ていると、私が悪いわけでもないのに心が痛くなってくる。
(まあ、しょうがないことではあるんだけど)
フレイルさんの言う通り、書面だけを送り届けたところで、信用してもらえないことは容易に想像が付いた。
この世界に来てから今まで、この手の話をして疑われなかったことは一度も無いのだから。
目の前にいる彼もまた、テレポートのことについては聞かされているのだろうが、実際にできるとは思っていないに違いない。
そこまで理解しているのなら、着いて行った方が確実だと誰もが思うに決まっているだろう。
さすがに、他人の驚く顔を見るのは飽きてきたところだが、そこは我慢するしかあるまい。
悪用することを考える輩が居ないとも限らないし、大っぴらにするべきものでもないけれど、それを言うには些か遅すぎる。
細かいことを言ってしまえば、本部に行けさえすればいいだけの話なのだから、テレポートで行く必要などどこにもないのだけれど。
他でもないダンカンさんが、先に話を通してしまっているので、それもまた今更の話である。
「地図をお願いしていたと思うんですけど、手元にありますか?」
「はい。こちらにご用意しています」
場所も分からずに移動できるわけがない。
ということで、事前に地図を見せてもらえるよう話を通しておいたが、きちんと伝わっていたようだ。
───だが、渡された紙をテーブルの上に広げた瞬間、私は驚愕した。
「……うそ?」
似てる、なんてものじゃない。
全く一緒だ。
描かれた地図は、地球に存在しているものと何ら変わりない形をしている。
「どうかされましたか?」
「いえ……何でもありません」
何故だ?
曖昧な描き方ではなく、細かいところまできっちりと記されているからこそ、同一のものであるとはっきり理解できる。
だからこそ、分からない。
どうしてそんなものがここにあるのか。
ここは、異世界ではなかったのか?
(女神様が含みのある言い方をしてたのと、何かしら関係があるんだろうな……)
厄介な所に飛ばされたものだと、思わずため息をつきそうになった。
無理に解明する必要も無いのかもしれないが、ここまであからさまに怪しいと、どうしても気になってしまう。
とはいえ、それを調べるのはまた今度だ。
今の私は、臨時の配達員。
そして何より、証人としての役割がある。
「地図を見るのは初めてで。場所を教えてもらってもいいですか?」
「了解しました」
地図を見ながら、位置関係を確認する。
今、私たちがいるサイラースは、地球で言うとだいたいポーランドの辺りに位置していた。
王都───名はグランベールと言うそうだ───はここから西に向かった先にある。
地図を見ただけだと、方角は大体わかるのだけれど、距離が把握しきれないのが残念だ。
地形は随分と細かく描かれているのに対して、それ以外がすかすかであることにまたぞろ疑問を覚えたが、それは今考えることではない。
「問題なさそうですか?」
「そうですね、大丈夫だと思います」
方角だけ合わせて、後は様子を見ながら移動すれば、別段どうにかなるだろう。
どうせなら、いざという時の為に、間にある街や村の場所も確認しながら行きたいところだ。
「えっと、私はどうしたらいいのですか?」
話に聞いただけで、実際どのような魔法であるかを知らない彼は、他に何をするべきか分からず困っていた。
「身支度さえ大丈夫なら、後は特に」
「そうですか。私はいつでも構いません」
「じゃあ、早速行きましょうか」
「え?あの、シオンさんは、その格好で問題ないので……?」
そこまで驚いた顔をしなくても、とは言えなかった。
だって、がっつり手ぶらだものな。今の私。
「全然問題ないですよ」
「はあ……では、よろしくお願いします」
その言葉を合図に、私は魔法を発動した。
さて、これからどうなることやら。




