第38話 お披露目会
空が青い。
遮るものは辺りに何一つなく、太陽の光が燦々と降り注ぐ。
時は変わって、私達は演習場に来ていた。
「それで……何から見せたらいいんですか?」
「好きにやっちゃってくれー!」
「ええ……」
何故ここにいるのかと言えば、事の発端は先程の客間での会話へと遡る。
フレイルさんの、悪口にすら取れるような口ぶりにより、ひとまず私が『何か滅茶苦茶やばい奴』だと認識されたことは既にご存知だろう。
結局、何はともあれ本部に連絡をし、一つでも上にランクを上げられるよう手を尽くす方針に固まったようで、任務の際に使ったあらゆる魔法について報告した結果、実際に見せてみることとなったのだ。
ぶっちゃけた話、あまりに非現実的すぎて、見てみないことには到底信じられないというのが本音らしい。
報告書に虚偽の内容は載せられないということで、事実確認と称してこの場を設けられたが、既にその光景を目の当たりにしているフレイルさん達は、この一連の流れを明らかに楽しんでいるようだった。
「じゃあ……まずは、サイクロプスの素材を出します」
手品の前振りのようになってしまった。
実は、残して帰るには勿体無いと、食事休憩の際にちゃっかり解体も行っていたのだが、四体分ともなるとかなりの重労働だった。
皮が分厚いせいで切るのにも一苦労だし、素材を確保した後も、臓器などの残った部分を処理するのに手間がかかる。一つ一つのサイズが大きすぎるからだ。
五人がかりの作業だったとはいえ、下手したらこの作業に一番時間が掛かっていたのではなかろうか。
倒したのは私だから、解体の手伝い分だけ貰えればいいと皆は言ったが、そんなことをしてもお金の行き場が無いので、普通に山分けしたいのが正直なところである。
いつもの如く、収納魔法で仕舞っておいた素材を出すと、それだけでダンカンさんの表情が崩れた。
全て見せ終わるまでに、果たして彼の精神は耐え切れるのだろうか。
というより、他に何を見せたらいいのだろう。敵もいないのに放つ魔法などそう無いのだけれど。
「次は、瞬間移動をします」
そう言って、魔法を使っているのだと視覚的に分かりやすいよう、敢えて上空へと移動した。
ついに、ダンカンさんから表情が消える。
一方で、他の男性陣はその様子を見て、とても楽しげに笑っていた。
コレットさんだけは、彼の気持ちを汲み取ってか同情の眼差しで見つめていて、その光景が何とも切ない。
私としても、こうなることは理解していたものの、少しばかり申し訳ない気持ちになった。
「これ、まだ見せた方がいいんです……?」
ダンカンさんが、既に虫の息なのだけれど。
完全にキャパーオーバーというか、魂がこの世に無いかのような抜け殻状態だ。
「いや、いい。十分に分かった。うん。化け物だと言っていた意味が分かったよ」
「だろう?」
「正直、予想以上だ。これ以上見せられたら、私の心が持たない」
ダンカンさんのギブアップにより、お披露目会は終了となった。
受け答えはしっかりしていたものの、未だに顔が強張ったままである。
寧ろ、あれを見た直後でまともに会話ができただけましなのかもしれない。
「先程の調査内容と合わせて、本部には連絡を入れておく。速達で出したとしても、15日前後はかかるだろうから、それまで待っててくれ」
「結構遠いんですか?本部って」
「遠いな。王都にあるんだが、馬車で行っても七日はかかる距離だ」
「じゃあ、向こうで審議する時間も考えたらそんなもんですね」
速達便をどのような方法で届けているのかは知らないが、身体強化を使って日がな一日走り続けたとしても、おそらく五日か六日くらいはかかるんじゃなかろうか。
魔物に遭遇する危険性を考えれば、日が沈む前には移動を止めなければならないだろうし。
「……あ」
ふいに、モーリスさんが呟いた。
そちらに顔を向けてみれば、やけに嬉々とした表情で私を見ている。
何故だか、嫌な予感がするのだけれど。
「シオンに送り迎えしてもらえば、あっと言う間じゃね?」
「ああ、確かに」
予感は的中した。
納得したように相槌を打つフレイルさん。
その通りみたいな顔で頷かないで欲しい。
「ついでに、直接シオンの魔法を見せてきたら一発かもよ」
「書面だけじゃ信用されなさそうだしな」
「ふむ……それもそうだな……」
ダンカンさんまで納得し始めてしまった。
話がどんどん変な方向へと向かっていく。
「これ、どうしたらいいんですか、コレットさん」
「……何というか、うちのものが迷惑をかけて、本当にごめんなさいね」
彼女の、心底申し訳なさそうな顔が、深く心に刺さったのだった。
予定より遅くなりましたが、本日二度目の投稿です。




