第34話 一斉討伐
「なるべくあいつに魔法を撃たせるなよ」
「分かってら。上手いこと引き付けてくるわ」
「目くらましをしておきましょうか」
「私はとにかく急所を狙うわ」
次々にお互いの役割を決めていき、手早く作戦に移ろうとするフレイルさん達。
事態がここまで切迫していなければ、私にも上手く出番を与えられるよう考えてくれたのかもしれないが、そのような暇は今の私達には与えられていない。自ら役目を探し出して動くしかなかった。
そして、今すぐ動くべきであるはずの私は、それどころではないことに気付いてしまったのである。
「囲まれてます」
「え?」
「囲まれてます!サイクロプス達に!」
叫んだ直後、大地が再び揺れる。
より一層激しくなる揺れに、全員が息を飲み、その姿を目に焼き付けた。
現れたのは、同じ姿の魔物が三体。
その大きな歩幅であっと言う間に距離を詰め、大きな丸い目がぐるりと私達を取り囲む。
見渡す限りの青。
気付けば、光すら遮るほどに高く分厚い壁が、私達の周りに出来上がっていた。
誰も、何も。動くことも、声を出すことすらしなかった。
出来なかった。
息することすらままならぬほどに、澱んだ空気が重くのしかかる。
今までで一番重厚で、濃密で、一番吐き気のする───。
「気持ち悪いな!?」
黙り切れなかった。
いやまあ、別に静かにしていろだなんて誰も言っていないのだけれど。
雰囲気がぶち壊しというか、これからシリアス真っ逆さまなフラグをへし折ってしまったのは確かなように思う。
しょうがない、ということにして欲しい。
何せ、色々と我慢ならなかった。
空気もさる事ながら、視界がまた気持ち悪いのだ。ぎょろぎょろとした目に囲まれていて、その光景がこの上なく不気味で堪らない。
思わず叫んでしまったものの、怪我の功名というか、結果的に良い気付け薬になったのか、他の皆も気を取り直していた。
「いや、すげえなシオン。この状況でそんな声出せるの、中々の大物だと思うわ俺」
「同感だわあ。っていうか、どうしたもんかねこれ。俺どうしたらいいの?」
「全部引き受けてくれてもいいんですよ」
「無理。死んじゃうよそんなの」
会話だけでは全く伝わらないだろうが、実際は敵の攻撃をいなしながら話をしている。
それだけで、皆も十分に大物だと思うのだが、それに関しては既に周知の事実だった。
「……私に策があります。任せてもらってもいいですか?」
「構わないが、大丈夫か?」
「はい。そしたら皆さん、今から何があっても、絶対に動かないで下さいね。じゃないと、落ちて死にますよ」
「は?」
言葉の真意を尋ねられるより前に、作戦は始まった。
次の瞬間には、私達の身体は遥か空高く、魔物の頭上より更に上に移動していた。
「え?……え?」
「なんで俺たち浮いてんの?どういうこと?」
置かれている状況が全く飲み込めておらず、狼狽えている姿を横目に、私は次の魔法を構築する。
全員を上空へとテレポートさせたのは、この前の失敗を踏まえた事前準備のため。
例え障壁があろうと、自ら落ちた場合には落下によるエネルギーそのものは消せないから、落ちたら死ぬというのは本当の話だ。
そして私は、この前と同じ方法で敵を倒そうと目論んでいる。
魔物が何体に増えようと、魔力のある限り私のやることは変わらない。
まず、力を削ぐ。
全部で四体となったサイクロプス達は次々に倒れ始め、四方八方に、時折木々をなぎ倒しながら崩れ落ちていった。
真上から見ると、尚のこと圧巻の光景である。
これだけ大きな身体がいくつも横たわる姿など、そうお目にかかれないはずだ。
そして、即座に止めを刺す。
四本の巨大な三叉槍が一斉に降りかかる様は、いっそ神々しさすら感じるほどに凄まじい。
見事、一切の狂いもなく急所を貫くと、さながら柱のように聳えたち、やがて消えていく。無事に討伐が完了したことを示してくれた。
「終わりましたよ」
再び地上に舞い戻り、そう声をかけるが、誰も何も喋ろうとしない。
この光景も、何だか見慣れてしまった。
ひとまず、周りに魔物がいる様子も無いし、少しばかりエネルギー補給をしながら正気に戻るのを待とう。




