第33話 再び出会う
道中、襲い掛かる魔物を倒しながら進むが、今のところ他の冒険者に遭遇することは一度も無い。
もしかしたら、既にギルドの方で連絡が回っていて、森には入らないように通達されているのかもしれなかった。
「進むのだけでも一苦労だな。全然前に進んでる気がしねえよ」
「分かるわー。ダークウルフの群れとか、心臓に悪すぎるしさあ」
ここまでの戦闘を振り返りながら、確かにその通りだと心の底から賛同した。
まだ距離としては手前の方だが、既に群れの中にダークウルフが混ざりはじめている。
景色としては見慣れたものの、殺意を剥き出しにして襲ってくる魔物の群れというのは、それだけで気疲れするものだった。
「でも、シオンのおかげで少し気が楽ですね」
「そうね。身を守ってくれるものがあるというだけで、随分と気持ちが軽くなるものだわ」
安堵の表情でそう言うのは、私が先程かけた魔法障壁のことについてだろう。
私が軽く効果の説明をし、フレイルさんが半ば強制的にモーリスさんを実験台にして、どんな魔法であるかを体験してもらった結果、全員にいたく気に入られた魔法だ。
ここまで精度の高い防御魔法はそうないと、フェリクスさんがやけに興奮していたのを思い出す。
ことサポート系の魔法に関しては、自分の専門分野でもあるため余計に熱が入りやすいのだろう。せっかくの知的な雰囲気が台無しであったが、今更そこに突っ込みを入れるものなどこの場には一人もいなかった。
「結果的には、森の外に魔物が溢れかえるのを多少なりとも防げてるでしょうし、不幸中の幸いってところでしょうかね」
「確かにな。俺達はその分大変だが、まあそこは仕事だし、つべこべ言ってもしょうがねえよな」
私の言葉に、フレイルさんが頷いた。
魔物の総数を減らすというのも、一時的とはいえ今回の事態には有効な策である。
ただ、どうしても必要そうなら、私の魔力を逆に利用して魔物をかき集めることも出来るけれど、全ての範囲を網羅できる訳では無い。
今の状況なら、勝手に魔物の方から寄ってくるし、それらを倒すだけで数を減らすのに貢献することはできるだろう。
私達の任務は、あくまで原因を究明することであって、魔物の討伐は二の次だ。どちらも重要事項ではあるが、そこを履き違えるべきではない。
「一番大変なのはここから先ですよね。どうにも嫌な予感がしますし、そろそろAランクの魔物も出てくるかもしれません」
どうやら、フェリクスさんが何か感じ取ったようだ。おそらく、私と初めて会った時と同じように、魔力の気配に釣られているのだろう。
そして、それは気の所為ではない。
彼が口にするより前に、私もその嫌な予感の正体に気付いている。
「たぶん、もうすぐそこまで近付いてきてますよ。このまま歩けば、確実に遭遇します」
「そこまで分かるのか?」
「大体は。まあ、半分は感ですけど」
魔物との距離が離れている状態では、例えフェリクスさんでも魔力の気配に気付くことは出来ないだろう。それは、この前のことではっきりしている。
つまり、裏を返せば、フェリクスさんでも気が付ける程に魔物が近付いてきているという証拠に他ならない。
より濃厚な魔力の気配が辺り一面を支配し、酸素を奪われたかのように息苦しさがどんどん増していく感覚に、思わず目眩がしそうな程だ。勘違いなどするものか。
「なあ、俺の気のせいかな?さっきから地面が揺れてる気がするんだけどさあ」
「……いや、気のせいじゃない。シオンの言う通りだ。あいつのお出ましだぞ」
やがてそれは、姿を現す。
わざわざ正体を探らずとも、激しく揺れる感覚に見当がついてしまうような大物。
言葉通りの巨体。
ギョロリとした丸い目が、私達を捉えて離さないでいる。
───サイクロプス。
物語から飛び出した人喰いの怪物。
私は再び、この魔物と対峙する。
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