第28話 小金持ちになった
次の日、ラウルさんに頼んでいた解体作業の結果を聞きに、ギルドに足を踏み入れたところで呼び出しを食らった。
客間に通されると、昨日と同じようにダンカンさんが待っていて、例の件に関する報告をしてくれた。
「昨日話し合いが終わってな、全然構わないとのことで快諾してくれた。というより、事情説明の際に君の名前を出したら、是非にという話だったのだが……君たちは知り合いか何かか?」
その言葉を聞いて、自分の予想は間違っていなかったと確信を得る。
名前を聞いて私だと分かるのなら、間違いなく相手はフレイルさん達だろう。
私が昨日店で起こった事の顛末を話して聞かせると、ダンカンさんはなるほどと頷いた。
「妙な縁もあったものだな」
「私もそう思います。お店で話を聞いた時に、もしやとは思っていましたけど」
「彼らは『紅蓮の炎』という名のパーティーで、全員がAランクという実力者の集まりだ。君にとっては、とても良い経験になると思う」
Aランクと聞くだけで、改めて彼らの凄さが伝わってくる。
魔物のランクが、イコールで討伐依頼のランクだとすると、ダークウルフの討伐でもBランクの仕事にしかならない。
Aランクともなれば、それこそサイクロプスレベルの魔物を相手に依頼をこなしていることになるだろう。指名を受けるのも納得できる。
「調査となると、それなりに準備をしなければならない。お互い今すぐというのは難しいだろうから、出発するのは2日後にしようと思うが、それで構わないか?」
「はい、大丈夫です」
確かに、長時間あの森に籠ることを考えれば、食料などの用意をしておかねばならない。
もしかすると、キャンプ道具なども揃えておいた方がいいかもしれないし、その手の物は一切手持ちにないので買い出しが必要だ。
ちょうど、後でラウルさんの所に向かうから、買取代金を受け取ったらそのまま街に出るのも悪くない。
「では、当日の朝にギルドに来てくれ。メンバーが集まり次第、改めて依頼内容の確認をしてから、調査に向かってもらおうと思う」
「分かりました、よろしくお願いします」
「ああ、こちらこそよろしく頼む」
流れを確認し、話を終えて客間を後にする。
そのまま一階に降りて買取カウンターへと向かうと、見慣れた顔がそこにあった。
「こんにちはー」
「よう、来たな。お前のせいで昨日は大変だったぞ?よくあれだけ倒してきたもんだな」
「いやまあ、不可抗力なんですけどね……」
やりたくてやったわけではない。
こちらとしても、なるべく余計な傷を付けないように倒すのは骨が折れるのだから。
「ちょっと、ここで話すには目立つんでな。すまんが着いてきてくれるか」
「分かりました」
言われて辿り着いたのは、昨日と同じく外にある解体場だった。
演習場の一角を埋めつくしていた死体達は、今はもう跡形も無くなっている。
「一応、素材全部に見積もりは付けておいたが、証明部位だけは一旦持ち帰るんだよな?」
「はい、それがないと報告できないので」
「でもお前、一応まだルーキーだもんな。そうなると、ベビーウルフのだけあればいいだろ」
「そうですけど。何ですか、一応って」
やけに強調するというか、皮肉めいた言い方に聞こえたのだけれど。
「こんだけ馬鹿みたいに、Bランクの魔物すら平然と狩ってくる奴が新人なんて言われちゃ、それこそ皮肉以外の何物でもないだろうがよ」
「登録したばかりなんだから、そんな事言われてもどうしようもないですねえ」
「いいんだよ、冗談なんだから」
言いながら、ラウルさんは倉庫に何かを取りに行く。
それが何であるかは、じゃらじゃらと響く音を聞けばすぐに分かることだった。
麻袋を二つ手に持ち、片方はおそらく貨幣が入っていて、音のしない袋の方は証明部位が入っていると見受けられる。
「買取金額が全部で128306ギル。手数料は既に引いてある。こっちはベビーウルフの皮が52枚入ってるが……金額の内訳を詳しく聞くか?」
「あー……紙に書いてもらった方が、確認しやすいですかねえ……」
「だよなあ、用意しといて良かったわ。後できっちり確認しといてくれ」
皮が52枚と聞いただけで、とんでもないことになっているのが容易に想像できる。
前の買取金額である8400ギルですら、暫く過ごすのに全く困らない値段だったのに、たった一日でとんでもない額を稼いでしまったようだった。




