第27話 名のあるパーティー
魔力という概念そのものは、この世界にもあるのだろう。
魔法を使えばその分身体に疲労は溜まるし、保有する魔力が無くなれば魔法も使えなくなる。
それ故に、何かしらの力が働いていることは誰にとっても明白だ。
でも、ただそれだけ。
魔力がどういうものであるのか、具体的な知識として理解しているわけではない。
自分という身体を媒介に、魔法を使って初めて得られる感覚で、魔力という目に見えない何かを大雑把に掴んでいるだけ。
自らの内に感じる仄かな温かみや、森で感じたあの魔物特有の禍々しさすら、それが魔力の放つ気配であることを知らないのだろう。
風の流れは分かっても、空気そのものは目に見えないのと同じで、魔力も目に見えて分かる訳では無いのだから。
知らないのなら、気にするはずがない。
気に留めないのなら、気付かなくても仕方の無いことだろう。
あの森にしたって、何か空気悪いな、くらいにしか感じていないのではないだろうか。
それは、正直ちょっと羨ましい。
「あまり他人の事情を詮索するものではないわ、フェリクス」
「それもそうでしたね。失礼しました、シオンさん。私の言葉は忘れてください」
「全然気にしてないので大丈夫ですよ。似たような言葉は言われたことありますけど、その手の知り合いは皆無ですね」
「そうなのですか。前にも言われたことがあるということは、実力があるのは私の見当違いでは無いのですね」
「俺、シオンの魔法にすげえ興味あるわ。フェリクスがそこまで言うってことは相当だろ?本気でやったらどうなるのか、ちょっと見てみてえよな」
フレイルさんの言葉に、フェリクスさんの顔がほんの少しだけ輝いた。
口には出さないが、僧侶なだけあってその手の話に関心が強いようである。
魔法を見せるのは吝かではないのだが、本気と言われるとどのレベルの魔法を披露すればいいのだろう。あんまり大規模だったり複雑なものを使うと、墓穴を掘りそうで何だか怖い。
「魔法師と関係無いってことはさあ、王宮で働いてるわけでもないんだろう?シオンって、普段何してんの?」
「一応、私も冒険者ですよ。昨日試験に合格したばかりですけど」
「え、そうなの?なあんだ、俺たち同業者じゃーん!よろしくなー!」
明らかにハイタッチを狙った手と、飛び抜けて明るい態度につられて、反射的にモーリスさんの両手をぱちんと叩いていた。
何だろう、この、渋谷あたりに行けば出会えそうな軽すぎるノリは。
つくづく顔と中身が噛み合っていない人だ。
「俺たちたぶん、暫くこの街に滞在しなきゃなんないからさあ、どうせなら今度一緒に仕事でもしようぜ!」
「お、それいいな。別に、パーティーじゃないと一緒に動いちゃいけない決まりなんてないしな」
「ちょっと、モーリス。フレイルまで……」
何だか妙な方向に話が進んでいる。
フェリクスさんも、何も言わないだけでこの話に賛成のようだし、コレットさんも窘めはするものの、呆れたような、諦めたような顔をしてあまり強くは言わない。
これが日常茶飯事ということか。コレットさんが一番大変そうだな。
特に困ることも無いので別にいいのだが、彼女にはもう少しだけ頑張ってもらいたかった気もする。投げ出したくなる気持ちは理解できるけれど。
「滞在しなきゃいけないって、何か用事でもあるんですか?」
「ああ、ちょっとな。指名で依頼を受けたんだ。すぐ終わるなら別にいいんだが、どうにも時間がかかりそうな気がするんだよな」
わざわざ名指しで頼み込まれるということは、それだけ実力があるということだろう。
自己紹介してもらった時点で分かってはいたことだが、この分だとランクも余程高いに違いない。
そして、この時期に指名依頼とは。
それだけで、おおよその予想が付く。
何せ、つい先程その手の話を聞いたばかりだ。
もしや、ダンカンさんが言っていた、調査の依頼をした名のあるパーティーとは、この人達のことではなかろうか。
確定ではないが、可能性としてはかなり高い方だろう。まさか、たまたま入った店でこのような巡り合わせをすることになるとは、夢にも思わなかった。
一応、人違いだと困るのでその話は伏せておくが、それが本当なら私としてはとても有難い。
いざ承諾を貰ったものの、足元を見て手酷い扱いを受けたりしたら堪ったものではないと、そこだけが心配だったのだ。
彼らが相手なら、安心して仕事に臨める。
願わくば、この予想が当たっていますように。
「私も、ぜひ一緒に仕事がしてみたいです」
「本当か?じゃあ決まりだな!手が空いたら俺の方から声かけるから、待っててくれな」
私の言葉の意味など知る由もないフレイルさんは、先程の提案に対する返事と受け取ったようでそう答えた。
どちらにせよ、近いうちに一緒に仕事をすることになりそうである。
冒険者としては良い経験になりそうで、私も今からその時が楽しみだ。
読んでくださる皆様、いつもありがとうございます。
つい最近風邪を引いて痛い目にあったので、皆様も体調管理にはお気をつけください。
一日一本、バナナとコーヒーを一緒に食べると予防にとてもいいらしいです。
ちなみに私は実践していません。お察し下さい。




