第26話 一つの疑問
彼の所属するパーティーは、比較的バランスの良いチームのようだった。
何より、全員が相当の手練なのだろうと雰囲気だけで分かるのが凄い。
まず、先程自己紹介してくれたフレイルさん。
彼の職業は魔法剣士で、リーダーも務めているらしい。
剣に属性付与をして戦うらしいが、魔法を使いながら接近戦をするというのはこの世界ならではの発想だ。
今のご時世、地球で戦争をしようと思ったら、まず剣より先に銃を使うのだから。
確かに、剣術に長け、尚且つ魔法も使えるのであれば、一度付与してしまえば他に手間が要らないというのは一つの利点である。
特に、この世界では呪文詠唱がオーソドックスであるから、一々発動に時間をかけなくて済むのは大きなプラスポイントだろう。
サイクロプスのように一部の魔法が効かない魔物もいることを考えれば、いざとなればただの剣として使えばいいのだから、有用な手段ではあると思う。
次に紹介してくれたのが、同じ前衛職であるガーディアンのモーリスさん。
いかにも寡黙そうな険しい顔付きの男性であったが、喋り出すと意外にも剽軽で、ギャップの塊のような人だ。
失礼な話ではあるが、彼と会話する度に見た目との落差がありすぎて、思わず笑ってしまう。
「なんかさあ、喋ると残念とか、こんな人だと思ってなかったとか言って、恋人が全然できないんだよね」
(申し訳ないけれど、凄く分かります)
ちなみに、ガーディアンとは守りの技術に重きを置いた重装歩兵のことで、モーリスさんは特にその技が素晴らしいとメンバーの皆が太鼓判を押していた。
見た目は騎士そのものなのだが、その名で呼ぶと王宮勤めの護衛のことを指してしまうため、区別して呼んでいるそう。
後衛の役割を担っているのは、唯一の女性メンバー、紅一点の弓士、コレットさん。
彼女こそ物静かでお淑やか、モーリスさんよりも寡黙という言葉の似合う女性だが、その姿からは想像も出来ないほど苛烈で華麗な弓の腕前を持つらしく、それを聞いてしまうと少しばかり恐ろしい。
そして、パーティー全体のサポート役を務める僧侶のフェリクスさん。
知的な面持ちに、柔らかな仕草、艶やかな長い髪。とても紳士的で、女性にモテそうな男性である。
彼の強みは、一般的に僧侶が使いこなす回復魔法や補助魔法の他に、二種類の属性付与を使いこなすことにある。
普通、魔法の習得と威力向上にはそれなりの労力を費やす。
私のような習得の仕方であれば、相応の知識量を頭に叩き込まなければならないし、呪文に沿って覚えるにしても、身体に完璧に馴染ませるには練習が必要だ。
それだけ数多の魔法を使うには、才能と努力、ともすれば両方無ければここまでのレベルには到達し得ないだろう。
何より彼は、おそらく魔力容量が平均よりかなり多いはずだ。滲み出るオーラがまるで違う。
彼らはとても仲が良いようで、そのことを伝えると、ずっと同じメンバーで戦ってきたのだと教えてくれた。
「そういやシオン、さっき無詠唱で魔法を使ってなかったか?」
「それ、私も思いました。先程から只者でない雰囲気を感じるのですが……実は魔法師と関係があったりとかしませんよね?」
魔法師か。
試験官にも似たようなことを言われたけれど、魔法の扱いに長けている人と言うと、魔法師関係のイメージが強いのだろうか。
フェリクスが只者でないと言うのは、私の魔力量が桁違いなせいであろう。
そういえば、魔法を使わずに他人にそれを見抜かれたのは、転生してからは今回が初めてだ。
───そもそも、何故今まで誰も気付かなかったのだろう。
今まで、あれだけだだ漏れだったのだから、すぐに気付いて然るべきなのに。
彼ほど実力のありそうな人でさえ、はっきりと原因が分かっているわけでは無い。
それを考えて、一つの可能性に辿り着く。
この世界の人達は、魔力そのものを感じ取ることが出来ないのではないだろうか。




