第24話 解体をお願いする
さて、ひとまず話し合いが終わったところで、今日の仕事はお終い───とはいかないのが、何とも寂しいところである。
ラウルさんに解体をお願いしなければならないし、リーリアさんのところで依頼の報告も済ませなければならない。
どちらも期限があるわけではないので、後回しにしても問題は無いのだが、こういう面倒な作業というのは早めに済ませておかないと、どんどんと腰が重くなっていくものだ。
魔物の討伐依頼の方は、証明部位が無いと報告できないので、必然ラウルさんの元へ向かうのが先となる。
「ラウルさーん」
「おー、シオン!お前、大丈夫か?サイクロプスと遭遇したなんて聞いたから心配したぞ」
ラウルさんにまで言伝を頼んでいたのか。
さしずめ、私がギルドに来たらすぐ連絡がいくように、職員全員に通達しておいたのだろう。例の件はすっかり知れ渡っているようだ。
当然のように名前を呼ばれたけれど、その経緯があるなら何ら不思議は無い。
寧ろ、サイクロプスの件について、当事者が私であるとギルド側が把握していたことの方が疑問だ。
今頃になって気付いたが、私はあの人達に名前を一切名乗っていなかった。
だのに、なぜ件の人物が私であると分かったのか。
「そりゃお前、見た目だよ。お前の髪や目の色はここいらじゃ特に目立つからな」
ラウルさんに聞いてみると、そう答えが返ってきた。
なるほど、見た目か。
確かに、この赤い目は前世でもかなり目立つものだった。なんなら、忌諱する対象にすらなるくらいに。
この青黒い髪も、土地柄かあまり黒髪を見かけないこの場所では、珍しい部類に入るだろう。
長さにしたって、普通腰まで伸びた髪を結びもせずに仕事をするなど、邪魔でしょうがないだろう。
総合的に考えて、そりゃあ私しかいなかった。
名前など聞かなくとも一発で分かる。
「なるほど、自明の理ですね。この上なく分かりやすいです」
「そうだろ。で、ここに来たってことは、あれか。サイクロプスの素材を売りに来たのか」
「それもありますけど、他にもいっぱい。ところでラウルさん」
「なんだ?」
「演習場か、それくらい開けた場所って今借りることできます?」
♢
お願いして、ラウルさんが連れてきてくれたのは、演習場の隅に建てられた倉庫だった。
どうやら、解体作業はここら周辺で行っているらしく、倉庫の中には刃物の類や作業台などが乱雑に仕舞われていた。
(ラウルさん、片付け苦手なんだ……)
そこは見た目通りというか。
一応、物の種類ごとに、ある程度分けて仕舞うようにはしているみたいだけれど、そこから先がどうも上手く整理されていないようである。
他の誰かが一緒に使っていたとしても、その点に関しては皆似たもの同士らしい。全体的に散らかり過ぎている。
当の本人がそれで問題無いのなら、私から言うことは特に無いが、知らぬ間に物が無くなっても分からなさそうだなとは感じた。
「それで、何でまた広い場所に?」
「実は、買取の前に解体をお願いしたいんですけど、量が多すぎて……よっと」
私は、宙に浮いた部屋の床に穴を開けるようなイメージで、収納してあった魔物の死体を滝のように流し出した。
演習場の一角は、あっと言う間に死体の山で埋め尽くされる。
極めつけに、巨大な青色をした例の死体を山の横に添えて、本日の成果は全て出し終えた。
「これを、全部ラウルさんに捌いてもらえればなと」
「お前……そりゃまあ、期待してるとは言ったけどよ……」
その光景を前に、呆れた声で言うラウルさんの顔は、心無しか引き攣っているように見えた。
気持ちは分かる。
私も、逆の立場でこれを見たらきっと、思わず真顔になってしまうことだろう。
まさにドン引き。その一言に尽きる。
今になって言うことではないが、これだけの数をお任せするのは申し訳ないくらいだ。
「手数料多めに差っ引いていいですから……すみませんけどお願いします、ラウルさん」
「しょうがねえなあ。一度にこれだけ持ってくる奴なんざ、後にも先にもお前だけだよ、全く」
「依頼の報告に使いたいんで、証明部位だけ除いて後は全部買取に回しちゃってください。いつ頃取りにくればいいですか?」
「そうだな……明日の昼頃にでも来てくれ。暫くは時間がかかるからよ」
そう言って、早速作業に取り掛かるラウルさんを、見学ついでに少しだけ手伝うことにした。
解体の仕方を覚えておけば、次からは自分で解体ができる。
これだけの魔物に囲まれることも、原因を解明できた今となってはもう無いだろう。
余程のことがない限り、このような利用の仕方はラウルさんの為にも控えておこう。




