↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
破滅の魔女は異世界を救う  作者: 藤川秋
24/93

第23話 支部長の提案

「すみません、そのことに関してなんですけど。そもそも犠牲者は出てませんよ」


「……どういうことだ?」


「サイクロプスと遭遇してから倒すに至るまで、あの場にいたのは私一人だけです。周囲に他の人間は一人もいませんでした」


物陰に隠れていたのなら、そこまで気が回っていなかったので把握しきれていないけれど。

少なくとも、誰かが怪我を負ったり、あまつさえ食べられたりなんてことは全くない。


───ああ、違うな。

怪我を負った人なら、一人だけいた。

他の誰でもない、私だ。

治療したんですっかり忘れていた。

治っている以上どうでもいいことだが。


「つまり、君一人でサイクロプスを倒したと?」


「はい」


「それを私に信じろと言うのか」


「そのつもりは全くありません。正直なところ、信じてもらえるとは微塵も考えていませんし、ダンカンさんに限らず誰に話してもそうだと思います。はっきり言って無駄なことではありますけど、それでもギルドの責任者に対して嘘をつくのは私が嫌なので。要は、ただの自己満足です」


「ふむ……そうか」


身も蓋もないことを言ってしまったが、それが事実なので仕方ない。

疑われたくないのなら初めから黙っているべきだし、信用させたいのならそれなりに手札がいるが、今の私にはそれが無い。

本音を言えば、割り切りすぎている嫌いがあるように自分でも思えるが、証拠が無ければ誰も受け入れようとはしないのが現実だ。

なので、そのための努力をするのは、次の機会に取っておく。今回のことは諦めた。


ダンカンさんは、私の話を聞いてからしばらくの間、何かを考えるようにして黙っている。

到底信用できないこの話を、どう上手く処理したものかと悩んでいることだろう。

あれだけ釘を刺しておきながら結局自分で話してしまったが、仮にも支部長である彼が偏見で物事を判断するようなら、こちらから見切りをつけた方が良さそうである。

この短時間で感じられた人柄から考えれば、そこまで愚かな人には見えないけれど、人は見かけによらないと言うし。

逆に言えば、責任を負う立場にないあの人達こそ愚行に走りそうだったので、釘を刺しておいたのは無駄骨ではなかったと思う。


「……確かに君の言う通り、その話を鵜呑みにするには些か材料が足りない。君という人間を、私はまだ把握しきれていないからだ。かと言って、君があの魔物を倒したという事実は、君だけでない他の者の証言から総合して考えても確かなことだろう。あの場に生き残っていたのは君一人。仮に、倒した別の人間を君が亡きものにするなりしたとして、報告してくれた彼らが駆けつけるまでに処理しきれるだけの時間は無かったはずだ」


それは言えている。

おそらくあの人達は、サイクロプスが一旦崩れ落ちた時の衝撃が、息の根を止めた瞬間だと勘違いしているはずだ。

だとしても、実際にそこから私がサイクロプスを倒すまでにかかった時間はそう長くない。

倒し終えた後にはすぐに人が集まってきていたし、他の誰かに危害を加えた上で証拠を消すような時間は確実に無かった。


まあ、私の場合、テレポートを使えば人一人どこかへ飛ばすのも出来ないことは無いのだけれど、それを言ってしまえばいよいよ自分の首が飛ぶので間違っても口には出さないでおく。


「私としても、なるべく公正に判断したいとは思っている。特にこの話は、君を評価する上で重要な問題だ。そこで、どうだろう。事実を証明するための場を新たに設けるというのは」


「構いませんが、具体的にはどのような?」


「実は、あの森に正式に調査隊を派遣しようと思っていてね。既に名のあるパーティに依頼を出してあるんだが、そこに君も加わってみないか?勿論、事前に相談して承諾を得られればの話ではあるが、新人とはいえ君は試験や今回の件で証明した実力の程がある。そこまで邪険に扱われることもないだろう」


「相手方が納得した上でなら、私としても問題はありません」


「承知した。ではそのように話を進めておこう。決まり次第君に連絡するよ」


良い具合に話が纏まった。

相手のパーティー次第とはいえ、自分に不利益さえ無ければいいくらいに考えていたので、ついでに支部長の信用を得られる機会があるなら万々歳の結果である。


「協力ありがとう、シオン。今後ともよろしく頼むよ」


「こちらこそ、お世話になります」


深々と礼をしてから、私はその場を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。