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破滅の魔女は異世界を救う  作者: 藤川秋
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第22話 異常事態


そもそもの話だが、あの場に集まった冒険者が言うには、本来あの場所にサイクロプスが現れることは無いらしい。

そして、森林全体で起きているという異常に関して、今回の件が間違いなく関わっているということは、それ自体が問題の本筋である可能性が高い。

────そうなると、自分自身は全くの無関係であるとは言い切れなくなってしまうのだ。


今日一日で確認した限りでも、どうやら私の魔力は、広範囲に渡ってだだ漏れだったようである。

いくら私の魔力に吸い寄せられたとはいえ、途中で他の冒険者に遭遇した際に、何もせずにスルーする確率は限りなく低いだろう。そうなれば、自然と被害も広がっていく。

かなり広範囲に渡って魔物を呼び寄せていたようだし、普段なら居ないはずの場所から来ていてもおかしくはない。

まだ自分のせいと確定したわけではないが、いよいよ他人事では無くなってきた。



「私はまだあの森のことをよく知りませんが……本来、私が遭遇した場所にサイクロプスが出ることは無いと聞きました。それが関係しているとすれば、他にも同じように、本来の生息地から外れた魔物が見つかっているということでしょうか?」


「その通りだ、話しが早くて助かるよ。実は、今回の件が初めてではなくてね。昨日から既に何件か報告が上がっている。ただでさえこの辺りは強い魔物が多いだろう?おかげで、怪我を負った者も少なくない。早急に原因を調査して、解決策を練らなければならないんだが……」



現状を聞くに、事態は中々に深刻であるらしく、昨日からという言葉につい背筋が冷える。

私がこの世界に来たのも、昨日が初めてだ。しかも、私が最初に現れたのはあの森の中で、既に、自分が犯人だと断言されているような気分になってしまう。



「一つお伺いしたいんですが、普段サイクロプスはどのあたりを縄張りにしているんですか?」


「森の奥深くに岩壁があるんだが、その周辺にいることが多い。他の場所にもいないことはないが、一番近いのはそこだ。まあ、近いとは言っても、朝方に出たとして辿り着く頃には日が真上まで昇るような距離だが」



彼の言葉を聞きながら、大凡の距離を頭の中で計算する。

果たしてそれが、純粋に歩いてかかった時間なのか、魔物に遭遇する事を含めた場合なのかは分からないが、最低でも三時間以上はかかる距離に生息している事になるだろう。

それだけで、あの森が相当に広い場所であるのだと実感できる。


しかしながら、入り口からそれだけ離れた距離に居るのであれば、そもそも自身の魔力に反応できた事自体がおかしい話だ。

私が最終的に居た場所は、せいぜい歩いて一時間かかるかどうかというぐらいの位置で、自ら実験した内容から鑑みても、残り二時間分以上の距離をどうにかできる勢いで気配を漏らしていたとは流石に考えにくい。

感覚に頼るしかない分、ざっくりとしたデータでしかないものの、根本的な原因でないと言い切るには十分な結果である。



「私が居たのはもっと手前の場所でした。確かに他の人の言う通り、普段なら確実に遭遇することのない場所だと思います」


「やはりそうなのか」


「はい。サイクロプスが出る前は、クレインボアを討伐していましたし」



厳密には、ベビーウルフはともかくとして、ダークウルフも集団の中に混じっていたけれど、多少なりとも自分が原因である部分もあると思うので、その辺りは割愛する。



「ふむ……ダークウルフは既に何件か聞いていたが、サイクロプスまで迫ってきているとなると殊更にまずいな。対策が取れるまで出入り禁止するべきか……何にせよ、その情報は有難い」


「お役に立てて何よりです」


「うむ。後は、実際に戦っていた時の状況についてだが、シオンはまだパーティーを組んでいなかったな。今日は誰かと一緒にサイラース森林に向かったのか?」


「いえ、私一人でした」


「そうなると、他に戦っていた者については分からないか。君は昨日登録したばかりだものな」



被害者の身元を知りたかったのだが、と彼は残念そうに言った。

その場に誰か他の人間がいたと、当然のように勘違いしていることはさておき、不正だなんだと私を疑ってかかるような雰囲気は見受けられない。

森で出会った冒険者達にお願いしたことは、きちんと守られているのだと分かって少し安心した。


しかしながら、ダンカンさんもまた、状況から考えて私が倒したことだけは分かったようだが、一人で倒したなどとは夢にも思わないでいる。

私自身、障壁の強度が抜群だったおかげで軽傷で済んだが、それぐらいの手札が無ければ、確実に一人で立ち向かうことは無いぐらいの強さであったので、たとえ私が新人の身でなかろうと、勘違いされるのは当然のことである。


見れば、既に諦めた様子で、深く追求しようという気概が無く、このまましらを切っても問題は無さそうな状況だった。

────だが、情報管理を仕事とする者の前で、有りもしない犠牲者を作り出すのは何となく気が引ける。

結果が目に見えているのに、自ら面倒事に首を突っ込むのはあまり合理的な判断ではないが、ここで嘘を吐くだけの狡猾さは、私の中に存在していなかった。

 

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