第14話 思ってたんと違う
おかしい。
予定では、薬草採取をメインに行って、魔物が現れたらついでに狩るくらいの気持ちでいたのに。
ただ立っているだけで、どこからともなく魔物が現れる。颯爽と。次から次へと。
心做しか、あんなに澱んでいたはずの空気も、少しばかりすっきりしてきた気がする。
ものの数分で、私の周りはベビーウルフの死体で埋め尽くされてしまった。
────実際のところ、強いかどうかで言えば、話に聞いていた通り大したことはなかった。
スピードも普通。跳躍力もない。
障壁を張りつつ、足元の小石を使い、銃を撃つように敵の脳天を貫いてしまえばそれでお終いだった。
大変だったことといえば、あまりに数が多すぎてうんざりしたぐらいのものだ。
如何せん、証明部位を持ち帰らないといけないので、あまり雑に扱っては自分が困る。
うっかり力加減を間違えれば、目も当てられない惨状になってしまうのだから。
同じ轍は踏まない。
私は、きちんと学習をするのである。
しかしながら、面倒なことはそれだけでは無かった。
それが果たして何かと言えば────これだけの死体を全て解体しなければならないということだ。
持ち運べる当てがあるのだから、討伐した分はもれなく報酬を受け取るべきだと思うが、一人で捌く気には全くならない。
そもそも、解体したことすらないのに、これだけの数を処理していたらそれだけで時間を食ってしまう。
「……ラウルさんに全部任せるか」
ふと、彼が解体の仕事もしていると言っていたことを思い出す。
使えるものは使うべきだ。それが正規の方法なら尚の事。
もし、全部を任せるのは無理だとしても、自分一人でどうにかするよりは遥かにましなはずだ。
手数料という名のチップを多めに払って、綺麗さっぱり捌いてもらうこととしよう。
そう心に決めて、転がっていた死体全てをまるごと魔法で収納した。
(本当なら、また囲まれる前に森を出た方がいいんだろうけど……)
今回のことで一つ、確かめたいことができてしまった。
果たしてどうするべきか少し迷ったが、結局、危険は覚悟でもう少し中を散策することにした。
────勿論その間も、薬草の採取は忘れない。
♢
結論から言うと、確かめたかったことに対する私の予想は当たっていた。
調べたかったのは、今回の事件の根本的原因。
つまり、そもそも魔物は何をもって人や動物などの違いを判別しているのか、ということである。
例えば音。匂い。姿形。
どれを取っても間違いではないだろう。
魔物によって違いはあるだろうが、全て可能性として有り得る話だ。
────でも、それだけでは足りない。
そのどれもが、私が異常であることの証拠にはなり得ない。
リーリアさんに聞いた情報が正確なら、私という存在がこの異常事態を引き起こしている事になる。
ならば、引き金になるだけの理由が必ずあるはずだ。
ならば、それは一体何なのか。
その答えは────魔力にあった。
魔物は、魔力を頼りに獲物を探り当てている。
それならば、あの異常事態にも納得がいくというものだ。
見た目だけでいったら、私はそこらの小娘と何ら変わりない。
音や匂いにしたって、普通に考えて特殊性などどこにもないはずだろう。
────けれど、魔力は違う。
おそらく、どれほど少なく見積もっても、質が低い魔石になら引けを取らないほどの魔力量が私の中にはあるはずだ。
歩く魔力結晶。それが私である。
要するに、あまりにだだ漏れな魔力の気配が原因で、大量の魔物に私の所在がばれていたのである。
魔石を体内に持つ魔物のことを考えれば、私と同じように気配を感じ取っていてもおかしくはないだろう。
そうでなければ、あれだけの数が集まるはずがない。
何とも間抜け話だ。
自ら餌になりにいくようなものだった。
ベビーウルフだったからまだ良かったものの、ダークウルフの時に同じことが起きていたら、無傷では済まなかったかもしれない。
あの時感じた嫌な予感も、気のせいでは無かったと今なら思えるし、相手にしたのが七体だけであったことも不思議に感じるくらいだ。
だから、このことを知れたのは大きかった。
そこまでは別に構わなかったのだが────問題は、その後だ。
「わあ……デジャブだわ」
正確には、実際に体験済みであるので、デジャブと言うのは間違いだ。
二度あることは三度ある、と言うのが正しい。
────つまるところ、私は再び魔物に囲まれている。




