第12話 仲良くなった
翌日、朝食を食べ終えてすぐに、私はカードを受け取りにギルドへと足を向けた。
昨日と同じお姉さんのところで受付してもらうと、初めてほんの少しだけ柔らかい微笑みを見せてくれた。
「無事合格されましたね、おめでとうございます。試験官の方が、実力が凄すぎると驚いてましたよ」
「ありがとうございます」
正直、私としてはやりすぎた気がしているけれど。
今のところ、目立つ必要性はどこにもないのだから、余計なことをして身動きが取りづらくなるのは避けておきたい。
────つい昨日の夜、桶を直すためだけに高火力の魔法を使った私が言えたことではないかもしれないが。
「こちらが、シオンさんのギルドカードとなります。万が一、カードを壊したり、無くしてしまった場合でも再発行することは可能ですが、別途費用がかかりますのでお気を付け下さい。それから、王都の門や国境付近の関所を通る際には、このカードが身分証代わりとなるのでご提示をお願いします」
「カードが無いと通れないんですか?」
「通れないことはありませんけど、お勧めはしませんね。身分を証明してくれる書状やカードが無いと、確認が済むまで何週間も待たされたり、税金を多く取られたりしますから」
「なるほど、気を付けます」
カードが無いと、かなり不便なようだ。
絶対に無くさないようにしなければならない。
そうした大事なものは、魔法で収納するに限る。
うっかり落としたりすることはまず無いので、安心だ。
「あと、他国に行かれる場合は、事前にギルドへ申請をお願いします。登録情報を、他国のギルドへ郵送しなければなりませんので」
「分かりました」
一通り説明を受け終わったところで、一旦その場を後にした。
空いてる席に腰掛けて、貰ったギルドカードを確認する。
カードと言っても、材質は紙やプラスチックではなく、金属でできたプレートに文字が刻印されている形だ。
使える素材と強度の兼ね合いだろうが、それなりに手は込んでいる。
カードの表側には、名前と年齢、現在のランク、職業が記載されていた。
裏側の備考欄には、使える魔法などの予備項目が記されている。
下の方には、カードの有効期限も表示されていて、期限切れのカードを不正に使用することが出来ないよう対策されているようだ。
これに顔写真でも付ければ、さながら免許証のようである。
「よう、あんた。無事に合格したみたいだな」
「あ、ラウルさん。昨日ぶりです」
軽快に話しかけてきたのは、昨日お世話になったラウルさんだった。
私が持っているギルドカードを見て、無事に合格したことを悟ったらしい。
「一人、異様に魔法の扱いが上手い奴がいたらしいんだが、もしやお前さんか?」
「え……そんなに広まってるんですか、その話」
まるで有名人のような扱いである。
このままでは、名前と顔が一致するのも時間の問題だ。
せめて、もう暫くの間は、平和に過ごしていたい。
「だいたいの奴は知ってるぞ。期待の新人が現れたってな」
「勘弁してくださいよ」
「いいじゃねえか。それだけお前の実力を認めてるってことだよ」
買取期待してるぞ、と笑い去るラウルさん。
憎たらしいぐらい快活に笑うおじさんだった。いっそ清々しい。
悪い気はしないけれど、期待だなんだと言われても、それに答えられる保証は全く無い。
「……依頼、受けるか」
もやもやと考えた結果────諦めた。
実力を見せてしまったが最後だ。大人しく享受することにしよう。
掲示板を改めて見ると、ランクの高い依頼が多いことに気付く。
低ランクの依頼が無いわけではないが、ほとんどは薬草採取や決まった魔物を討伐する常駐依頼で、そうでないものは今のランクだと受けられないものばかりだ。
これが普通なのか、或いは弱い魔物はこの辺りにはあまり生息していないのか。
普通の依頼は、張り出してある紙を受付まで持っていくようだが、常駐依頼の場合はどうすればいいのだろう。
疑問に感じることが多くあったので、恒例の窓口へと向かうことにした。
「すみません、早速依頼を受けてみたいんですけど、常駐依頼の場合ってどうしたらいいんですか」
「証明部位さえ持ってきていただければ、討伐数に応じて報酬を用意しますよ。よほどの事がない限り、常に必要とされる物資が対象となりますので、これに限っては事前に受付する必要もありませんし、出来なかったからといって違約金を払う必要もありません」
いちいち紙を付けたり外したりするのも手間ですしね。と冗談めかして言う。
丁寧だが、業務の範囲を全く外れなかった最初の頃に比べると、少しだけ打ち解けてきたようだ。
まだ知り合って間もないが、距離感が縮まったことは素直に嬉しい。
こうして、和らいだ表情を見ていると、より魅力的な女性だと感じた。
最初に彼女を選んで正解だったと思う。
これからも、いる時は必ず彼女に受付してもらおうと心に決めた。
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