表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/87

双子山の攻略①

 

 今把握されている地図には、大陸が四つあるとされている。一つは我々がいるララ大陸である。四つの大陸のうち最南端に位置していることから南大陸と呼ばれることもある。ララ大陸は非常に温暖で冬は凄く過ごしやすい気候となる。作物も豊富にとれ、海辺は最高のバカンスになっている。中でもオニオンビーチという海水浴場は大陸の南側に位置しており、水流操作によってより安全にバカンスを楽しめると人気のビーチである。

 そんなビーチも今は封鎖、残念なことに国がまとまっていないのである。


「おい小僧、見えたぞ。」


「うん、作戦通りに行くよ。」


 そんな中、獣のおっさんと二人で仲良く森を歩く俺達盗賊は今日も元気にやっている所存だ。現在俺たちのいる森は島の西側にある山で、盗賊権を奪取したラムサス山の丁度真横にある双子山である。ここにも盗賊団がもちろんあり、二大勢力が争っていると事前の調べで分かっている。今回我々に協力を求めてきたのは『カナダス』という盗賊団で、麻薬の農場などでその強さを保ってきた古くからの古参勢力である。

 もともとラムサス山の連中とは縄張り争いなども行ってきた犬猿の中だったらしい。しかしそんな彼らも俺達に頼ってきた……というか、頼らせたのはなかなか賢かったんじゃないかと自分自身思う。


「さて着いたな。」


「じゃあ、早速ぶちかまそう」


 俺は魔法の詠唱を始める。広範囲風魔法でランクは超級だ。広範囲の魔法は可視できる範囲を限定して魔法を起動するか、前々に現地を偵察し、距離を正確に調節した上で爆裂させる。今回森での起動だったので、俺は後者の方法を使った。後者はなかなか使い勝手が悪く、時間もかかり危険が伴うため、山などでは使われないが二人で新興勢力『バルバラ』を止めるのは至難の技だろうから、安全策をとった。


『遠心の竜巻』


 魔法陣が大きく写った瞬間何もない空間から突如ぐるぐると洗濯機のように風の波が現れた。それは徐々に大きくなり、自然の木々や人工のテントなどが吹き飛んでいく。

 やはり怖い魔法だなと思うが、この魔法にも欠点があるので行使された場合も対策を練ることができる。

 今回の場合は対策を立てるどころか、襲撃があるとも知らない『バルバラ』第二本部は壊滅に至った。


「ほら、おきろ!」


「うぐっ、殺さないでくれっ!」


 言い忘れていたが、いちいち第二本部を襲ったのは敵の戦力を大きく削ろうという意図だけではない。それは建前で、本当の目的は『日光獣』の人員確保である。ラムサス山は今、獣人が八割と人族が二割の構成でできている。元々団員が少ないこともあったが、ラムサス山の盗賊団『風島』をヒルシス率いる獣人達が蹂躙したため、なかなか見るに耐えない悲劇が森中で血飛沫を散らしている。ちなみに俺は見た瞬間リバースした。


 それを片付けるのに、百人くらいは欲しいし、獣人と人族は仲が悪い……というか獣人が一方的に嫌っているので持ち場を同じにすることができない。これは『日光獣』の永遠の課題だ。その点ヒルシスさんは俺によくしてくれるから人の見る目があるんだろうか、よし帰ったら猪肉を振る舞おう。


強制就寝(フォースリープ)


 遠くまで飛んで行ってしまったもの以外を除いて大体六十人前後の盗賊団を捕まえた。今回は風魔法を使用したので外部の損傷は切り傷や打ち身などで済んでいる。結局三十人ほどは強い衝撃で死んでしまった。人の死とは軽いもので、儚いものであっけないものだ。

 捕縛した盗賊を全員眠らせて赤石を思いっきり頭上にヒルシスさんが投げる。それが花火のように発火し、音が静かな山に鳴り響いた。


「よし、ここはいいか。次は本部。風魔法で敵襲はバレてるけどゴリ押しで行こう。」


「わかったぜ、小僧。」


 俺達はすぐさまこの場所を離れる。

 放っておいては、『バルバラ』本部隊が先に来て、解放されてしまう。だから、『月光蝶』の合図を真似させてもらった。

 被害が及ばないように数百メートル後方へと待機させていたうちの獣人と、『カナダス』を呼んだのだ。獣人達を見張りと護衛に、カナダスのメンバーを彼らの捕縛と連行に携わってもらう。


 こんな便利なものをなぜ、戦争で使わないのか不思議だ。余談だが、国同士の戦争では魔法を使って合図する。そちらの方が音も大きく、光が増す。しかし、その音も光も、大きくするためには魔力を無駄に消費しなければならない。魔法使いとは戦争において大事な駒。実にもったいないことをしていると思う。



「ふぅ。っとアレか。」


 ラムサス山の双子山は標高がラムサスと比べて少し低い。だが、変わった特徴が一つある。山の頂上か非常に平べったいのだ。端と端で高度差はほぼなく、木々が乱立するものの、更地にすると、それは綺麗に相手陣地が見渡せるだろう。今回はそれが問題となった。

 山にいる山賊達には暗黙の掟というか、了解がある。それは山の占有権についてだ。山におけるその場の統治権は全て頂上を取った山賊団や盗賊団が持てることになっている。何故だかは知らないが『カナダス』の代表がプライドだとかなんとか言っていた。

 いい年にもなって何を言っているんだとヒルシスさんがツッコんだが、あんたはいくつで獣人のプライドを捨てられてないんだ。


「おおっ、待っておったぞ。」


「すいません、クロムさん。これでも結構急いで来たんですけど。」


 北側に建設された簡易な『バルバラ』の城は、防衛能力が簡易な割にしっかりしており、どこからでも射撃が可能で外堀には我々『カナダス』の存在を嗅ぎつけたのか、何人もの武装兵が槍を持ち、こちら警戒している。

 俺に声をかけて来たのは勿論、バルバラの兵士ではない。カナダスの最古参であり、現在のカナダス代表であるクロムさんだ。


「やはり結構な数がいるんですね。カナダスって。」


 俺はこのバルバラの城を囲む兵士達に圧倒された。俺はこの日、一気に城を落とす準備をしていた。援軍を抑えるため、結集しそうな第二本部を真っ先に潰し、獣人を配置することで第二本部に集まる他の支部のメンバーを片す。獣人はヒルシスという英雄の指示で裏切ることはほぼない。

 彼らにもう一つの役をこなせるだろうか。いや、ヒルシスさんがいるから大丈夫だと思う。


「そうじゃろそうじゃろ。して、何故わしをおじいちゃんと呼んでくれん?」


「依頼者をそんな風に呼べるわけないでしょ。」


 この爺さんは全く緊張感のない人だ。良い言い方をすればフレンドリーになるのだろうが、彼の場合は距離がゼロなのだ。もう、ほんとに疲れる。


「じゃあ、そっちが終わったということは……そろそろ本部にカチコミに行くんじゃな?」


「まあ、そう早まらないでください。」


 あ、あとそれと血の気が多くて困る。冷静さがないというか、戦好きというか、それでも彼に付こうと昔からこんなにメンバーがいるのも不思議である。純粋に金が稼げるというのもあるのだろうが。


「今回は最初、話し合いでいきます。」


「な、なに!?話と違うぞ!?」


 それはそうだろう。何しろ元は全軍で城攻めと言って

 作戦を立てていたのだから。このおっさんはどこか、殺し合いをしたがる。まあ、それが彼らのやり方だったし、悪いことなんてない。昔のやり方を模範すれば普通が手に入るし、安定が訪れる。

 しかし、それはいつか終わる。


「僕はもともと作戦会議の時、戦闘は反対でしたよね?」


 まあ、とクロムさんが頷く。


「なぜなら、あなた達古参としての誇りを捨てるということになるからです。」


「なっ!?カル坊!俺達はそんな誇りなんて盗賊になった時から捨ててんだ!」


 クロムさんの側近、弟のキュロル副団長が俺に糾弾する。ちなみにカル坊とは俺のことだ。流石にテルマッドという本名を晒すわけにもいかず、カルマッドという偽名を使うことにした。


「それは違います!あなた達のやり方は一見見れば、殺人、略奪、破壊……野蛮なものです。それでも非武装の人間に手を出さないのはなぜでしょう?略奪はしようとも、商人を生きて返すのはなぜでしょう?」


「そ、それは……」


「いいですか、それは誇りです。プライドです。こんなガキどもの集まりに、死者なんて出す必要はないんです。あなた方には守るものが別にある。それを忘れないでください。」


 カナダス全員が言い詰まる。彼らは山賊としては不思議で、傘下の盗賊団にはかなり暖かく見てやり、捕虜などもその住みやすさに、解放されたとしても再び戻ってくる。地上の村は、賊に襲われることがしばしばあるが、ここは山の支配権を持った山賊。誰もこの村を襲ってくることはなかった。

 それは彼らの優しさという誇りだ。することは最低だが、堕ちすぎていない。彼らはそれに気づかず、これが当たり前だと思っていたのだから、先人はさぞ立派だったんだろう。


「わかった!話をつけにいく。」


「兄さん!兄さんが行くなら俺も護衛としてつく!」


 ここでようやくクロムさんが了諾した。

 キュロルさんが護衛につくと言ったが、それをされると困るのは俺達だ。


「いいえ、キュロルさん。あなたには残ってもらいます。我々が護衛につきます。」


「バカ野郎!そんなこと許すはずねえ!だいたいお前達だけで兄さんの護衛は不十分だろ!」


 そこでクロムさんが手で彼を制した。いつもは孫大好きっ子みたいな雰囲気のクロムさんだが、こういう時はしっかりと代表の務めを果たす。


「バカはお前だ馬鹿者!もし私とお前が死んだらどうなる?村で暮らす者、ここにいる団員。皆路頭に迷ってしまう。それを防ごうとカル坊は自らこんな危険なことに手を上げてくれたのだ。」


「でも、このガキと獣人のおっさんで何人もの相手を……」


「それはお前も見ていただろう?」


「くっ。」


 わかった、とようやくキュロルさんは同意した。だいたい今日中に城攻めは終わらせないといけないのだ。こんな話し合いで時間を取っている場合じゃない。


 太陽はそろそろ真上へと上がり始めた。








一話で終わらせようとしましたが、無理でした!すいません!

次で終わると思います。更新時は未定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ