進撃
「さっきから何人倒したっけ?」
現在俺たち襲撃班はバラガさん達第四師団を上に置き、地下を攻略していた。
湧き出てくるガタイのいい人たちに圧倒されながら、なんとか自分の身を守っている。
しかし、
「溶けなさい!溶けなさい!ははは、いい気味ですねェ。」
こわい!見方なはずなのにこわい!
神聖な純白から飛ぶ光の光線が元第五師団の彼らを溶かしていく。文字通りに。
そして、第九、十師団の人たちも強い。
相手一人に対して必ず三人のチームで当たる。
力が少し当たっていれば、数で対処できるというわけだ。
「そうね、三十はやったでしょ?」
右手に盗賊の頭を持ちながら、ギリギリと締め付けていく母に俺は恐怖を覚える。俺たちは後ろから挟み撃ちにしようと攻撃して来る人たちを倒す役目だ。
それにしても、人って片手で浮きましたっけ?
地下はいろんなところに部屋があり、そこからゾロゾロと野蛮そうな人達が湧いて出てくる。
なんだか、アリの巣みたいで居心地悪い。
少し進むと、前から第九師団長のパクチさんが後退してくる。
そしてアンジュの横に付いた。
「副団長、こいつらもしかして?」
「ええ、多分師団の連中じゃないわね。」
ん?それってどういう意味だ?
今俺たちが戦っているのは第五師団じゃないってことか?
「ま、邪魔するなら殺すだけよ。もうすぐリハンも来るだろうし、ちゃちゃっとケリー家のとこまで行っちゃいましょう。」
その言葉を聞くと、パクチさんは大きく頷き、走って自分の師団の方まで戻って行った。
なんだか、作戦って言うより、方針だよなあ。
「母さん、ってことな人達って雇われたってこと?」
マックさんの拘束魔法によって、体を硬直状態にさせられた盗賊の人を見ながら、聞く。
「多分ね。第五師団のマントを羽織っているけれど、奴らこんなに弱くないもの。」
いや、結構強いんですけどね。
高火力の魔法既に5発は僕撃ち込んでるんですからね。
「いでええぇぇえ!」
「体ガァ、言うことをきがネェ!!」
「に、にげろぉおお!退散だあ!」
まるで俺たちが侵略者のような言い様だな!
「おい、おいおいおい!あのマント、もしかして『月光蝶』っていう盗賊団じゃ!?……ん?」
一番デカイ態度を取っていたおっさんが斧を振り回しながら言い終わると、自分の体を気にし始めた。
胸のところに手を置き、呼吸が荒くなる。
「あ、ああ"……穴が空いちまっだ!」
外傷は特になく、目立っているのはかすり傷のみ。
しかし、胸を苦しそうに抑えて穴が空いたと叫ぶ。もしかしてこれって……
「あ、ちょっとテルマッドには刺激が強すぎるかしら?まあ、このぐらい慣れておいてもいっか。」
う、多分あれは内臓器官を破壊するっていう魔眼のマックさんか。
でもあれは徐々に内臓器官を破壊していくって聞いていた。このおっさんとあったのは3分くらい前だったから……
マックさん恐ろしい!
「大きい魔力を感知しました!こちらが接近しています!」
ほぼ一本道の地下はだいぶ進みやすかったが、罠が多い。
踏んだら起動するものや、魔力を用いた行動をすればその魔力を乱す風が出てくる装置。
めんどくせえ。
「ここね……」
一本道に急に出てきた角を曲がると幅が大きくなり、高さもついた大広間が出てきた。
それには扉を守るかのように本物の第五師団が各々敵を殺すための道具を持って、俺たちのことを待ち構えていた。
「ようやく本当の彼らのお出ましですか。やはり奴らはただの傭兵だったのですね。」
お互いが間合いを把握できる位置についた。
魔力の高まりは相互間でどんどん高まっていく。
一発触発、そんな空気だ。
「ねえ、もうほっといてくれないかしら?」
そんな中緊張感のない声が響いた。
美しい声だが、同時に嫌悪感も抱いてしまう。
その声の主はゆっくりと第五師団の間をすり抜け、こちらへ赴いた。
「これはご無沙汰ね、カミラ。」
アンジュが手だけを挙げて挨拶する。
アンジュを見ればわかるようにどうやら、かなり彼女のことを嫌っているようだ。
しかし、カミラと呼ばれたこの女性は誰なんだろう。
「まだあのデブ男についているの?」
「あら、それは失礼ではなくって?孤児院上がりの副団長さん?」
「どうとでも言っておきなさい。あなたかわいそうね。」
眉間に皺が浮き出してくる。
おいおい、これやばくないか?
「そこを通して頂戴。」
「相変わらず低脳なことを言うのね。通すわけないでしょう?」
ガンッッッーー激しい剣の音がなった。
そのあと金属が擦れる音が大広間に響き渡る。
あっという間にそれは乱戦になった。
「テルマッド坊、大丈夫です。我々がお守りするので。」
ルナさんにそう声がけされる。
たしか水魔法の使い手だったはずだ。それによく見ると第二師団が総出で俺の周りで戦っていた。
「エル!第二師団とテルマッドを連れて、中へ行きなさい!リハンを待ってる暇がなくなったわ!」
近くの敵をちょうど溶かしたエルさんがそれにアイコンタクトを送り、僕たちのところに来た。
多分母さんは第九、十師団と第六師団だけで戦うのだろう。
正直キツイ気もするが……
『消滅眼開眼』
なんだか、楽しそうにカミラさんの魔法を消していたので、放っておくことにする。
第二師団とエルさんで頼りないことはない。
俺たちは互いに援護しながら、奥の扉まで辿り着いた。
他となんら変わらない普通の扉だ。
エルさんが浄化の魔法を一応かけ、俺がドアを開ける。
俺たちは一斉に突入した。
「けっ。汚らわしい猿どもめ。もう来おったか。」
奥のイスにがっぽりと大男が座っていた。
ガタイや、図体がデカイ男ではない。ただ単に脂肪で太っているただの肥満だ。
「ピリーさん、どうしてあなたほどの地位を持った方が裏切りを?」
エルさんは我々にいろんな支援魔法や、結界を張りつつ警戒した声を出す。
「狂った神父に答える義理などないが?」
「皆さん戦闘態勢です。あの男を殺します。」
エルさんが俺たちに指示をする。
この中でも群を抜いて強いエルさんが指揮をとることが当たり前なのだろう。
『破滅の光』
黒色の光線をエルさんが放つ。非常に渦々しいオーラを纏った消滅の光は床を食い散らかしながらピリーにぶつかった。
地下が崩れるのではないかというような地鳴りが教会を襲う。
「む、やはり硬いですねあの男。」
煙が晴れ、出て来た男は無傷だった。
☆☆☆☆
『拘束縄』
「バインド?雑魚が。そんなものが通るとでも思ったのか?」
未だ、余裕の表情を見せ、こちらへ微笑みかけるケリー。
イスが『破滅の光』によって壊れてしまったので、立つことを余儀なくされている。
『水龍源散』
今度はルナさんが圧倒的な魔力で四方から奴を攻める。水魔法は威力が低めだが、応用が効くところだ。それに威力だって、魔力を込めれば怖いものになる。
「ぐはははっ!なんだ、今度は水浴びか?笑わせてくれるじゃねぇか!」
もちろんそれだけであの硬さを敗れるとは思っていない。
エルさんに聞いたところ奴の得意は防御魔法らしく、そんじょそこらの魔法では攻撃が通らないらしい。
物理攻撃もその非ではない。
「だから相性を使わせてもらいます!」
両手に魔力を込め、胸の前で魔力を交差し、力を合体させる。
まずは電気を通す。魔力でも水は雷の魔力をよく通す。
『雷霆神の伝説器』
未だルナさんの魔法によって自身の周りを水で覆われているピリーに雷の合成魔法を撃ち込む。
バチッと電流が流れ、鈍い音とともに爆発が起こった。
「ぐそう、クソクソクソ!俺の防御魔法に傷をつけやがったな!」
なにか相性を唱えるピリーの腕には何かがはまっていた。
それが地面に魔法陣を展開し、それから人型の塊が生えてくる。
「行け、我が息子よ!」
それに姿を現したのは次男ルピー君と長男のベリー君だった。




