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闘技場④

かばんちゃん。゜(゜´Д`゜)゜。

 

「ぐっ!」


 全体重を剣に乗せて、斧にかかる怪力を止める。

 しかし、それはジリ貧で、こちらが完全に押されているのは理解できた。


「おりゃあ!」


 ついにおれの長剣は弾かれ、おれの体も3mほど後ろに後退した。

 膝をつき、彼女を見据える。


「まだまだあ!」


 その場にいた彼女は斧を持っていることを思わせない身軽さでこちらに突進してくる。

 勢いのまま、あの力で斧を振り抜かれてしまえば、一発KOだ。


 しかし、電光強化の戦い方も一回戦で使ってしまったし、いくら脳筋そうなロザリーもそれは考えているだろう。


 ならば、


『激雷の剣』


「な、なに?どこからエンチャントソードなんてっ?!」


 右手に昔お世話になった剣を持ってロザリーを迎え撃つ。

 ロザリーは勢いを止められることはできないので、意を決し、そのまま突っ込んでくる。

 上段からの落とし攻撃だ。

 それを俺は本気で『激雷の剣』を振り上げる。


 電気とは違う、ビリビリとした空気が俺たちを中心に広がった。

 俺の立つ地面が下がる。

 ぐいぐいとロザリーの怪力に押されている。


「うわっ!?」


 俺の剣が消え、ロザリーの斧が降ってくる。

 慌ててバックステップで回避。しかし彼女の反応も早い。

 俺が後方に変えたのを見ると、すぐに追撃する。


放電(クラッシュ)


 強い青白の光ををロザリーにむけ、俺は右へと躱す。

 これで放電の効果をくらってくれればいいのだが。


「ちょこまかとっ!!」


 やっぱりか。

 土魔法で、自分の周りを防衛し、雷を通さないようにした。土魔法も使えるとは。


「おりゃあっ!」


 次は斧を横なぶりにこちらへ降った。

 すると斧の形状に沿って、空気の刃がかなりの速度で飛ぶ。


『静風』


 しかしその刃は俺にあたる寸前で消えた。

 彼女が飛ばしてきた刃は魔力を帯びていたので、属性的に考えれば風。

 なら、俺が風の魔力を沈めたらいい。

 盗賊たちは全く威力のない魔法を覚えようとはしないが、しっかりと有用性があるのだ。


『電光強化』『英雄の赤槍』『英雄の黄槍』


 身体強化を施し、右手に赤槍、左手に電気の槍を纏って、中距離から次々と放っていく。

 10本ほど、防がれたが、一発防ぎきれなかったものが当たった。


『電撃』


 大きな砂煙が立つ。

 そこに俺は追い討ちをかける。

 5発目を打ったあたりだろうか、砂煙が一瞬で晴れた。

 そこには斧で、電撃を一振りしたロザリーが立っていた。



 ☆☆☆☆



 俺たちは今尚拮抗した戦いを続けている。

 負ければ自由にはならないという気持ちと、ロザリーの負けられないという決意がぶつかり合う。


「んぐぐぐぐっ!」


「んむむむむっ!」


 もう一本持ってきた短剣で、彼女の斧を抑える。

 しかし、圧倒的な重量の差から、ズンズンと押されてきた。


 まずい。強いぞ。


『烈風』


 俺と彼女の間に強い風を起こし、俺たちは再び距離をとる。

 また何か仕掛けてきそうだ。このままでは防戦一方なんだが……


「ちょこまかちょこまかとオオッ!!」


 そう叫ぶとロザリーの体が薄っすらと何かを纏った。

 赤色のカーテンのようなオーラがぼやけて写っている。

 直後、ロザリーは先ほどの速度とは段違いの速さで迫ってくる。


 なるほど、身体強化か。

 あれほどまでに効果の現れるものだと、逆に分かりづらいな。


「おりゃああ!」


 今度は右の薙ぎ払いで攻めてくる。

 それをジャンプでかわし、ノックバックし、次の攻撃の手を見ようとした。

 しかし、ロザリーは俺が空中で動けない状態を狙ってきた。


 轟音の斧が宙を切って下から俺に迫る。

 右手に多めに魔力を込め、俺は『激雷の剣』で応戦する。

 俺とロザリーの間に大きな衝撃が生まれた。

 俺の剣は消滅し、後方に吹き飛ばされる。ロザリーは斧を振り上げた状態で堪えていた。


「なんて強靭な体なんだ?」


 俺は無意識につぶやいた。

 ジロッとロザリーから黒い視線を浴びる。

 俺は初めて身体中の毛がよだつ感覚に陥った。


「それ……女の子に言う台詞なの?」


「あっ、いや!」


 ち、ちがうくて、そのそれは失言というか割と心から出たというか……。


「しねえええええ!!」


 彼女はすでに俺の視界にはいない。

 ロザリーが先ほどまで立っていた場所には大きく地割れが起こっていた。


「どこだ!?」


 後ろから強い風圧が体に押し寄せた。

 首だけで振り向く。体が追いついてこない!

 俺の視界に飛び込んできたのは斧。

 木製なのにどこか凶器と錯覚してしまうほどの恐ろしい威力を持ったものだった。


 だが、まだ距離はある。

 ここは一度体制を立て直すため、初級の魔法を打ち込み、彼女との距離を保とう。


「なっ!」


 体が動かない。

 どうしても足が動かないのだ。

 なんだ、これは怖気付いてるということか?


 ちらりと自分の足を見る。

 すると、俺の足が動かない理由がすぐにわかった。

 土魔法だ。土魔法で足枷を作り、俺の行動を封じたのだ。


「なんて単純なものにっ!」


 ロザリーはすぐそこまで迫っていた。

 一か八か、やるしかない。

 手に魔力を込め、足元に人を展開させる。


湖流水源(ウォーターフィールド)


 魔法を唱えると、ズブズブと地面の下から水が湧き出てくる。

 そのスピードはかなり早い。

 この魔法は指定した範囲を水浸しにさせるという魔法だ。


 シナミィさんに教えてもらったが、魔力燃費は高いし、使用場所を間違うとえらいことになるしで、使い勝手が非常に悪かった。

 だが、今回は当たりだったようだ。


「な、なにっ!?」


 足首まで水が流れ込んだ。

 ロザリーは水が湧き出てきたせいで、土が泥になり、それに足を取られて動きが鈍った。

 もちろん土は泥になるので、俺の枷となっていた土も泥となり、晴れて自由に。


『水流操作』


 俺は少ない水を操れる魔法で、足元から水を失くす。

 泥は残ってしまうので、泥の上から土魔法で新しい土へと変え、丈夫な足場の完成である。

 体に得意の電光強化をかけ、じっとロザリーを待つ。


 たしか彼女は土魔法と身体強化以外使えなかったはずだ。

 これまでの戦いを見てきてのただの推測だが。


 ちなみに俺が先に足場を作った理由は彼女とタイマンを張るためだった。タイマンといっても普通にやっては短剣の俺と重量の斧では勝ち目がない。


 だから状態でハンデをつけさせてもらった。足場の悪い場所でまともに武器を振れるとは思わない。

 ふんばりが安定しないからね。


「おっらあ!」


 しかし、俺が構えて、勝負を仕掛けてきたところをみたロザリーは、にやりと微笑んで斧を俺のいる場所へ、振り込んだ。


「なんのために電光強化したと思う?」


 基本電光強化は筋力を大幅に上がるわけではない。あくまで身体能力、足などに限定し、ダッシュの速度など、行動力を上げるもの。

 それだけでは俺はロザリーとの一対一に勝てる見込みがなかった。


 だから、奥の手の1つを使わせてもらった。


「えっ?」


 トンーー俺は小さな木のダガーを彼女のうしろ首に当てた。

 彼女はピクリとも動かない。ましてや、動いても既に何もできないだろう。


 これこそミマーフルさんに伝授してもらった必殺の技・バックスタブである。

 ギリギリまで相手を引きつけ、一瞬で視界から外れ、背後を取る。

 正直ミマーフルさんならではの技だったが、電光強化のおかげで長い時間をかけてモノした。


 ロザリーは足場の悪いこともあり、力加減が難しかったからか、もしくは本気で叩き潰そうと考えていたからか。

 持っていた斧が完璧に地面に突き刺さり、持ち手の部分が割れていた。


 彼女のサブウェポンである短剣は俺が決め手を打つ前に無力化してある。

 つまりロザリーは完全に詰みだ。

 実戦では完璧に首を取られているからね。


「そこまで!」


 公平を期すため、バッガスさんは今回審判を降りている。

 多分違う班の人が審判しているのだろう。バッガスさんの部下だったら公平とは言えないからだ。


 そのおっさんから一声が上がった瞬間、団の人たちが歓声をあげた。

 手を叩いて、俺たちを祝福する者と、酒を片手に、今の試合について意見を言う者。


 そして勝者の俺は疲れ切っていた。

 合図がかかったすぐに、俺は大の字に寝転んだ。

 そしてすぐに立ち上がり、控え室へと足を向ける。


「う、うぐっ……」


 ロザリーが泣いていた。

 下を向くロザリーはどこか儚げで、俺よりも小さかった。


「大丈夫か?ロザリー。」


「うゔっ……ぐすん」


 肩に手を置くが、振り払われる。

 しかし、ここにいては次の人たちに迷惑がかかってしまうので、無理矢理にでも連れて行く。


 そしてロザリーに手を伸ばした。


「っ!?ど、どうした?」


 がっしりと手を掴まれた俺は動揺。

 確かに闘技後握手する人もいるが、俺にあんな悪態をついていたロザリーが素直に今の試合を認めるとは思えない。


 何かあるかもしれないと構えていると、


「……めん。」


 ポツリと漏らした言葉を俺は聞き逃さなかった。

 特に俺は気にしてもなかったし、何か誤解があるなら解いておきたいし。


「いいよ。さ、行こう?」


 握り締められた右手をロザリーごと引きあげようと、力を入れる。

 しかし、全くビクともしない。それどころか、引っ張った右手が痛い。


「ちょ、ロザリー。ちょっと重いから自分で立って……ぶふっ!」


 殴られた。


「もう!テルマッドのバカ!」


 そのまま俺はロザリーに引きづられて、控え室へと向かった。

 で、どうして殴られたんだ俺!




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