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強者



「おっそいんだけど…」


いくつもの魔法弾がダリアネスを今すぐ殺すまいと空中を切りながら走る。

圧倒的な速さ、破壊力を備えたその力は避け切ることは困難を極める。


ならば壊してはどうか。


悪魔のような力を力でねじ伏せ、抹消させる。

ただただ単純な方法であるが、それは正しかったといえる。

もちろんダリアネスはそれを避ける余裕が存在していた。獣人の特徴だ。


だが動物とは弱者へ対し、時に圧倒的な力を発揮させ屈服させることがある。

獣人にはその本能が残っている。


いちいち魔力を使って鬼剣を使用したことも、その本能に基づく反応である。

そしてダリアネスは与えた。

その魔人への恐怖を。


「おっら!」


そして圧倒的な俊足を活かし、魔の身を削る。

恐怖からか、化け物は巨漢を持て余し、動きが静止する。


上下左右。

どこから来るかわからない剣撃の嵐は魔力で加工された彼女の身を徐々に剥いでいく。


すでに魔人には私を止められない。


と同時にダリアネスは思った。


(なにかおかしい?)


先ほどまであれだけ積極的に魔法や肉弾戦を仕掛けて来たヤツがピタリと動きを止めたのだ。

それをチャンスだと考え、無我夢中で攻撃を仕掛けていたが…


ダリアネスは剣撃をある程度で止め、バックステップで大きく距離をとった。

壁と壁ほど離れているので自分を上回る速さでないと先制を仕掛けられることはない。


いや、まず仕掛けるのだ。


『爆裂銃』


腰に手を当て、何万回、何千万回と行った動作で魔力の塊を破壊させんと銃を撃つ。

初段が化け物へとぶつかる。


それが火種となり、それぞれが爆音を散らしながら自己を主張する。

撃った張本人までがその耳を痛めるほどに。


「ふぅ〜。流石にこれだけも撃ったのは初めてだったー!」


いつのまにか握られていた鉄砲は腰へと落ち着き、

その手は頭の上でうーんと体を伸ばす助けをしている。


それを静かに見届けたヤハーナは素直に彼女から恐怖を感じた。

圧倒的火力から繰り出される連続的な物量。

魔法剣を自在に操り、かなりの速度を持った魔法を打ち潰す魔力量と洞察力。


もう一方の魔力を感じられない剣。


「ふーむ…。是非うちへ引き入れたい。」


何と言ってもツッコミがあるというのはやはり良いものがあるのだ。

坊っちゃまが私に頭をはたいてツッコミを入れたことがあるだろうか?


「来て欲しい。そしてコンビを組みたい…でも魔眼を持ってない…。」


残念な逸材だったと心のみで涙を流したヤハーナだったが、突然発生した魔力に気づかないわけではない。


「なんだ!?」


完全に不意をつかれた声を出すダリアネスだったが、お得意の反応速度と身体能力でもう一回り大きく魔力との距離を置く。

その手にはまだ行使したことのない剣の持ち手を握っている。


ガラガラっと岩をどかすような音がする。

視力ももちろん人間より格段にいいダリアネスは倒れているふりをしたヤハーナよりもはやく、その姿をとらえた。


夥しい魔力を煌々と放つ異色の存在。

魔力の伝達が空気を伝ってこちらまでやって来る。

気分が悪い。

まるで空気中に魔力がないようだ。


ヤハーナははっきりと存在を目にする頃にはダリアネスが既に銃を乱射していた。

先程の弾数が目に見える塵ほどの多さである。


ヤハーナが確認するとダリアネスは恐怖からか、それとも魔力の使い過ぎからか、肩で息をしている。


そのまま爆裂が終わるまで見届け用とした矢先のことだ。

爆発が急に何かくろいオーラのように包まれ、一瞬にして収まったのだ。


そんなこともできるのかとヤハーナがダリアネスを感心する。

しかしそれは飛んだ思い違いだった。


そのブラックホールのようなオーラで爆裂を飲み込んだのはあの怪物の仕業だったのだ。

砂煙が一瞬で晴れ、右手を前に出した化け物が下を向き、震えている。


ゆっくりと地面から視線がずれ、ダリアネスに好奇的な目線を寄せた。

完全な殺気を混ぜた好訢的である。


それと目があった獣人はふるえあがる。

そして直感で感じた。


これは死ぬ。


脳すら反応できない邪悪な一本の光線が轟音を立てて直線に飛んだ。

空気の魔力を吸い取り、命までも吸い取る火力。

ヤハーナは何も考えることができず、ただ呆然とした。


圧倒的な魔力に対してではない。

間違えなくそれに驚いたのは事実。

しかし彼女がそれをも忘れるぐらい驚愕した。


そのレーザーが行進した地面は全て丸く無くなっており、塵も残っていない。

しかしダリアネスが立っていた場所から後ろは全くそのままの姿なのだ。


それは身を呈して場所を守ったわけでもない。

少年や、そのほかの人間を守ったのでもない。


ダリアネスは立っていた。

優美に、ただまっすぐに敵を見る。

そして紅蓮に光らせる得物で体を強固に守っていた。


一本の紅の刀身が全ての魔力を吸い取り、消し去り


剣となったのだ。




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