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剣登場


「おお!3発も入ったのに動けるのか!」


壁から抜け出し、ゆっくりと再び焦点を合わせてきた化け物にダリアネスは無意識のうちに賛辞を送っていた。


だが、目の前の怪物はユタユタと足取りはおぼろげで、体の所々からシューシューと煙を沸き立たせている。


「3発という油断が今回の結果に繋がりましたね。

そしてあなたの甘さも相見えました。まさか自分で墓穴を掘るとは……ふ…。」


弾丸を穿った彼女の数歩ほど後ろには髪を一つに束ねた女性が小さな声で獣の女に罵声を浴びせた。

もちろん獣人の彼女の耳は悪いはずがない。


「な!ん!て!?様子見でしょ?ようすみ!勿論連射なんて余裕よ、余裕。」


銃を手に持ったまま腰に手を当てて、ふんと鼻で笑う。


「同じ言葉を並べて言えばバカに聞こえますね。いや、バカなんですけどね。」


「んきいいいい!」


息を少し切らしながら魔力の怪物は再びこちらへと迫る。先ほどとはまた一段比べ物にならない速度で体を2人に寄せた。


『戦鬼眼』


突如、ツインテールの女性に変化が起こる。

体を取り巻く空気のマナを彼女の【眼】が喰ったのだ。


それを証拠に、ヤハーナの左目は赤く、虹彩に沿って鮮やかな紅色を線引いていた。


それに勘づき阻止しようとしたのか、はてまた、恐怖に身を任せてしまったのか。

それが反転の一手になってしまったのだが…。


「よいしょぉぉおおおおお!」


くわっと目を見開いたヤハーナは怪物の豪腕よりも早く、疾風の拳を前に突き出した。

魔力を纏った彼女の初手はノロマな怪物の中心を捉え、その軸を潰した。


「あああぁぁァァアアアアアアアア!!」


化け物は奇声をぶちまけ、音を立てながら宙を舞う。

ドオンと煙を立て、再び元の壁へと巨体をぶち当てた。


「うっわ、すっごいわね〜。」


「当たり前です。あなたみたいにモノに頼ることではダメですよ?成長しません。」


お、おお。と戸惑いながら返事を返したダリアネスは両手に構えた銃を腰に下ろした。


「それも…そーだけど、さ?その、なんていうんだろうな…。」


「なんですか?」


なかなか言葉の真意を言わないダリアネスに嫌気がさしたのか、ヤハーナが先を催促する。


「いや、その…掛け声っていうのかな?ちょっと…その、気持ち悪いってか、な…?」


すこし気まずそうに思うことを告げたダリアネスの予想を反し、帰ってきた答えは想像とは違うものだった。


「ん?ああ、殴る時の声ですか?あれはあれでいいんですよ。ま、事情ってやつです。そんなことすらわからないなんて、いいお嫁さんになりますね?」


「くきいいいいいいい!」


手をひらひらとはためかせ、目をつぶり首を振るヤハーナにダリアネスは顔を真っ赤にして怒りをあらわにする。


ーーーーガラッ


向こうの崩れかかった壁の瓦礫が転げ落ちた。

それを瞬時に見抜いた2人は再び戦闘態勢へと構えを変える。


「んはっぐ………っ!!」


しかしその態勢はすでに遅かった。

ヤハーナが気付けばあのバケモノの右手が腹にめり込んでいる。


「ヤハーナっ!!」


後方へと軽い体が飛行する。

体を宙に舞ったまま我の身体、主に腹を見る。

出血は大丈夫。

多分肋(あばら)は何本かやられたが、魔眼で一気に治せるだろう。


(ですが、なぜ急に…??)


めんどくさいので、ここは獣人の女に任せるとしよう。

基本宿以外に興味はないのだ。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「くっそ、ヤハーナをっ!!」


野生の感か、それとも相手の気圧か。

動けばやられると体が硬直されているのだ。

しかし、ここに立つのはただの動物ではない獣人である。


突然相手の巨体がゴロゴロと崩れる。

急に体勢を崩したバケモノに鍛え抜かれたキックをぶち込む。


それに追撃するかのように、ダリアネスは体を大きく後退させつつ、爆裂銃を一マガジン分放った。

轟音を立てて視界が煙へと包まれる。


「手応えがなかった。」


ダリアネスは音を立てず拳銃を腰にしまった。

わずか、視界の右端の煙がうごめく。


瞬時に左から何かが飛来するのを察知した。

左手を背中にかけている得物にかざす。

神経を研ぎ澄ませ、それ以外を無視する。


「はい!今!!」


大きめの掛け声とともに空気が一線され、煙がサッと切れる。

空気の流れが剣の振るう周りのみ変調し、その威力から飛来した異物を完全に消去した。


「アアアアア!」


それは圧倒的速さだった。

奴は謎の魔力の塊を玉のようにして左手から放った。それを囮に、自らが上へと移動して奇襲を仕掛ける。


単純な作戦だが、魔物や他の凶悪動物にしては知能が高すぎる。

もちろん普通なら余裕で見抜けるようなマヌケ攻撃だ。


「ええ!!上!?」


が、あいにく相手は獣人の娘。

人間種より知能が大きく劣ってしまう。

奴の攻撃をまともに受けてばたんきゅ〜だと思われた。


しかしそれは杞憂。

人間種の代わりに獣人種に与えられた恩恵がもちろん存在する。


【身体能力】


人間種や、小人族よりも圧倒的に身体的能力が上であり、小人族まではいかないがパワーも備え付けである。しかし頭の回転がいくぶん遅いため、人間に守ってもらうようにしかできなかったのだが。


「よっ…と!」


ギリギリ奴からの攻撃をかわし、バク転しつつダリアネスは距離を図る。

彼女も流石に焦ったのか、大理石の床を砂埃立てて滑る。


「ビビったー」


証拠に可愛らしい尻尾がピンと天を突き刺している

それを避けられ、バケモノは予想外と驚きつつ再び反撃の魔法が詠唱する。


謎の魔力が篭った魔法弾が目にも留まらぬ速さで獣人の娘を狙い撃ちにする。

全く常人であれば反応することすらままならない魔法をひらりとかわし、被害を少なくするため左手の長剣で斬り刻む。


いや、どこからかの魔力で打ち消したのだ。


見るとその剣の刀身には光り輝き、魔力を発する魔法陣がその姿を廻して展開している。

その光は若草色の彩色にどこか涼しい香りが漂う。


『鬼剣・奏草』


物理的な風の発生にダリアネスの可愛らしいポニーテールが揺らぐ。






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