え、嘘?
「ど、どうしましたのか、母上?」
「どこでそんな言葉を覚えたのかしら?」
めちゃくちゃに怒ってらっしゃる。
周りには第4師団長、第5師団長、第7師団長の3人がそれぞれの師団を連れて周りを囲ってる。
その円が割れ俺のために道を譲ってくれる。
俺が何かしたのか?
いや、でも最近したことは魔術の練習しか…
「テル。聞いたわよ。あなた手から火が出るんだってね?」
「へっ?!」
も、もしかして誰かに見られてたのか?!
いや、そんなはずはない。
あの小屋はもともと族長である父が所有しているものだ。族長の所有物に接触できる人といえば……
「ま、まさかロザリー?」
「ご名答ね、テル坊。さ、話してもらおうかしら?」
ぷぎゃー!!
さっきも見ていたロザリーか!
「で、ではまず全属性を出していきます…」
「え?!もう全ての属性魔法を使えるの?!」
曖昧な答えを返した俺は右手に魔力の流れを送り込む。徐々に腕から手にかけて熱を放ち、汗が溢れる。
遂に手のひらから…
「まずは火属性生活魔法『着火』です。」
師団長の方からおおっ!と声が上がる。
『着火』は自然魔力を体内に取り込んで火属性魔力を生成し、外に放出する魔法だ。
用途は何かを温めるために使われる。
主に調理などだ。
「次は?」
「はい。水属性魔法です。」
アンジュに急かされて次の魔法に移る。
「水属性生活魔法『洗浄』です。」
ヒンヤリとした冷たい水が地面へ水道の水のようにサーと流れ落ちる。
『洗浄』は自然魔力を体内に取り込み、水属性魔力を生成し、外に出す魔法だ。
主に皿の洗浄や、馬、家畜などの洗浄にも用いられる。
「雷属性生活魔法『電光』です。」
右手に流した雷属性の魔力が発行を始め、昼間であるというのに少し周りが明るくなった。
『電光』は自然魔力を体内に取り込み、雷属性魔力を生成し、外に出す魔法だ。
これは主にダンジョン攻略や、夜の見回りと、夜中に活躍することが多い魔法だ。
工夫すれば『電光』を薄い魔力に閉じ込めて、設置することもできる。
「土属性生活魔法『彫刻』です。」
俺の右手から、かなりアバウトに土粘土のような材料で作った馬を作り出した。
『彫刻』は自然魔力を体内に取り込み、土属性魔力を生成し、外に出す魔法だ。
凄い『彫刻』使いともなると、5mほどの像を1分ほどで作るらしい。それも精巧なものをだ。
「風属性生活魔法『爽風』です。」
土の上に少し残っている葉っぱが風に乗って一点に集められた。
『爽風』は自然魔力を体内に取り込み、風属性魔力を生成し、外に出す魔法。
風の生活魔法は落ちた枯葉を一瞬で掃除したいときや、暑い、寒い時などに風を送ったりすることができる生活補助をしてくれる魔法だ。
逃げ道がなかったので、これまで秘密裏に特訓してきた魔法の成果を全てマミーに見せた。
もちろん驚いていたし他の師団長達も驚いてた。
でもまだだ。
こんなものではパパには勝てない。
うちのパパの話はまだしてなかったかな?
ま、のちのちする機会があると思うけど簡潔に言うとパパはメサンクサにつおい。
ママも霊長類最強レベルだと思うけど、やっぱりパパは強い。
何かが違うんだ、何かが。
そんなわけでまだまだ強くなって認めてもらわなくちゃならない。運がいいことに俺は前世の記憶を持っている。ならばこれからどんどん強くなれるはずだ。
よっしゃ!
頑張れ俺!
1歳の体!
ここに来て前世では一度も感じなかったヤル気が心の底から火山のように噴き出してきた。俺は田舎の、あの安定した生活のまま結婚せずに死んでいくもんだと思って人生を諦めてた。
母に満足な暮らしをさせることができず、俺たちの生活費で精一杯なため、妹の食費までをも払えなかった。でも人間って目標があれば変わるもんなんだよな。
「テル…あなた明日から授業に出なさい。」
「え、いや母様?授業は10歳からでは…」
「なに?あなたは1歳…でも強さは10歳、わかる?」
「イエッサー」
帰り際に各師団長から「頑張れ若造!」って声をかけられた。あいつら許さん…
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おはようございます。今日から授業ですね。
あー、久しぶりだなー授業って!
なんてったって10年以上も前の話だからな。
正直アンジュにはああやって言ったけど結構楽しみだったりする。
そいえばよく高校生が楽しかった!小学校の時が楽しかった!っていう人がいるけど実は、その時その時が一番楽しいんだよね。
「うーん!」
俺はいつも2階で寝ている。前世の習慣なのか思いっきり背骨を伸ばし、朝一番で起きて着替えと用意を済ます。1階に降りるとマミーアンドパピーが朝早いのにスタンバイしていた。
「おはよう、テル!」
「おはよう。テル坊。」
「お、おはようございますでござる。」
なんだよマミィ…目が怖えぇぇんだけど!
親父なんて歓喜しすぎて今にも俺に抱きつきたそうにしてるのに、アンジュが漆黒のオーラを纏っているから太ももをがっちりと掴んで飛びつくのを抑えている。
大変だねパピーも。
あ、俺のせいだったっけ?
「さ、着替えて、テル坊。リハンと一緒に講義場まで行ってきなさい。」
「はーい」
この村の授業は特別でその分野分野のスペシャリストを超えたスペシャリストが、講義をしてくれる。
入学式とか学校のような行事とかは基本ないがたった一つだけ大事な儀式がある。
それが《闘技大会》だ。
そのことについては当日にでも綴ろうと思う。
さて話を戻す。
今から僕が受ける授業は選択制だったはずだが、アンジュが勝手に全てを受講してしまった。
魔法の練習できねーじゃんよ…。
「もうそろそろいくよ?」
「もぎゅもぎゅ…ん……はーい!」
地味に美味しいパン的な何かとウインナー的な何かを口に押入れ左腕に赤色の帯を巻く。これは授業を受ける時になければ受けられないパスポート的なものだ。
「いってらっしゃい。がんばりなさいよ!」
やべぇ、クソ美人に見送られて、ただのイケメンと一緒に学校に行くとか月9でも見たことねぇな、この絵面。
何度も言うが俺は1歳だからパパに抱っこされて登校する。リハンは背が高いので周りの視界が新鮮。
「おい聞いたぞ、テルマッドー。お前魔法使えるんだってなー?すごいなーこんなチビなのに。」
「いつかパパを超えるんだ!!」
「そっかそっかー。せいぜいがんばれよ!」
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校舎は木製で教会をそのまま改築して作られたような細長い建物だ。それが8つの部屋に分かれていて塾の割り当てのように授業がはまっている。
俺が受けるのは魔術の授業と盗術と剣術、それから体術に生物・経済だ。
授業というより体育だろこれ…
生物・経済が唯一の座学になりそう。
リハンとバイバイして緊張な面持ちで受付へと歩いて行った。




