確信と覚醒
「私はそこで気づいたのよ。普通の人間は魔力を取り込むことはできない。なら、なんらかの媒介を通して自らの糧とできないのか?とね。」
仮面の女…ルートは終始表情をコロコロと変えつつ話を語った。いつでも殺せる準備をしていた俺たちだったが、圧倒的なオーラの前に手出しすらできなかったのだ。
胸に深く剣が刺さったようにも思う。
それほどまでの負の感情が手に取れたのだ。
俺たちは未だ全く警戒を解かない。
彼女が自分勝手な思いで人をさらい、果てには彼らを殺して魔人となりうったのだ。
彼女を許すことは絶対できない。
なぜこんな気持ちがあるのだろうか。
なぜこのような感情が生まれるのだろうか。
ただの偽善ではない。
この人から生まれたことを忘れようとしているわけでもない。
彼女に自分を見つめてほしいのだ。
自分を見つめ、考えた上で今何を犯しているのか考えてほしい。
そして最後は父を呼ぼう。
虚か真か、真実を聞けばいい。
「みんな、彼女を倒そう。」
俺は呆然としている彼らに一言伝えた。
しかし返答は予想したものだった。
「む、無理だぜ坊主。さっきとは桁が違う魔力だ…」
「おじさんの言う通り我々が限界を出しても…」
俺が思考している時もルートの魔力は跳ね上がっているのだ。
その原因に俺は勘付いていた。
「わた…し、は許せないの…彼女が、彼女が。」
まだテレスのことを引っ張っているのだろうか。
力が膨大さをさらに増した。
すでに俺が止められる力ではない。
「とりあえず逃げないと!」
この言葉に解されたのか皆すぐにこの地から退いていく。
すると急に黒服達が彼女の元へと走った。
足元に着くと額をつけてルートの足を掴む。
「もしかして、魔力を吸っている?」
触るものは皆生気を失い、皮膚が干からびたように痩せ細り、最後は骨同然となってしまう。
だが、ルートは黒服の山ができればできるほど紫色の力がさらに宿り始めていた。
「わたしはゆるせ、ない。テレス…なぜあなたはリハンの元へ?どうして……どうして私を置いて………」
黒服は誰一人と生きていない。
彼女は意味深な言葉を残して目から光を失った。
もはや屍だ。
力しかない死体に俺はどうしろというのか。
行き場を失い、俺は視線をルートから外して使えそうなものがないかと周りを見渡した。
途端にまだ生き残りの黒服が王の座から這い出てきた。
目を凝らしてよく見ると黒服とは違った。
目の色は先ほどの生贄のようで黒服をまとわず、背がやけに小さい。
どこかでみたことのある小人だった。
もしかすると意識を取り戻して必死に逃げようとしているのかもしれない。
助けなきゃ、助けなければ。
死んでも死にきれない!
「ウィンター!」
圧倒的な魔力を体に受けながらも出せる最高速度で彼女の元へと向かった。
ウィンターの前に立つ。
そして彼女を立たせるために手を伸ばした。
「お、おい!」
しかし彼女はそれを無視した。
ずるずるとルートの元へと這いずる。
もしかして黒服達と同じように彼女も!
『ダァアァアアア!!』
ドス黒い魔力の玉をルートは動いた俺に放出する。
当たれば即死
そんな思いが俺の体に跳躍をもたらした。
運動神経を全動員してそれを交わした俺は反撃のつもりで魔法を打つ。
『雷霆神の伝説器』
かなりの魔力を込めての魔法だった。
魔力残量を考えない思いつきの行動だ。
『あ、ああ"が、だあ"』
しかしその魔法を一身に受けたのか、彼女の体は倒れ魔力が拡散し始めた。
と、共に魔力による圧力が次第に収まり始め、俺の体も自由になった。
魔力切れで未だチカチカしているが。
俺の元へとおっさん達が走ってきた。
みな涙を浮かべている。
「お、おい…死んだかと思ったぞ!」
「あはは、まりょくぎれでしにそうですケド」
しかし今まであれを食らってもケロっとしていた彼女がなぜ急に倒れたのか。
俺の心には疑問が残った。
「ん、んん、るるる、んふふふふふ!」
気持ちの悪いうめき声と笑い声が俺たちの鼓膜に届いた。
彼女の足元にはウィンターが横たわっていた。




