そう彼女とは。
本当にお世話かけました!
無事退院することができました。
そしてやっとこさ次話投稿ができました。
これも読者の皆様のおかげです!
「ねえ、ねぇ!あれほどの水鉄砲を使えるってことは相当の魔力持ちでしょ?」
リハンがルートに詰め寄る。
その目は一層に輝いている。
「そ、そ…そんなことない…です……わ?」
急に詰め寄られたことに驚き、唇が届きそうな顔の距離に顔を赤らめる。
いつもと違う語尾が出てしまったことにまた、顔を赤らめた。
「ね!もっかい打ってくれないかな!」
ルートの手をがっしりと握り、お願いするリハン。
エルストリアの人間にこれだけ懇願されれば断る余地もない。
しかしルートが生きてきた中で同い年の格上貴族に会うというのは予想以上に緊張するものだった。
あともう少し時が経てば社交界などに出席せねばならぬのだが。
「は、はい。わかりました。」
ルートは立ち上がってお尻を手で払う。
それにつられリハンも立ち上がった。
リハンの腹に両手を添える。
正直もう付纏わないでほしい。
確かにこの人は顔も整っていて顔点数はどちらかといえば好みに入るであろう。
だが、ここまでしつこい男はあまり好きではない。
わたしは自由になりたいのだ。
『水流銃』
「うわアアアァァア!」
ドテッと鈍い音がなった後にゴロゴロの草むらを回るリハン。
その様は『才』を持った一族には到底見えなかった。
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午後の授業は魔法訓練から始まった。
基本この国で安泰と言われるのは国の軍隊に所属する、もしくは聖騎士団に入団するかのどちらかである。
どちらも難関中の難関で筆記や実技、さらには生いたちまでも調べられる。
本来実力を見るのが妥当なのだが国のお偉い様は裏切られるのがさぞおこわいらしい。
リハンの家柄から考えれば軍隊の所属を狙っているのかと思っていた。
話すのはあまり気が向かなかったが、私も将来のためと質問してみた。
「ねぇ、リハンさん?」
「んええ!?どどど、どうしたの!?」
リハンが大きく驚いたのでつられてびっくりしてしまったが、鼓動を抑えつつ質問を続ける。
「あなたここを出たら軍隊に所属なさるの?」
滅多に使わない言葉だ。
とても話しづらい。
「う〜ん……僕は聖騎士団に入団しようかと考えています。」
「は?」
リハンの唐突な答えに2度驚く。
聖騎士団といえばどの勢力にも加担せず、国にも所属しない完全中立武力。
その強さは国一つに匹敵する。
そのような場所に彼のような家柄であってもコネが使えないようじゃ、入ることすら叶わない。
実力、学力が共に賢者レベルのような者たちが受かるそんな場所に能天気な彼が受かるだろうか。
突拍子もない返答にあははとリハンは声を漏らす。
「そうだよねぇ、難しいよね。」
でもさ、と続ける。
「そっちの方がなんか楽しくない?」
私はそれに目を丸くした。
いや、丸くなっていたんだと思う。
王族ですら容赦なく試験に落ちる聖騎士団。
ましてや貴族など言語道断。
そしてどう考えても頭の悪そうな彼にアレが目指せるだろうか。
良ければこんな辺境まで来ない。
加えて、楽しむ?
バカな。
平民が一攫千金を狙って命をかけて挑む試練にたのしんで挑戦する?
でもなぜなのか。
どこか納得してしまった私がいた。
彼は強い。
実力は弱くとも何かが凡人と違うのだ。
私はこの時から彼のことしか考えなくなった。
授業は前回に引き続いて火属性の授業だ。
我々は今『火球』という魔法の練習をしている。
生活魔法『着火』を魔力の皮で包みてから放出する焼滅魔法だ。
低級の魔物なら半分は吹っ飛ぶであろう。
私なら…だ。
授業の終わりに皆それぞれ魔力でできた人形に向かって魔法を放つ。
距離は最大で100m。短い者で5mだ。
大賢者は600mほど飛ばすらしい。
魔力でできた人形に魔法が直撃すると魔力量が産出される。
解析して数値化するのだ。
これは割と高価で冒険者ギルドという冒険者の仲介組織が多く取り扱っている。
この学園にある者は古くなったそれを安値で買い取ったそうだ。
「おりゃ!」
「とりゃ!」
「えいっ!」
各々詠唱を唱えて、魔法名を発言してから弱い灯りを投げつける。
数値の平均は約60〜80
魔法を覚えたての一般人魔力量は15〜20なので訓練の成果がでている。
私の前はテレスだった。
テレスの番になれば騒がしかった皆が静かになり、火球の行く末を見守る。
「『火球』!」
詠唱が連なり右手に灯籠が音を立てて出現する。
まだ金色の日光を放つ太陽に彼女は少しばかり手を貸した。
サッと直線に火球が飛び、人形へ突撃する。
他の生徒より圧倒的に安定度が増し、魔力量は188を示していた。
おおっという歓声が静かに湧く。
主に男子からの視線だ。
どうやら私の従者は同性にたいそう嫌われているらしい。
私の順番が来た。
テレスの番より集める視線が少ない。
そっちのほうがやりやすいからいいんだけど。
『火球』
魔法名だけを言い放ち、右手からいっぱいの炎を発現させる。
自分がつくった魔法の割には熱い。
早くあれに当てよう。
テレスよりも赤い木の実は素早く人形へと駆けつけて、轟音を鳴らした。
真っ赤な軌道を見つめる他の子供達からは嫌悪と羨望の視線が寄せられていた。
その視線は自然と人形の数字を表しているメーターに行く。
少しばかり長い沈黙とスロットを見つめる興味の目は再び静かな歓声へと変わる。
「やっぱりすごいな、ルート様は。」
「ああ。あれであの美貌だ。」
「絶賛面倒くさい性格が付いてくるぞ」
やはり私の評価は微妙に低いようだ。
こんな連中からの好感度などどうでもいいが、少しテレスと違いすぎると思う。
私の後ろはリハンだった。
今も女子共にチヤホヤとされて若干にやけ顔だ。
その中にはテレスも混じっている。
「どうでしたか、テレス様!」
「はい!とてもすごい魔法でしたよ!」
「あははぁ〜♡」
どうやらこの短期間でかなりリハンと親睦を深めたようだ。
まあ嬉しそうで何よりだと思う。
テレスはもっと自由になって欲しかったのだ。
ちょっとリハンにベタベタ触りすぎだが。
そんなことを思って彼らから視線を外し、木陰に腰を下ろす。
するとリハンはこっちを向いて手を振った。
「ルートさん、見ててね!」
あははとつい笑ってこちらからも手を振る。
おい、もうそろそろやめなさい。
テレスがこっちを狙っているの。
人形を向いたリハンの視線は強いものに変わる。
詠唱なしで右手からかなりの魔力が浮き出した。
それはテレスほどの視線ではない。
私達のしょぼい魔法を見るより我の鍛錬を好む子や、試験場の受付場までもがリハンの魔力に釘付けとなった。
無詠唱で描く火炎の世界は幻想的で且つ、魅力的な力を持っていた。
「えいっ!」
まだ少し高い声からは想像できない火球が見えない速度で直線し、人形を燃やし尽くす。
大いなる火が測定人形を見る目を遮り、皆目をこすり、目を凝らす。
「ちょっと張り切りすぎたかな?」
頭を掻きながら笑う少年は未だ抜けきらない幼さを孕んでいた。
その少年が出した数字はまさに化け物のような魔力量だった。
「3017……だって?」
「……おいおいおいおい…」
「こ、こんなのって…」
「すごいわ、リハン様!」
これには流石の私も圧巻だった。
3000という数字は稀というわけではない。
しかしこの程度の魔法で3000もの魔力を払い、尚且つケロンとしていることがすごいのだ。
この日の授業で私から主席はリハンへと変わった。
リハンは「ごめん、主席なんてものがあるって知らなかったんだ。許してほしい。」と言ってきたが、私の性格上主席という立場は嫌だったので貰ってくれてありがとうと伝えておいた。
私には魔力量が2倍近い彼を倒すビジョンが見えなかったのだ。
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彼が来て既に4ヶ月。
変わりすぎた生活にようやく慣れてきた。
眠たい私に喋りかけ、移動教室や昼食事も常に付きまとうリハンに付きまとうおっかけ女子貴族達。
何度大名行列を作ったかわからない。
しかし私とリハンの仲はどんどん深くなっていった。
私は邪魔者から異性として彼を認識するようになった。
私の最大の友であるテレスが主を恨んでいくように、友から従者になるように、私たちとは相対的に深まっていった。
それはいつもだるそうにしている私でも分かった。
明らかに態度が違うのだ。
いつも通りの日常。
いつも通り起こされて、いつも通り授業を寝て、昼休みに中庭で寝て、予定されてる大事な会食をすっぽかしてテレスと街で遊ぶ。
そんな日常が壊れていくのが手に取るようにわかった。
その崩壊もすぐそばのことだった。
ある日の昼時、私達は既に習慣となった中庭での昼食をリハンと共にしていた。
その日はあいにくの雨で、屋根のあるラウンジで座り、購買で購入したパイを食べた。
リハンはおにぎりを数個食べると私の方を向いてニコニコと笑顔を向ける。
「な、なに?私の顔に何かついてるの?」
「ふふーん♪いや、別に?」
最近はいつもこんな感じだ。
私はあまり食べることは得意ではないので、必ずリハンより食事するのが遅い。
だから、昼食は抜いて昼寝に徹底していたのだ。
だが、それはリハンが許さなかった。
一つリハンにおにぎりを手渡された。
すごく美味しかった。
中には魚の白身のようなものが入っていて、塩が満遍なくふりかかっている。
塩は割と貴重な調味料なので、ここまでガッツリとかけられていては貴族の私といえど気が引けた。
しかしそんな後悔をしたのも食後。
おにぎりが全て胃へと収束されたころだ。
私はそのことを謝った。
「いいんだ。本当に美味しそうに食べるね。そんな君が好きなんだ。」
そんな返答に変な声が漏れた。
嬉しかった。
この時の顔は私自身で思うにも、かなりの変顔だったのであろう。
こんなことを言われたのは本当に初めてだった。
この時何かの優越感が私を支配した。
思考が働き、なぜこんなにも清々しい気持ちになったのかを理解しようとした。
しかしこの時の私にはまだわからなかった。
その日の授業で一番心に残った話があった。
それは歴史学の授業である。
この世界に存在していれば必ず知るその邪悪な使徒。
小さいころから語り継がれる魔を司る神の使い。
これまで人類は魔人との戦いの中で判明したことが幾つかある。
先人達が残した究極の遺産だ。
まず魔人の出現頻度。
これは500年に一度のペースだそうだ。
今は有智250年だ。この数字は過去に現れた年から元号を変えて、年を重ねていく。
私が生きているうちで魔人に会うことはまあないだろう。全く幸である。
魔人は魔を食らう存在。
『人』が持つわずかな魔力をも食べるため村を襲い、都市を襲い、国を襲う。
わずかな疑問が生まれる。
なぜ魔を食らうのか?
生きているため?
それならなぜ自然の魔力を吸収せず、人間の魔力を吸い取るのか。
これが第2に分かることとわからないことである。
そしてもう一つ、重要な点がある。
書き記されている限り、魔人は約12体ほど出現している。
初代の魔人は『静歌』と呼ばれた魔人。非常に静かで何か歌のような呪文を使役し、国を1つ滅ぼしたそうだ。
しかしこの魔人は魔族の王…魔王の幹部によって処理された。
まだ幹部で手の足りる存在だったのだ。
第7代魔人『狂鐘』。
この魔人は出現した魔人の中で最も人的被害をもたらした。
狂ったように人を喰らい、狂ったように村を破滅させ、狂ったように3つの国を滅ぼした。
その際金切り声を叫びながら殺し続けたということで『鐘』をつけられた。
そして人類にとって最も甚大な被害を与えたのが第12代魔人『有智』。
魔人の中で唯一考える力を所持した厄災。
彼はまず村を潰して食料を断ち、武器庫を潰して抵抗する人間を断ち、国を滅ぼした。
しかし流石の人間側もやすやすと魔人の襲来を待っているわけではない。
50'年に一度とわかっているのだ。
なら対策をすればよい。
この時人類の最高戦力が有智のために注がれた。
圧倒的な戦いは一月続き、最後までたっていたのは人間だった。
こうして私たちはいるのだ。
私は別に興味なかった。
なぜなら私が生きているうちには出てこないのだ。
安心して楽しい生活を送ればいい。
そう思った。
だがリハンは違った。
「ねえねえねえねえ!魔人の話すっごくない?!」
「え、ええ。そうね(知ってる話だったけど。)」
「ん?何か言った?」
「い、言ってないわ!」
勘がいい。
「それでさ、僕、その、ええと、あんまり魔人のこととかわかんなくてどんどん応用の話をされちゃったから基礎的な魔人の知識がないんだ…教えて…くれるかな?」
初めて実力面で頼られたことだった。
私は嬉しくてつい大きい声で返事をした。
その返事にクラスは不信感を持つ。
もちろんそれはテレスも一緒だった。
その日の帰り馬車の出来事だ。
「どんなお話をされていたのですか?」
下を向き、予定手帳を確認しながらテレスが私に質問した。
「え、え?なんのことかしら?」
私は自身でも思うほど詰まりながら返事をした。
今度もいつも通り乗り切れると思った。
「ふざけないで!」
でも違った。
彼女は叫んだ。
業者は馬を止めた。
小さな窓からこちらを覗いて私に視線を送る。
だが、ここは私に任せろと目線を配った。
もしかするとここでも私は優を感じていたのかもしれない。
馬車は動き出した。
共に彼女の口も開きだした。
「ルート様…ルートはいつもそうです。なんの努力もせずなんの苦労もせず、魔法の成績はいいし、勝手に男も寄ってきます!
最初は興味も示さなかったのに今はリハンさんとなぜそんなに親しげなのですか!
そんなに私から幸せを奪いたいんですか!」
彼女の目からは大粒の雫がザーザーと流れ落ち、絞り出した声が震えながらも力強かった。
彼女の信念が強く感じ取れた。
後から思えば…だったが。
私はこの時非常に腹立たしくなった。
そしてつい言い返してしまった。
業者に余裕を見せつけながら、私の理性が早くに壊れたのだ。
「何が努力していないだ!何が苦労もなしだ!
いつ私に男が寄ってきた!?
だいたい最初から興味がなかったなんてあなたに何がわかるの!?
あなたの幸せ?そんなこと知らないわ!
あなたの人生はあなたの人生。
私の人生は私の人生よ!」
私も泣いていた。
こんな喧嘩をしたのは初めてだった。
ずっと一緒に育ってきた彼女と初めて本気で喧嘩した瞬間だった。
それから私の従者を彼女は離れた。
私は少し心残りがあったが許すつもりがなかった。
どんどん彼女との距離は離れ、最後は父の情報網を使っても連絡が取れなくなっていた。
そんなことを忘れたいがために、私は魔人の研究に没頭した。
新しいことを発見するたびにリハンと確認し、楽しんだ。
それが完全に触れてはならない禁忌だと知らずに。
かなり長い話でしたがおかしいところがあれば教えていただきたいです。
ご協力お願いいたします。




