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書き溜めが1つ犬に消されてしまった(T . T)
「ねぇねぇ、ルートさん?」
いつも通りの朝。
少し開けた窓の外から涼しい風と優しい鳥の声が聴覚を刺激する。
既に1限目の講義は開始されている。
最近はテレスのおかげで私が朝、授業に遅れるということは少なくなった。
それでもギリギリで、午後の講義にも遅れるのだけど。
やはり眠るのは朝と昼に限る。
人間は夜寝るものだが、朝昼を無理して起きる必要はないのではないか。
そんな根拠もない理論を掲げ、サボりへの正当性を高める。学園はやはり安眠の地。
屋敷に帰れば御作法や、お勉強。
それなら、学園でしてる。
魔法学園とはいうものの、貴族のノウハウ、社会の仕組みなども教わることができる。
いちいち家でやらなくともいい。
だが、父上がうるさい。
だから、学園ではやらず、中等部の時に家でやるスタイルに変えたのだ。
最近はいい感じだった。
横にいる男が来るまでは。
「もうそろそろお話ししても良くないかな?かな?」
毎時間欠かさず喋りかけてくる男。
名はリハン、家名をエルストリア。
エルストリアといえば代々『才』の称号を持つ王都の名家だ。
皆が落ち着いてきた頃エルストリアという家名を聞いてかなり驚いていた。
それは私も同じだ。
『才』の称号スキルでエルストリア家は王国の書庫番を務めてきた。
書庫…ただの本ではない。
勿論重要な資料や、国家的に秘匿されている魔伝史などだ。
まさにテロリストからすれば宝箱のような場所だ。
残念ながら、そこへ入ることの許されている人物は国王とその家族。
つまり皇族以外に他いない。
大臣や、大貴族にも公開していないことから、よほど大事なものが保管されているといえよう。
その書庫を任されているエルストリアはかなりの信用を勝ち取ってきたのだ。
そんなエルストリア家の人間がこんな辺境に来るわけもないし、このことには私も頭を捻っていた。
だが、ひとつ心当たりがあった。
それはエルストリア家勢力拡大だ。
貴族というものは昔から富を欲しがる。
それは人間皆一緒だが、困ったことに『貴族』は権力も欲しがる。
彼がここに来た理由は地方に飛ばされたからではなく、このウォール街の自由を手に入れようとしたのではないか?
そしてエルストリアがこの学園に入ったことと、私と同じクラスのこと。
そして私の横の席を希望したこともすべて繋がるのではないか?
「やっとこっち向いてもらえた!この1週間喋り続けた甲斐があったね☆」
向くっていうより睨んでるってわからないのかしら?
授業中にもかかわらず迷惑な人。
私は静かに寝てるからいいのよ。
だって授業の邪魔にならないもの。
「ねえねえねぇ、ルートちゃん?ルートちゃん?」
この時間が終わればお昼だ。
やっとおしゃべり地獄から抜け出せる。
今日も昼ごはん抜いてじっくり寝よう。
めちゃめちゃ寝不足だ。
「今日の講義はここまでです。午後の授業は魔法の授業となっているので、ローブに着替えて試射場に集合してください。」
そう言って講師は扉から出て行く。
講師の姿が見えなくなると朝のような喧騒が講義場に戻った。
私はすぐに席を立って中庭へ向かう。
テレスには昼ぐらい自由にしていいよと言ってあるので大丈夫だ。
早足で階段を降りる。
学園内ならどこで昼食を取っても構わないのだが、まだ人を見かけない。
外へ続く廊下を超えると暖かな日の光を浴び、草原たちがわたしを受け止める。
「ーーっにゃっはあ〜」
きもちぃぃいいい!
この匂いがやはりたまらない。
草特有の匂いを消臭し、日光の強い香りが鼻腔を刺激する。
だからやめられないのだ。
わたしは静かに目を瞑る。
少し強めの日光が目の奥から湧き上がる。
徐々に雲が太陽へとかかり、眼鏡が熱されるのを諦めた。
意識が遠のいていく。
この感覚もまたイイ。
全てがやめられないのだ。
「ルートちゃん?」
「へ?」
私はゆっくりと目を開けた。
徐々に空の映像が映し出され……なかった。
あるのは綺麗に整った顔。
綺麗な緑の眼球に、白く照映えた髪の毛を緩やかな風が綺麗なまつ毛と共に揺らす。
私はいろんな意味でどきっとした。
「あ、にょ…そ、えっと……キャアァァア!」
「うわぁあああ!」
ドテッという音がする。
顔に手を置いて目を瞑っていたわたしはゆっくりと手の隙間から目を開けた。
「いててて…」
わたしがいつも寝転んでいる草原にずぶ濡れになったリハン=コル=エルストリアがお尻をさすっていた。
「凄い『水鉄砲』だね!」
「……は?」
予想外に長くなってしまったので次で終わりです。




