ある男の魅了
ブックマークありがとうございます!
ますます書かなきゃ!っていう気持ちが!
「ほら、早く!急いでください!」
「わかってるわ……zzz」
「寝てるじゃないですか!」
既に馬車は学園前へと静止をきめていた。
なかなか降りないルートの目を覚まさせて手を引っ張る。
「ちょ、待って……朝ごはんがぁ…」
うぇっぷ、と口を押さえるルートにテレスが物申す。
「今日も朝ご飯食べてないでしょ!」
指をさされてビシッと言われたルートは場が悪そうな顔をする。
どう考えてもルートが悪いのに。
仕方ないような顔をしてテレスについていくルートの姿は学園内でも見慣れた光景だった。
最初は
「アントラキスタス家の人間があのようなはしたない姿を!」
「全く、下品な方!」
などの陰口・罵声の雨が彼女らに降り注いだ。
ルートはそれを全く気にせず今まで来れたのだが、テレスは違った。
彼女はアントラキスタス家のメイドであり、主君に使える僕。
他の貴族娘や息子にバカにされればプライドだって傷つく。
それに与えられる場等は全てルートに対して。
テレスは幼い頃から同じ環境で育ってきたルートに姉妹のような感情を抱いていたのは違いない。
そんな姉妹の悪口を聞いてしまえば許せるはずもない。
だが、
「ほっとくべきよ。あの人達も顔を守ろうと必死なの。ふふふ、バカな人たち。」
自分がバカにされているというのに、親が、家柄がバカにされているというのに彼女はいつもと変わらなかった。
なぜそんな楽観的な考えができたのかテレスには理解できなかった。
私なら絶対に起こっている。
所詮ウォール街の貴族はアントラキスタス家の敵ではない。
しかしテレスは主であるルートの意向に重りが取れたような気がした。
やはり自分がつくべき相手は主であり、親友であるルートしかいないと感じた。
「テレス?ねぇ、テレスったら。」
「はっ、はい!」
急にはなしかけれられてついつい敬語になってしまう。いや、敬語が当たり前なのだが。
「あ、あの…ルートお嬢様?」
「ん?どうしたの?」
講義室まで続く花道の途中でテレスは立ち止まる。
いつもは早く行け早く行けと急かす態度のテレスが急変したのでルートも首を傾げた。
「私の仕える方、いや、主。いいえ、一番の親友はルートお嬢様しかいません!」
「急に変な子……ふふ、そんなこと当たり前でしょ?」
一瞬不思議な表情を浮かべたルートはそんなこと当たり前だというような顔に変わり、再び目を閉じた。
「道端で…立ったまま、寝てはいけません!」
「ぶぅ〜」
頬を膨らまして不満を訴える彼女を無視して講義室までルートを引っ張る。
いつもと違う朝もまたいいかな。
とテレスは思った。
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貴族組担当の講師がいつものように敬語で挨拶を行う。
貴族の倅を教える講師でも爵位は生徒達より下。
敬語を使うのは当たり前のことだろう。
そんな講師に挨拶を返す子供達は実に素直だ。
いつもならこのまま今日1日のスケジュール説明に入るのだが、
「今日は転校生が来ています。」
その講師の言葉に少し騒めきが起こる。
生徒たちが騒ぐのも無理はない。
大体貴族の子供は領地にある街や地域の学園に通うことになる。
もちろん距離が近いということもあるが、それ以上に大切なことがある。
それは貴族間の『つながり』だ。
他の貴族娘や息子と親しみを持つことで政略結婚などをスムーズに進めることができる。
今ウォール街にいる貴族の子達は皆ウォール魔法学園に在籍している。
他の地域から貴族の子がくることなどほとんどない。
くるとしても王都でへまをやらかしたバカ貴族が辺境の戦地最前線に飛ばされるときぐらいだろう。
そのことを知っている貴族の子供達は講師の後から少し遅れて入ってきた身なりのいい子供を嬉々として迎え入れようとはしなかった。
「はじめまして。今日から皆さんと一緒に勉学を励むこととなりました、リハン=コル=エルストリアです。
宜しくお願いしますね。」
しなかったが、彼の整った顔立ちや、年齢の割に高い背、美しく通る声に魅了された。
憎悪の視線が一気に憧れの視線へと変わった瞬間だった。
既に彼らの頭にはリハンがなぜこんな辺境の地まで来たのか、エルストリア家はどこを治めていたのか、などの愚問は考えていなかった。
どうすればお近づきになれるか、どうすれば親しくなることができるのか。
彼らの頭にはそれだけしか残っていない。
それはテレスも例外ではない。
いや、彼女は違う意味で例外だった。
あのキラキラなオーラを目の前で感じてしまったことで、謎の興奮がテレスを襲った。
テレスは小さい頃から顔立ちには自信があった。
同じ年の男の子からはよく婚約しようと言われたし、
大きくなり、アントラキスタス家のメイドと分かった上でも告白されることがあるぐらいだ。
彼女は今まで自身の中にインプットされていたイケメンという定義をこの日大きく変えることになった。
テレスは結婚するにはこの人しかいない。
そう感じた。
もしかして我主も惚れているのではないか?
そう思い、そっと後ろを確認すると下を向きうつ伏せていたので、ホッとした。
彼女と争うことだけはイヤだったからだ。
勝つ自信しかなかったのだが。
ルートだって十分に可愛らしい。
いや、もしかすればテレスよりも可愛いかもしれない。
家柄もアントラキスタス家第一令嬢。
なぜ完璧なルックスと地位を所持した彼女がモテなかったのか。
それは性格にかなり難があったからだ。
ウォール貴族の子供一権力を持った彼女はダメダメ。
いつも授業は遅れ、テレスに怒られている。
アントラキスタスの次期当主にはなれないが、彼女と繋がることで、ウォール貴族の実権大半を握れるのは
普通のことだった。
そんな魅力があっても彼女を選ぶ自信は他の子供達になかったのだ。
女子達がキャーキャー言っている中、リハンは一人後ろで寝ている少女が気になっていた。
普通これだけうるさければチラリと見るぐらいしてもいいはずなのに、彼女はビクともしなかった。
これはリハンの心に軽く火をつけた。
既に貴族担当講師の先生はリハンの手中だったので、ルートの横の席を静かに希望する。
それを断る意味もなかったので講師は了承。
帰る際にルートが横の男性に気づいて驚きを隠せなかったのは、放課後の話。
リハンさんはこの時からイケメンです。




