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本質


「ぼ、坊主!」


女の口角が上がる。

俺を助けるためか強烈な魔力のプレッシャーに耐え、デルマンゴが歩いてくる。

苦渋を飲まされた顔をさらに引きつっている。

鍛えられた腕が巨体を支える脚を支えていた。


しかしその距離はかなり離れていた。


「ねぇ?あなた…私と、私と一緒に…」


彼女はそのあとの言葉が見つからないのか空気を模索していた。

視界が朧に包まれる。


「……そう…そうね。あなたには才能がある!」


手を広げ、誰に言うわけでもなく叫ぶ。


「テルマッドくん、君は我々に多大な貢献をしてくれたわ。」


右手で俺の頬に触れた。

そしてやっと言葉が見つかったのか、口を開けた。


「あなたのその、小さな体の中には無限に広がる魔力。美しく、かつ空っぽの熱を帯びた生命の糧…。貴方のその力…私のためにふるってくれないかしら?」


耳元で舐めるように囁かれた。

小さな声だった。だが、俺の鼓膜にはネッチョリと縛るように膜を覆った。


「……や…………やだ、ね」


魔力の波長に耐えつつも少しちゃらけた感じで答えた。

その顔はしっかりと仮面女を捉えていた。


「あら……じゃあ言い方を変えましょう。」


女は立ち上がり俺に右手を向ける。


「私のものになりなさい。」


大きく目を見開いて俺にそれを告げた。

その手のひらには今まで感じたことのないほどの爆発的な魔力が異常な量を伴って震えている。


それはあまりに自分勝手で、自己中心的な発言だった。なにが好きでこんな奴のいいなりにならなければならないのか。

なにを目的にこいつと戯れ合わなければならないのか。

目的のない答えに辿り着いた本当の答えは…


「やだね。」


俺にはしなければならないことがあった。

両親への感謝もそうだが、今一番行える『すべきこと』、それは小人を助けることだ。


彼女にはやはりなにか恩のようなものを感じていた。

同じ牢のなかで過ごしたからではない。

彼女が同じ牢にいたから脱出を試みれた。


それは小さく小さく、すぐ壊れてしまうものかもしれない。


「でも…でもな。今壊れてないからいいんじゃないのか…?」


「っ?!」


途端魔力の流れが変わった。

先程まで循環する魔力の操作は仮面が握っていた。何のためらいもなく我々囚人の周囲を不規則に弄っていた。


黒服と戦っていた際も僅かながら魔力の衰えはあった。しかし動けなくなる。や、魔力が具現化しない!ほどではなかった。


俺は徐々にその不規則な魔力に慣れていった。

タイ米は固かったが、食い続ければやがて習慣となる。どうやら俺の環境適応能力は人一倍高いようだ。


神様俺にチートをありがとう。


「な、どうして?!私が操っていたはずの魔力が?!」


「お答えしますよ。」


どうしても笑ってしまう。

これから勝つビジョンしか見えないのだ。


「僕が今使っている魔法は『静風(クーリングウェイト)』。風の上級魔法です。」


静風(クーリングウェイト)』は風属性上級魔法の一種だ。その仕様難易度は風属性上級魔法内でも扱いやすい魔法。

本来、この魔法の仕様用途は魔法実験や、化学実験などを行う際に周囲の環境にある魔力や、風の向きなどを失くし、完璧な条件下で実験を進めるための補助魔法。


最初この魔法を覚えるか迷ったが、使えれるならと、習得した俺に感謝の念を送ってキスしたい。


もちろんこの不規則な魔力も落ち着きを取り戻し、今では普通に魔法を扱え、体も自由だ。


「あ、あ…あは。あはははは…。アハハハハハハハハ!」


狂ったように女が笑い出す。

美しい女性だが、この顔を見ているとそれも台無し。

俺の顔がイケているのなら是非お嫁に欲しい。


「すごい…すっごいわ!さすがリハンさんの息子!」


歓喜に浸る彼女に俺は質問する。


「なぜ父を知っている?」


笑い声を突然止めた仮面は一つも体を動かさずこちらを向いた。


「んふ……リハンさんとは昔がらお付き合いなのよ。」


確かに大陸最大規模の盗賊団を率いるリハンならこんな外れたやつと知り合いでもおかしくはないが…


そんな思考をしていた時だった。

彼女はゆっくりと言葉を発した。


「テルマッドくん…いや、テルマッド。あなたは私の息子なの。」




見直しが完璧でないので、誤字や、むちゃくちゃなところがあるやもしれません。

見つけたりした場合は教えていただけると嬉しいです!

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