表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/87

反乱


「…がっはっ………?!」


魔力を送り続けること約1分。

その間デルマンゴおじさんは暗い顔の黒服達を薙ぎ飛ばしている。

その怒りに狂った形相から、かなりの魔力をせびられたのか。


彼の抵抗での時間稼ぎもあってか、俺が後ろ向きで温風を当てているアイルさんの意識が徐々に戻ってきたようだ。


その証拠にヨレヨレと立っていた彼女の足から急に力が抜け、座り込んだ。

すぐさま魔力譲渡を中止し、彼女の方へ振り返る。

アイルさんは口から垂れていた涎を袖口で拭っている。


「だ、だいじょうぶですか?!」


「は、はい…だ、いじょうぶで…す……」


息を荒げ、なんとか言葉を紡ぎ、やっと生まれた言葉をしっかりと聞き取った俺は再び魔力を送る。

視線の先はデルマンゴおじさんだ。


体は既にボロボロ…というより、瀕死の状態。

いくら技付をかけたからと言って身体魔法をかけたわけではないので、黒服達の剣筋もその筋肉を通過し斬りつける。


おっさんも既に息が上がっており、なぜ動けているかもわからない状態。

しかし彼の活躍によってか、奇妙な黒服達はその数を大きく減らしていた。


「まずいな…」


「わ、わ…たしはなに、を?……」


背後からアイルさんが俺に質問した。


「あなたは彼らに座れるだけ魔力を吸われたんだと思います。」


「そういえば儀式のあとの記憶が曖昧ですわ…」


ようやく口調も落ちついてきた。

どこかむず痒い話し方は貴族の娘ということだからなのだろうか。


「もしかして、君がアイルを?」


「アイルというのがあなたのことでしたら、そういうことになりますね。」


もちろん俺が彼女の名を知っていたとは言わない。

鑑定はできるだけ隠しておきたいし、今まで読んできた魔法書の中に人のステータスを見ることが可能なものは一つも存在しなかった。

リンダばあちゃんからもらった鑑定という能力がかなりの異質度を示していた。


こんな2歳か、3歳の見知らぬガキが貴族の娘である自分の名を知っているともなると警戒するに違いない。


「あのおじさんは何故戦っているのですか?」


「僕たちを守ってくれてるんです。僕があなた達二人を元の状態に戻したんです。」


「なんで…そのようなことを?

第一にあなたみたいな幼い子があの人達のような容姿から正常な姿に変えるなどできるわけがないでしょう?」


仮面が放つ異彩な線によって、彼女から出る魔力の波長が分かりづらい。

しかし回復の方向へと向かっているのは間違いないだろう。


「それは今置いときましょう。とりあえずもう立てますか?それならばあのおじさんを援護して欲しいのです。」


「え、ええ。立つことはできますが魔法が行使できるかどうかは判断できかねます。私の中にある魔力の残量は何故かどんどん増量していますが…」


膝に手をつき、立ち上がった彼女は腕を振りながら俺にそういった。


「なぜ私に触れてるのですか?」


「……ま、事情がありまして。とにかく魔法が使えるのなら彼の援護を頼みたいのです。私の手を見てもらえると分かるのですが、手錠をされておりまして…」


生済を担当するバルコリア先生が教鞭を振るうお話は自らが手錠にかけられることを前提としていない。

あくまであの人の例を使うのなら、知識とは対象を縛るものなのだ。


「わ、わかりました。できるだけやってみますが君はどうするのですか?」


「私はあの方達の意識を取り戻しに行きます。

できるだけ耐えてください!」


そういって残りの6人のうち左端にいた男性に手をかけた。なんとか人間の姿は保っているがかなりの汚い容姿だ。


鑑定をかけると所持している魔法の属性は『風』。

風車の魔法も持っており、すぐに温風を送る。

目の前では壮絶な戦いが流れるように起こっていた。


「おっらああ!おら!おらあ!」


デルマンゴさんが最後の気力を振り絞り、黒服を蹴散らす。彼らの戦闘を見て思ったが、あれだけ味方がやられているのにも関わらず相手に向かうのは異常とも言える。


基本生物というものは恐怖心を基とし、日常を送っている。その恐怖心は時に盾となり、時に仇となる。

しかし仇とならないために我々は注意という線を引く。その線は生物の命を数えきれないほど救う。


しかし彼等(黒服)達にはその線引きがないのだ。

挑めば必ず殺られる。向かえばすぐに死ぬ。

そんなこと第3者から見てもわかる。

それでも奴らは強制的な命令を受けたかのように肉ダルマを襲った。


「くっそがあぁぁああ!」


かなりの魔力を技付に使い、消費したのか、テルマンゴの周りを囲っていた黒服を一気に吹き飛ばした。

散り散りになった黒服からは血痕が飛び散り、内臓達がここぞとばかりに、外へ飛び出している。


「おい、おっさん!」


すでに体力もなく、魔力もない筋肉質の体は膝を着き、遂に倒れてしまった。

あと数十人の黒服。

数分彼が持てば全滅していただろう。だが、その彼も今や虫の息。


だが、俺はそうなることを予測していた。

俺が与えた魔力はかなり少ない。

それでもあれだけもったのは予想外だった。

そのおかげで彼女(アイル)を復活させることができたのだ。


「ぐ……ぐ…」


おっさんが呻く元に黒服達が俊足で忍び寄る。

息は荒い。多分魔力切れの典型的な症状だ。

その中、技付も使えず、あの大男に戦える力はあるものか。


おっさんの周りを円状に囲む黒服が一筋の剣を振り上げる。

白銀に輝く短刀は空気を切り、光の線を描く。

鍛え上げられた筋肉にその刃物が侵入を許そうとした。


『流風』


静かに、音を鳴らさず詠唱が響いた。

突如仕切られた部屋の中に空気の流れが発生した。

一方通行の風の強さは人外だった。

その自然をもたらしたのは魔法。

風属性中級魔法の『流風』だ。


それによって予想外の方向から来た攻撃に耐えることができず、黒服達は飛ばされる。

もちろん皆無傷だが、何人かの黒服は振り下ろされた剣が腹に刺さったりしている。

思わぬ産物に手を握り、俺はデルマンゴに駆け寄る。


「大丈夫かおっさん!今すぐ治療するから!」


「く、そ…くそ、くそくそ…すまねえ。こんなチビに迷惑かけて…」


俺は放電をしながらおっさんの話を聞く。

眼前ではアイルさんが風魔法を駆使し、黒服達がこちらへ向かわないようにしている。

理解のある人で助かった。


「みんなで一緒にこんなとこ出るんです。協力してくださいね!」


「……ああ。俺如きでも力になるならな。」


俺は笑いかけるとつられたようにデルマンゴも笑みをこぼした。こんな状況なのに、なぜか笑えてきてしまう。

本当はこの人たちを見過ごそうとしていた。

俺とウィンターと…2人で抜け出そうとしていた。

こんないい人たちを見過ごして、俺たちだけ…


「ありがとう、デルマンゴさん……」


「へへっ。いくら強がってても子供は子供だな。」


笑いながら涙を流す俺はこれからの作戦を考えていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ