正体
申し訳ありません。お待たせしておりました。
「つれないなぁ、テルマッド君は。」
俺は彼女から手を離そうと片方の手で必死に剥がすが、背が高い黒色の髪を持つ女性は握力がアホなのか全く解放してくれそうにない。
「な!なん、で!俺の名前を知ってるんだ!」
なかなか離さない彼女と見知らぬ人との不安感から焦燥に駆られる。
「先刻も顔を合わせたでしょう?」
「だ、だれなんだ、よ!!」
遂に剣を使い、彼女を一閃する。女は俺の手を解放すると身を翻し俺の剣を避ける。まだ黒服の追っ手は来ていない。
「おいおい…待ってくれ。」
まさかウィンターか?そんなはずはない。
戸惑いつつ俺は間を保ちつつ、鑑定をかけてみる。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
???? Lv.??
ステータス ??
所持スキル ??
【称号】 ??
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
ここで一息ついて全くわけのわからない彼女を見据える。
鑑定は嘘をつかないと思う。しかしこの鑑定結果は驚きだ。何と言っても名前すら鑑定できていない。
ではウィンターはどこへ行ったのだ?
本当にアレが彼女か?もしくはずっとあの黒い髪の女と一緒にいたのか?それでは檻の中でかけた鑑定が意味をなさない。
「ねぇ…私のこと誰だかわかった?」
「わかるはずねぇだろ…」
思考が落ち着かず、それは精神までも喰いつづける。
気色の悪い奴だ。
顔は白く妖美な髪を撫でる女性は美しく、街を歩けば目を見張り、振り返り、声をかけるだろう。
俺には無理だが。
そんな妖艶さを漂わす彼女を見る俺の気分は悪かった。どこかネチネチとした話し方。俺を見下し卑劣するかのような目。そして少し吊り上がった口角。
「ウィンターをどこにやった?」
「ウィンター?ってあの君と一緒にいた娘かしら?」
俺はそうだと頷く。
「あの子はおねんねしてるわよ?私の部下達とね。」
「……は?」
そう彼女がつぶやき地面を見る。
よかった。ウィンターはこいつではなかったのだ。
こいつの話を信じるとすれば彼女は俺と逃げている途中、既に捕まり黒服達にやられた。
しかし、彼女のレベルでそう簡単に殺られるとは思わない。
しかし捕まってしまったのは俺のせいだ。
俺が常に気をつけていればこの川を渡って逃げ切れたかもしれない。俺にもっと力があれば…
突然俺の横手に広がる水が波を立てる。
風が靡き、雲の流れが急かされて、樹が震える。
黒服達が川から這い上がってきたのだ。
「さ、捕まえて。あの子の魔力はすごいわよ?」
そう女が言うと黒服は懐から一筋の短剣を取り出し、俺を囲む。鑑定をかけてみても先ほど俺達を襲ったのとそう変わりはない。
そいつらを魔法で一掃し遠く見えないところまで飛ばすと先程まで魔法の効果範囲外にいたあの女が俺に歩み寄る。
「すごいなあ?その歳で。お姉さん感心しちゃうな?」
「黙れ……黙れよ。」
バカにされている。小さな女の子でさえ守れないのかと。その魔法で私を殺してみろと。
まだお前は弱いと。
俺の手に魔力が集まる。
全て真っ赤な火。燃え上がる太陽のイメージ。あたかも太陽の中に入り、獄炎に急かされるような、灼熱の温度。
ヒラヒラと舞う火炎は俺の手を包み、それは両手をも喰い、取り込む。
『英雄の赤槍』に必要な魔力量を遥かに上回ったものを注ぎ込んだ超級の火属性魔法。
『猛火の火天神』
目の前の壮大で壮美な風景を一瞬で吹き飛ばし、罵っていた女と共に塵へと変えた俺には既に臓器だけとなった。
更新頻度が少し遅めになります。
更新をしないことはないです




