魔
「どこへいくか……」
多数の黒服を従え、姿を現した仮面は俺に問う。
「……勝手にこんなところへ連れてこられて……なにが何処へ行くだよ!俺たちはここから出させてもらう!」
なにか、俺たちがここに居て自分達に魔力を与えることが当たり前のように話す仮面に俺は苛立つ。
その言葉を聞き届けた黒服は瞬時に俺たちの周りを囲み、懐から剣を出す。
「ウィンター…戦える?」
「……あまり得意ではないわ。」
俺は最後の頼みで彼女に問う。
答えは予想したとおりの結果だ。
もしここで捕まってしまえば一気に魔力を吸い取られ、警備が強化し、脱出がさらに困難なものになる。
ウィンターだけでも放って逃げるか?
もし先程立てた仮説が正しいのなら彼女は大丈夫なはずだ。
でも……
「逃げるのはかっこよくないよな。」
田舎から転生し、その結果盗賊団長の息子に生まれ変わり早2年。全くいいところがなかった俺が唯一目立てる場所が来たのかもしれない。
(バカなこと考えてたら落ち着いてきたな。)
さっきよりも格段に周りが見えるようになる。
周囲には30ほどの影。その奥に仮面が高いところからこちらを見下している。
こいつらがなぜ魔力を欲し、なぜ体をマントで覆い、素肌を見せないかは知らないがとにかく脱出が第一前提。捕まることはありえない。
『焦熱の精霊』
半日以上睡眠を取り、万全の魔力から放つ俺の火属性中級魔法はウィンターと自身の周りを取り囲み、嵐のように黒服達を削る。
「おいおい…なんでだよ。」
しかし黒服達はその嵐を顔の前を両手で守り、いとも簡単に歩いて侵入する。この魔法は大抵一般の人間は燃え散り、再起不能にする大技。
それをただの風のように入ってくる彼等はかなり厄介だ。
『雷撃』を打ちながら彼等を鑑定していく。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
?????? Lv.無
ステータス
攻撃力 : 55
防御力 : 83
俊足力 : 91
魔法攻撃力 : 0
職業 : 無
所持スキル : 鑑定不可
所持魔法 : 無
【称号】 : 無
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皆このようなステータスだ。少し高いものもいればこれより低いものもいる。数値は疎ら。しかし、これより格上でもなく格下でもない。平均がこれぐらいなのだ。
雷撃で炎のないテリトリーに侵入してきた黒服達を全て弾き出したあとウィンターが少し離れたところから俺の方へ駆け寄る。
「だ、大丈夫なの?!あんな魔力使っても平気?!」
「うん。余裕だよ。さ、はやく!今のうちに出ないと仮面の強さは多分計り知れない!」
俺が雷撃を使いつつ考えていたことはこれだ。
今までは見つからまいとスニーキングしてきた。そして、ドアに結界が張られてあったので魔力の適応者を探すためここへ来た。
しかし今、奴らにばれてしまったわけだ。ということは、せこせこと出口を探すことを止め堂々と壁に穴を開けたらいいじゃないか。
ちなみに牢屋の壁は分厚く、『激雷の剣』でも削るために20日をほどかかりそうだったのでその作戦は破棄。
見つかってしまった以上俺が使える最高峰の魔法を放てば20日が2秒に縮まるという寸法だ。
「こっちだ!走るよ!」
『焦熱の精霊』の発動を中止し、後ろにあるドアまでウィンターの手を取り走る。電光強化をかけて廊下へ出ると、昼間通ったとおりの板を走り抜けて檻の場所へと戻る。
既に板が引火してたからここが潰れるのも時間の問題だな。
『雷霆神の伝説器』
既に練り慣れて、瞑想する必要もなくなった超級魔法を壁に撃ち込む。
裏路地のおっさんが展開したガチガチの盾を貫くほどのパワーだ。この程度の壁は瞬殺。
壁が大きく崩れ、瓦礫が下にかさばり、その頭上からは月が一本の直線を目の前に生い茂っている森全体を照らす。
外は森だった。
「す、すげえ…」
「えぇ。とても…幻想的。」
この光景は彼女の一言で全て説明できた。
眼前は大きな川が流れ、巨大な木が根っこを水面に出しながら巨漢を構えている。いわゆるマングローブと呼ばれるものだ。
俺が今立っている場所は少しその川から高くなっており、水の流れが来ない。しかしそこから見る風景はまさに絶景。先程の月は水面を巨大な木々を照らし、水面を反射する。その反射した光が俺の目に入り、さらに屈折する。
「と、とりあえず脱出しなきゃ!」
その風景に心酔し、完全に状況を忘れていた俺は横にいた彼女に手を握られてハッとする。
まず周りの状況を確認し……
「捕まえたぁ〜☆」
「……お前は一体、だ、だれだよ…」
俺の横にいたのは小さく赤色の巻き毛でもない、黒色の女性だった。




