おい…まじか。
短いです。
その1等地はウォール街貴族の魔法師団により、いつもライトアップしている。しかし、今日のライトアップはいつもと少し違う色をしていた。
灼熱に染まる赤や空気を揺るがす黄色。そしてあまりに残酷な鉄の塊が貴族間で多大な影響力を誇るアントラキスタス邸でその轟を鳴らしていた。
「よっ!よっと…」
『不死身の伯爵』『焦熱の精霊龍』『英雄の赤槍』『英雄の黄槍』『雷撃』
俺の持っている中で破壊力の高い魔法を建物に向かって、中庭から放ちまくる。まだまだ俺の魔力は余裕そうだ。
ダリアネスさんは俺に人は殺させないと言って単身アントラキスタス邸に乗り込み魔法銃を乱射している。その証拠に、もう1階はボロボロに焼き払われて家の原型が見えない。
家は俺がやったのだが、中にいる警備団の抹殺や、これから売り払われる奴隷などの救助は彼女がしている。
「よーし、中は全部終わったよー。」
少しして銃弾の音が止み、一寸の静けさを取り戻した時ダリアネスさんは帰ってきた。全身返り血で包まれ、少しはにかんでいる顔が恐怖で俺を戦慄させた。
『洗浄水』
水の生活魔法を唱えて彼女全身に水をかぶせる。俺ほどの魔力地を持てば、皿を洗う魔法が人間を浄化する魔法に変わる。
「おー、さんきゅー。おし、じゃあ、ここ吹っ飛ばして、次行くよ。」
「…つぎ?」
「いやいいの。ほらはやく。」
彼女に急かされて、大事なことを一つ聞き逃した気がするのだが…まぁいい。お望み通り、全て焼きはらう。アントラキスタスが帰ってきた時の顔が楽しみでならない……ってダメだダメだ!
何こっちに染まっちゃってるんだよ!
『雷霆神の伝説器』
体全体の魔力を手一点に集中させ、今から発動する魔法に適した魔力を集合させる。
この魔法は以前おっさんと戦った時に使った魔法だが、あの時と同じ火力を打てば多分ここら一帯まで吹き飛んでしまう。そのレベルの魔法を掴む奴の強さが計り知れないが。
バチバチと俺の手から黄色が漏電し、次第に俺の体までをも包む。その雷も手のひらに集まり溜まる。俺の雄叫びと共に一本の軌道が館に向かい、道を残す。
威力を最大限に抑えてもアントラキスタス邸は木っ端微塵…というより物質が衝撃に耐え切れず崩れ落ちた。
「へぇ〜すごいね。小さいのにそんな魔法行使できるなんて!」
「ええ。雷の超級魔法ですが、かなり威力を抑えました。まだまだいけますよ。」
俺たちの周り一帯は短な草で覆われていて、ぜひ昼間に寝転ばせて欲しいところだ。しかしその草原から被さるように光る電子が空中を飛び回り、乾いた音を立てている。
「んじゃーもう一軒行きましょー!」
「はい!……え?」
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「おい貴様ら!!」
俺たちがウォール街貴族でアントラキスタスに次ぐ有力者であるビシカナニウス邸を襲撃していたときだった。今回はダリアネスさんも横につき、一緒に館を破壊していた。
「おー?なんだー君達は!」
「な、我々のことを知らないなどと、たわけたことを言うな!この紋章が目に入らぬか!」
そうして彼らが袖をまくり右腕を見せる。そこには蛇の刺青が入っており、どうやら体まで続いていそうだ。何かの宗教か?
「ふっ。どうだ、驚いただろ!我々は聖サントラル宗教王国軍直属の魔法騎士団『蛇の使い魔』だ!」
「何それ知ってる?」
「いや、知らないです。」
みんな揃ってドヤ顔されても僕ら困るんですけど…。
しかし魔法騎士団とかなんとか言ってたが、かなり強そうだな。よし、ここはいっちょ鑑定だ。
俺は心の中で彼らに眼球を向け小さく唱える。
すると1番前に立ち偉そうに右腕を出している奴のデータが出てくる。
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ギラズダス=コリアルス=アントシスウス Lv.6
ステータス
攻撃力 : 16
防御力 : 15
俊足力 : 40
魔法攻撃力 : 38
職業 : 聖サントラル宗教王国直属魔法騎士団第36隊分隊長
所持スキル : 魔法使い
所持魔法 : 火属性初級 水属性初級 土属性初級 雷属性初級 土属性中級
【称号】なし
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俺はステータス画面をそっと閉じ、彼らを再び見渡す。名前から察するに貴族の六男かそこらなのだろう。可哀想だが、君達は魔術を行使する前に死にそうだ。
「俺は土属性魔法を中級まで行使できるのだ。お前らごとき反乱者には勿体無い魔法だがな!『岩潰s……』」
『爆裂銃』
ギラズダス君が中級魔法の詠唱を言い終わる前に彼女は左手に持つ魔法拳銃でとどめを刺した。『爆裂銃』を見る限りその効果は着弾した場所から約10mほどを爆発させるというものらしい。もしかするとその効果範囲まで設定できるのかもしれない。
それは圧倒的脅威になりうる。
「さ、続けて建物壊していこ!早くしないとこの国の本軍まで到着しちゃうからね。」
「はーい」
そうして俺たちは無事この館を崩壊させることに成功した。いや、ダメなことなんだけど、一応成功ってわけで。久しぶりに魔力をガン使いしてしまったので早く帰って寝たい。
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「おつかれさま〜」
「むにゅむむむ…」
破壊し尽くした後は1等地を抜けるため別の入り口に走った。ダリアネスさんはその辺の豪邸に片っ端から火属性をエンチャントした球を打ち込んでいた。明日にはここに本軍も到着するだろうとのことだ。
そして肝心の俺はダリアネスさんのおっぱいの谷間でヌルヌルしていた。至高だが…すでに俺の意識は朧い。早く帰りたい。ヤハーナさん…
「んじゃ、報酬は明日ボスから受け取ってね。」
「あの…」
「ん?」
「身バレとかってしますかね?」
1番怖いのは俺が『月蝶』の族長の息子とばれてしまうことだ。デメリットしかないのは目に見える。
「大丈夫だよー。追跡弾も打ってあるし私たちのことを見た奴らは全員殺したしね。」
「うぅ…わかりました。ありがとうございました。」
「こちらこそありがとね!それじゃあ、また何処かで!」
唐突に思い出したことがある。
俺は見たくないものを永遠と見ていたことだ。
そのテロリストまがいの行動に俺は今更ながら罪悪感を覚えた。1人も殺していない俺が何を言うと言われればそれまで。しかし、人が目の前で死ぬことに慣れてしまうのは絶対にいけない。それはまるでサイコパスだろ。
唯一俺のできる罪の償いは、これからも人を殺さず生きるということなのかもしれない。




