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事後…

またブックマークが!

励みになります!!

「いや、助かりました。あなたのおかげでダリアンの仕事も捗ったようなので。」


貴族邸敷地を襲撃した翌日、俺はスラムのボスことキラさんを訪ねていた。3番街の彼の部屋は着々と復活しており、2日前と違ってずいぶん広く、清潔になっていた。


逃走用の窓は相変わらず開いていたが。


「いえ。ダリアンさんがいなければ、僕もあの石を手に入れることはできなかったでしょうし。」


はははと苦笑し、テーブルの上に置かれたお茶を飲む。いや、紅茶か?


「此度の報酬です。」


そう言ってキラさんは一冊の本を手渡した。その本に題名はなく、表紙が赤く塗られて金色の糸で装飾されている。俺は不思議に思いつつも彼からその本を受け取る。


「なんですか、これ。僕はもう侵入経路という報酬をもらっているのですが?」


「これは私からではありません。ダリアンからのものです。」


なぜダリアンさんが俺にこの本を?というか彼女が言ってた報酬ってのはこの事だったのか。

俺は忘れまいと盗んできた金貨袋をキラ渡す。


「ありがとうございます。……ん?予定より少し多いような気がしますが。」


「友達価格ですよ。」


試練が順調に進んだのもこの人達のお陰であったので、少し取引価格から上乗せしておいた。それにしてもこの本の事もそうだが、昨日から色々気になる事があったのだ。今日ここにきた理由もそれがおおきい。


「あの、この本は一体?」


「はい。それは…アルドゥトス伯爵家に代々伝わる魔伝史だと思われます。」


「魔伝史?」


聞きなれない言葉に俺は頭を傾け疑問を口に漏らす。しかし、アルドゥトス家…何か聞き覚えのある雰囲気なのだが…。


「はい。彼女、ダリアンは私の実の妹です。」


「へぇ。……は?」


急なカミングアウトでかなり言葉を失った。でもまあ一度は予想した事だし…もしかするとキラさんも獣人かもしれないし。


「我々アルドゥトス家は代々獣人の家系でした。」


「は?」


「私の父、バイル=フィン=アルドゥトスが当主でして、数年前まで人間に化ける術…化術を使い、貴族の地位を得てこの地の有力者として成り上がりました。ですが、その権力をかざせたのも束の間、部下の密告により捉えられた父は即刻処刑。そして血を絶やさせないために我々兄弟を裏路地(スラム)へと託したのです。」


キラはその事を淡々と綴った。時たま頭を抱え声も震える時もあった。しかし、そんな彼がなぜ裏路地を仕切るようになったのか。


「でもスラムの人々は貴族を嫌ってるんでしょう?」


「ええ。しかし私の父はそうでありませんでした。スラムの人間を積極的に雇ったり、腕の立つものは冒険者登録を無料で受けさせたり…とにかく獣人の時に卑劣な差別を受けた父だからこその愛の手だったのか、と。そのため、ある程度スラムの方々には面識があり、ここにきた時から守ってもらえるようになりました。」


なるほど。と俺はうなづく。多分ここを仕切っている事にもその恩返しが混ざっているのだろう。


ふと俺には疑問が湧いた。

なぜこのような任務を命令したのか。


「ではなぜこんな任務を妹さんに?」


「2日前の事件のことは耳に届いていると思います。」


「あ、ああ。あの路地が瓦礫の山になったっていう?」


「はい、それです。」


すいません、ボスさん。それ私達です。


「あの一件があり、貴族会議が秘密に行われました。その会議の内容はスラム街の取り壊しです。あの事件が起こってしまった事で、ウォール街自体の治安を危惧した奴らは裏路地(スラム)を取り壊して治安維持を図ろうとしたのです。」


それで貴族邸を襲わせて、テロの表明をしたわけか。

ならば引っかかる事がある。

なぜアントラキスタス邸を襲わせたのか。だ。


「アントラキスタスはこの街切手の有力者です。もちろん奴はこのスラムを潰す決定権を所持していました。そして奴は我々から散々な金と奴隷を巻き上げた挙句、ここを更地にする判断を下しました。これは愚かです。愚か故に父を裏切り殺しました。そして今日彼も死にます。」


「まさか…」


まさかダリアンさんが直接手を下すのか?いや、しかしそれでは根本的な解決にならず、裏路地の反乱を恐れた貴族達がすぐにでもここを消し飛ばすに違いないのだが…


「奴隷のリストを見ましたか?」


「あ、うん。」


「あれを聖騎士団に提出しました。この国で奴隷は宗教原則上禁止ですから。」


でも聖騎士団はこの国に使える軍隊…いわば国の上位騎士なわけでウォール街の貴族とももちろんつながっているはずなのだが、もし金の力でアントラキスタスが生き残ればこの人達は危ない。


「でも、聖騎士団が取り合わなかったら?」


「それは絶対にありません。聖サントラル宗教王国の中で唯一独立している組織が聖騎士団なのです。国の政治にも関わらず、ましてや貴族にお近づき。なんて考えている奴は徹底的にその考えを改めなくてはなりません。聖騎士団は軍隊とも違い、警察官とも違います。いわや、この国の王のみに仕え、サントラル教の神のみに従う者達です。その忠誠心を買われ、今や国政の監視官と呼ばれ、悪事をことごとく排除しているのです。」


なるほど。それは知らなかった。うちの村ももしかしたらこの人達と繋がりがあるのかもしれないな。


勉強不足を実感した俺はすぐさま宿へ帰ろうとし立ち上がる。


「今回は本当にありがとう。困った事があればいつでもおいで。」


「はい。またよろしくお願いします。それと…お名前を…?」


名乗るべきか?いや、でもなあ。

うん…まぁ身バレしちゃってるし。


「俺の名前はユウタだ。村に来た時はそう伝えてくれれば俺が出る。わかったか?」


「はい。ありがとうございます。ユウタ様。」


俺はにっこりと笑みをこぼし、再び裏路地へ入る。そこは見覚えのある路地だった。血はほぼ綺麗にされ、あの生臭さの欠片も残っていない。俺はリンダさんの事を思い出す。



日本語も忘れてはならないな。


そう決心した。


これで第一章は終わりとなります。

こんな見切り作品に一章お付き合いいただきありがとうございます。



二章からもよろしくお願いします。

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