潜入
30話ということで全話改変しようと思います。
(主に誤字脱字などです。)
「………かーわーいーいー!!!」
「え?ちょっと?!」
びっくりした。神妙な面持ちの彼女は俺が席に着いた途端豹変したのだ。綺麗な茶髪にほのかな酒の香りが漂い、たゆゆと揺れる胸は酒の匂いをさらに助長させる。その胸と猫のようなヒゲを生やした顔に俺の体が埋められた。
至高だわ…こりゃ。
「うー!うっ…」
「ダリアンさん…もうそろそろやめてあげては?」
流石の俺も限界を感じ腕でアピールするが全く聞き入れてもらえず、最後はバーテンダーさんの御助けを借りる結果となってしまった。かたじけない。
「むー。あとでもうちょっとだけ…いいよねー?」
「は、はい…」
この人はいろいろ怖そうだからあとでもう少しだけおもちゃになろう……いや、決してされたいわけじゃないから。されたいわけじゃないから!
「早速ですがお仕事の話となります。テルマッド様でよろしいですか?テルマッド様は付添人の話を聞いているかと思いますが彼女が此度の任務遂行を任されたダリアンです。案内人も兼ねておりますので指示に従ってください。」
やはりか。彼女が案内人兼裏路地の刺客ということ。基本この世界線でも獣人は下賤なものとして扱われる。そんな獣人でも力があれば関係なしというのが裏のやり方というわけなんだな。
「はーい!ごしょーかいに預かりました、ダリアン……です!!ハイ拍手ー。」
「わー。」
バーテンダーさんが拍手したので俺も急いで乗っかる。だって拍手するとは思わないじゃん?変な空気になるのがアニメのテンプレじゃん!?
「私の特技はこの子達の扱いだよー!何年も連れ添ってるから見た目こそよろしくはないけど威力と耐久度は見ものだからね!」
「へえ。……あ、僕はテルマッドっていいます!ちょっくらお使いで館の石を盗りにいきます!特技は……未熟な魔法ぐらいですかね?」
おー。とパチパチ拍手するバーテンとダリアンさん。
そして俺たち2人はバーテンさんに視線を送る。
「…ん?あ、あぁ。俺の名はエスパルドという。この店のオーナー兼裏路地の情報屋だ。といってもそんな大層なものでもないがな。」
おー。と拍手する俺とダリアンさん。それにしても情報屋かー。なんかかっこいい。昔から情報屋とかスパイとか憧れたんだよな。
「早速だけど侵入経路の話です!」
そう切り出したダリアンさんは元気いっぱいな感じで侵入経路についてお話ししてくれる。
まずこの店の地下から貴族が住まう1等地まで進む。この店の下水道は1等地まで繋がっているというから流石に驚いた。その下水道から出るとある館の裏庭に出る。その裏庭にはまた地下通路が設置されていて、その道路を道沿いに進むと長ったらしい名前の富豪が所有する館に到着。
「っていう寸法だよー。質問は?」
「はい。昨日スラムであんな事件がありましたけど警備の方は大丈夫なんですか?」
そうだ。昨日俺とヤハーナさん、そしてあのおっさんとの戦いで5.6.7番路地を造っていた家々は完膚なきまで滅され跡形もなく消え去っているらしいのだ。そんなことがあって貴族の警備がこれまでと同じなわけがない。必ず人員を増加し、戦力の拡大を狙っているだろう。
「あー。うん、そのことなんだけどさー。」
彼女は視線がさっきよりもチラチラと周りに行き、落ち着きをなくす。謎の汗が垂れてきてかなりの焦りが見え隠れする。
「どうなんだ?」
「……アントラキスタス家の館警備員は昨日より100人くらい増えてるというか……」
バーテンさんに先を急かされようやく口を開いた彼女は面白い冗談を言った。とても笑えない。アホか!昨日の偵察時点では40人ぐらいかな?とか思ってたわ!
「まあ、それぐらいなら予測範囲内だろう。」
エスパルドさん、エスパルドさん!100人増えることが想定内な訳がないでしょ?なんなのその余裕そうな顔!まさかうちの村の人と同類な感じ?
「いや、100人も増えると思ってなかったよー。作戦には支障が出ないと思うけど流石に驚いたよね。」
作戦には異常が出ないんかい!!
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「こっちだよー。てるくーん。」
俺たちは下水道を通っていた。店のトイレを退かすと扉がありそこから下水道へと入るのだ。しかしなんなんだ、この異臭。下水道だからか?ならなぜダリアンさんはあんなに元気いっぱいなんだ?
既にかなりの距離を歩いたはずだ。流石に1等地まではスラムから遠いとは思っていたけどここまでとは思わなかった。
その下水道は何本もの分かれ道があり所々の天井に入り口が置いてあり、そこから微かな光が見え隠れする。俺もそろそろ異臭を変に思わなくなってきた。慣れは怖い。
「さてそろそろだよー……あ、あれだね!」
彼女は嬉々として前方を指差した。それはどの入り口とも変わらず普通のマンホールのようだった。そのマンホールに行くためのハシゴを登ったダリアンさんがゆっくりと鉄の蓋を持ち上げる。ザッと光が俺に降り注ぎ一抹の不安を消し去る。
彼女が先に外に出てその丸い窓からこちらへ顔を覗かせ俺に手招きする。その後を追うように俺はハシゴを登り彼女の手を借りて外へへと出る。外はどこかの屋敷の庭園だった。
蝶がひらひらと周りを飛び、全く手入れのされていない乱暴に生え散らかした花々へと食料を求めて吸い付く。その庭園はかつての栄光を失い見栄えも最悪となった貴族屋敷だった。
「こ…ここは?」
「かつてのバイル=フィン=アルドゥトス領主の別荘だよ。そうだね……今の裏路地を仕切るボスのお父さんの家だね。」
「えっ?!」
ウォール街の裏を仕切る彼は元貴族だったというわけか?しかしなぜ息子の彼はこの家を継がず裏を牛耳っているのか。全くわからない。
「ま、そんなことはいいでしょ。この噴水をどけてみてね。」
俺はどこかに引っかかりを覚えつつも言われた通り噴水をどかそうとする。案の定重すぎてこんなもの1人では到底運べない。
「ちっがうよー!水属性魔法で水を出してこの噴水の周りを満たすんだよ!」
「わかりませんよそんなの!」
はいはいならちゃっちゃとやる!と言われ俺は渋々水を出す。中級魔法なら全属性完璧なのだ。ありがとうドSツンデレ魔女!
すべてを満たした時だった。その噴水は周りを満たした水を吸い取るとその身をゆっくり2つに割った。割れた後の地面から出てきたのは地下へと繋がる扉だった。
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その扉はずっと一方通行だった。明かりはないので俺が灯す火で周りを照らす。虫なども一切おらず、ただ湿気った匂いがこもる。地下通路に比べたらマシなものだ。
「あったよ。ここが館の入り口。」
ようやく到着したアントラキスタス家の秘密の裏口。なぜこんなものがあるのか不明だが、厳重に鍵がかけられており、その上魔力まで感じるそのドアは俺如きでは決して開けることが出来なさそうだった。
「こ、こんなのどうやってあげるの?」
「まあ、みてて。」
彼女は一言言うとその扉に向かって歩く。厳重にかけられた南京錠を一つづつ、どこからか取り出した鍵束の当たりを見つけて難なく鎖を解いていく。
とうとう鎖がすべてなくなった。しかしまだ魔力が感じる。
「これはね。一般人がそのまま触れれば警報がなってこの通路は袋とじにされる。魔力を帯びているんだ。だから普通の人ではそのトラップに気づくことすらできない。よくそんなことを考えたよね。父は…」
最後にごにょごにょと聞こえない程度の音量で彼女はトラップの存在を明かした。やはり俺は最近魔力を感じれるようになってきた。存在する魔力に体がピリッとするのだ。特に痛いわけでもないが、ただそこに何かあるということだけはわかる。
しかし解除はどうするんだ?
「ねえ、どうやってかいじょ……」
彼女は扉の結界へ抱きつく。結界は丸く半円形となっていて彼女はその表面へ大の字になり体を寄せる。その時俺は結界になりたかった。
時間が経つにつれどんどん結界は色を失くし、ところどころが蜘蛛の巣のような網目になり、最後はトロトロと溶けていった。
「これはね、特殊な人間にしか解けない罠なの。私はこの結界に魔力を流したのよ。それに反応した結界が使命を終えたってわけ。」
「へぇ〜」
そんな結界があることにただ単純に驚いていた。彼女はいつの間にかドアを開けていた。何の緊張感もないな。
中は半円のドーム状となっていて周りの壁は青色に発光する石で構成されていた。とても幻想的だった。その中で、もっとも俺の目を引いたのはドームの真ん中にある石だった。




