レストランにて
遅くなってすみません!
「んぐっ…っは!」
どのぐらい寝ていたのだろう。俺が奴と戦ってからヤハーナさんが助けに来てくれて…そのまま闇に落ちたんだっけか。それにしても気を失っていたのになぜあんなに暖かかったんだろうか。
俺は周りを見渡す。多分ここは宿だな。布団が左手にもう一つ置いてあり、右を見ると大きめの窓があった。立ち上がりそこから外を覗くと綺麗な庭園だった。日本のお寺とかの庭…みたいな?
部屋は広く、奥手を見るとベランダのように1枚扉が挟んであった。
「なんだ、あこ。」
俺の好奇心は誰にも止められないぜ!というような勢いで扉を開ける。ほんのりと湯の匂いが俺の鼻をつつく。その勢いで柔らかい彼女の香りも未だ小さい体を包んだ。
「な、なにしてるんですか!!」
中はヤハーナさんだった。案の定俺は彼女の左手で体を押される、まだ魔力切れの感覚が残る身では到底耐えることはできない。
これは事故だから仕方ないよ。だって扉開けたらヤハーナさんがお風呂に入ってるなんて聞いてないしそんなテンプレ……ヤハーナさん最近成長したよね。なにがとは言わないけど。
「俺も風呂入りてえ。」
布団に寝転び仰向けになった俺はこの前のこととこれからのことについて考える。あのおっさんは普通に強かった。やはり俺はまだまだ弱かった。弱すぎた。その結果ヤハーナさんに助けてもらうことになってしまった。なんだがすごく心にきちゃうなあ。メンタル弱かったんだな、俺。あとキスのことは忘れといてほしいよね。
これからについてだけど、俺が何時間寝てたか知らないが早急に路地へ行かなければ約束に間に合わないだろう。いくら俺が『月蝶』だとしてもこの程度のことで信用が落ちないはずがない。ヤハーナさんに黙っていくのも気が引けたので上がるのを待つ。
10分後ーー
「ふぅー、サッパリしました。また覗いたりしてませんよね?」
「さ、さっきのは事故でしょ?」
彼女の疑い深い目に見据えられてどこか緊張した俺はことの発端と時間について聞いた。
「……というわけです。私はかなり頑張りました。」
「ほんとーにありがとう!それで今って何日めの何時?」
「はい。坊っちゃまが気絶してから1日が経っております。時刻は午後の2つほどですかね。」
なかなか眠ったな。魔力切れで気絶とか初めてだったためどれぐらい寝るかわからなかった。けど1日も眠ったわけではないので予想を上回ったといえば上回った。
「もうそろそろ行くよ。」
意識も既に覚醒して体の調子も戻った。あとは例のレストランに向かって獣人族のエリートメガネっ子に会うだけ。
「そうですか。昨日のように無理はいけませんよ」
「はーい」
なんやかんやで俺のこと心配してくれるヤハーナさんは1番の天使だと思う。けどあのおっさんとヤハーナさんの戦いを見れなかったのは残念だった。あのレベルの人たちが殺りあえばどんなことになるんだろうか。ヤハーナさんの強さを見たことがない俺はそんなことを思いながら3番路地へ入っていた。
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本日の裏路地は酷く汚れていた。瓦礫やガラス片などが散らばりウォール街の群馬で出動していた。その俺もあまり思い出したくない記憶が蘇ってしまう。
「リンダさん…息子さんたち、そして俺のことを助けてくれたスラムの人達。」
声に出しちゃうともっと悲しくなる。ダメだダメだ。こんなの俺じゃねえ。メンタルが強い俺だろ?ならもっと元気にいこうぜ!
「ここか。」
話に聞いていた通りの汚いレストランだった。看板は汚れに汚れガラスが砕け散り、外に置いてある椅子も粉々となっている。
『我ら子牛となり反抗する者』
俺はレストランの扉近くに立ち、教えてもらった通りの合言葉を言う。なかなかイカしたこの合言葉は結構気にいってたりした。
「はいれ。」
少しも経たずに扉が開きちょび髭のおじさんが少しだけ顔を出した。その目はまるで殺し屋のような目だ。俺はそのおじさんのあとに続き中に入る。
中はいたって汚かった。横ではファミリーレストランのように大きめのテーブルがいくつもあり、長椅子が設置されていた。
入り口から正面に見えるのはバーのようなカウンターだった。さっきのおじさんは黒色のバーテンダー服を着用していて、ゆっくりとした足取りでカウンターの中へと入りこちらへ来いと手で合図する。
「し、しつれいしまーす」
軽く会釈した俺は内面ビクビクしながらカウンターの方へ歩いた。2.3歩ほど歩くと先客が1人いるのがわかった。その姿はまさに武器商人。背中には大きくカーブのかかった剣を2本交差させて背負っており腰には2丁の拳銃が備わっている。その銃の側面には魔法陣が描かれているため魔法銃だと予測する。実際初めて見たから結構興奮してたりするんだよなー。
そして何と言っても外せないプラスポイント…あの方の頭からは耳が突き出ているのだ!!もしかしてもしかするともしかしなくても、獣人ってやつか?俺があこでフラグ立てたのが良かったのか?!
俺は獣人さんの横の、2歳児には高めのイスにジャンプして飛び乗る。するとバーテンさんが1杯の水を入れてくれた。この世界のお冷は結構変わっていて、上半分を水属性魔法で凍らしてある。飲み方はその氷を備えてある棒でガリガリと削り下半分の水を飲むのだ。これをする意味がわからなすぎるんだよね。
「で、坊主がキラさんの言ってた先導者か?」
全く聞きなれない言葉に戸惑いを覚えるがバーテンさんは強そうなので質問を返しておく。
「キラさんってのがボスさんのことならそうです。先導者ってのはよくわからないですけど。」
「そうか…きみか。」
ようやく言葉を発した獣人さんはこちらを興味ありげにじっと観察する。まるで初めてイクラを見た幼稚園児みたいだ。同時に獣人さんは女性ということがわかった。しかし体格はバッガスさんほど。
しかし彼女には冷酷な雰囲気が漂っていていかにもエリートそう。俺を見る目もどんどん見定める目に変わってきたような気がする。
「………かーわーいーいー!!!」
「え?ちょっと?!」




