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上には上が。

大きな壁に囲まれた街のある路地には炎と土砂が舞っていた。素人でもわかるほどの劣勢を強いられている赤の少年は茶色の暗殺者が起こす砂煙に飲まれようとしていた。


「ぐ、ぐぞぉ…」


「子供のくせになかなかやるな。俺もガキ相手に30%を出すのは初めてだ。」


その男はコンベアー作業のように矢を生成し、撃つ。

生成する。撃つ。


生成撃つ生成撃つ生成撃つ生成撃つ生成撃つ生成撃つ生成撃つ生成撃つ生成撃つ生成撃つ生成撃つ生成撃つ


こんなことを何回繰り返されただろうか。俺はその矢を迎え撃つのと、避けるので手一杯だった。既に対抗するための雷魔法も残り魔力的に打てなさそうだった。


やはり……強い。


俺はまだまだ弱かったんだ。天狗になっていた。一般人を軽々倒せるからといって、鼻が伸びていたのだ。その鼻が今ポッキリと折られてしまった。


アメリカンスパイのようなおっさんに。


強い勝てない負ける死ぬ悔しい強くなりたい負けたくない仇を討ちたい殺したい。



生きたい。



「くそくそくそくそくそ!!」


ありたっけの魔力を両手に詰め込む。ありったけといえばもう全てだ。俺の体には最低限死ぬことはない程度の魔力だけ温存しておく。

右手が赤く輝き火炎を纏う。左手は金色の眩い光が電流となり、それぞれが長く太く強い槍の形に造像される。


この槍魔法、左手が『英雄(ゲイ)赤槍(ジャルク)』で右手が『英雄(ゲイ)黄槍(ボー)』だ。

しかしこの程度ではツンデレ魔法少女にどうあがいても届かない威力しか出ない。


でも死ぬならばあいつにこれを一発お見舞いしてやらなきゃ、天国にいるリンダさんも報われない。


「へぇ。ボクやるな。」


おっさんは奇怪な目を飛び出し俺の2本槍をじっと観察する。それをまともにくらうと、流石にまずいと感じたのかすぐに砂で防御壁を造設する。見た目からしてあの厚さを持ってる以上、俺の槍でも貫けない。どうすればいい…。



……なら単純に威力をあげればいい。そうだ。その手があった。身を守る盾ぶっ飛ばして小汚いおっさんの体を貫き殺してやる


雷霆神(ヴァジラ)伝説器(インドラ)


炎の槍から魔力を吸い取り対の手にその魔力を流し込む。炎の槍より雷の方がずっと威力が高くなっているはずだ。単純に魔力量を上げたからな。


その黄槍に赤槍をぶつける。イメージは黄槍の周りにサイズを小さめの赤槍の周りを高速で回転させる感じ。これで雷槍に炎の付属属性を付けてやった。魔力も雷の方に8割ほど回したのでバカ火力が出るはずだ。


この魔法は特別だ。『英雄(ゲイ)黄槍(ボー)』のひとつ上のパワーを持った魔法。その威力は黄槍などを圧倒的に超える。


というか、これ打ったら流石に死ぬわな。相手も、俺も。あの亀はまだ自分の身を盾に委ねて出てこないから攻撃を待ってるんだろうね。ドMなんだね。ならこっちから行かしてもらうぜ。


「しっねえええぇぇぇえええ!」


まばゆく光り輝いた一本の流星は轟音を掻き立てて空気を一閃し、その壁を貫き通した。その見た目はいわゆる彼の死を暗示した。

俺の放った槍は亀の甲羅のようになっていた防御壁を貫き、速さを失って途中で止まっていた。


「ふう、ふぅ…はぁ、はぁ。」


やってやったぜコンチクショウが…。


目の前の景色が薄くぼやける。路地の壁が歪みそのまま路地を出ようとする俺を迷わせる。魔力切れを起こした体はフラフラと出口に向かい歩を進めた。

その出口付近には既に何十人ものスラムの人々が野次馬となってこちらを物珍しい目で見てきた。


俺はできるだけ頭を下に下げて震えながら路地を出ようとした。その顔は笑みが絶えなかった。やはり俺は強かったんだ。その辺のエリートにさえギリギリだったが、勝つことのできる強い人間だったんだ。何がこんなに影響したんだろ?最初の異世界職業特典的なあれかな?


「っ?!」


そんなことを考えていたときだった。足元がおぼつかない俺は強大な魔力を感じ取り、寒気と恐怖に駆られながら真後ろを振り返った。


「ほう。なかなかやるではないか。一瞬焦ったぞ。」


「な、ななっ…」



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