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数日の愛

すっかり俺も異世界系人間になったなあ、と実感する。これはもう本当に本気で元の世界に帰れないのか。

とかネガティブーなことを考えちゃう俺乙女

そんなことも考えてたのは生まれてすぐのときまで。


それに今なんか勝手にキスまでしちゃうプレイボーイ?2歳児なのに?2歳児だからだよ!


リンダおばあちゃんが生きていることを知った俺は嬉しすぎてテンションが異常に高かった。その分スピードが出ていることにも気付かなかったし、このスピードについてこれる者が他にいるとも予想しなかった。


この時の俺は完全にテングだった。

力を過信していた。裏路地のボス戦の時からそうだ。村の人達が異常なほどに強いと割り切って、他は自分より弱いと…そう考えていた。


俺はあれほどまでに『月蝶』のメンバーから制裁を受けていても、上に綴った考えを微かに残していたのかもしれない。人間は相手を追い詰めた時、自らの力を見誤るのだ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



気がつけばそこは6番街路地の入り口だった。ウォール街地図は既にバッチリだぜ!

スラムinウォール街にはいくつか路地が存在する。これといって数字に意味はないんだけど、1番から12番まで路地があって低い数字から高い数字となるにつれて、本線から外れていく。そんな感じで統治しやすいように振り分けてるって感じ。


蛇足かもしれないが裏路地のボスは3番、リンダおばあちゃんは1番に腰を下ろしていた。そうなると、ばあちゃんは結構遠くまで逃げたことになる。それほどまでに相手が危険だったということがわかる。


6番も見慣れた雰囲気は変わらなかった。壁の色も入ってくる光の匂いも。

ただ違うのは1番街路地は本線の横だったので活気ある声が聞こえてたことぐらい。


急ぐ。ゆっくりと急ぐ。物音を立てず実にスピーディに。そして俺は先ほどから妙に気になっていたことがある。


この路地には誰1人…いない。


血の痕跡もないし、はてまた死体すら転がっていない。これは本当に、ばあちゃんの所在も怪しくなってきた。


数分歩いたろうか。ついに行き止まりだと思われる場所に着いた。路地の1番奥は必ずウォール街が誇る壁になっている。今目の前には山のように聳え立った石が俺を見下していた。

まるで、幼く非力な少年を見るように。


その壁の下に2つの影が見えた。人だ。

もしかして…


「ばあちゃん!!」


「ぅ、ぐっ。がっはぁ…あっ…て、テル…?」


「大丈夫?!今すぐヤハーナさん呼んでくるから待ってて!」


ばあちゃんは口から赤黒い血を吹き出し、腹から真紅の腸が顔を覗かせていた。呼吸はとても荒く周囲の酸素を一つでも多く吸収したいという感じだ。

そのあと息子の方に目を移す。こちらは既に首を失っており左突き当たりの路地に転がっていた。


俺は焦っていた。とてもこのままでは生きてられるわけがない。すぐにヤハーナさんを呼ぶため身体強化を駆けて屋根に飛ぼうとする。


「ま、まっ、まて…」


「で、でも!」


『待て……っつんてんだろ!』


え?なんだ。なんだこの言葉は?リンダが話していることはわかる。俺はこっちに来て1度も聞いたことない言語だった。それなのになぜか自動的に頭で翻訳される。


おいなんだ。どこで聞いた?


何語だ?なぜこんなに懐かしい?

なつ…かしい?


「もしかして……日本語?」


「私も、、転生、者だ…ぐっ」


俺はなにがなんだかわからなくなった。俺だけではなかったのか?もしかするとリンダばあちゃん以外にもいるのか?なぜこの人は占い師の格好をして、こんなに年老いているんだ?


しかし、その言葉は俺の体を心から洗浄した。そして泥沼ユウタを蘇らせた。彼女が言った言葉は俺の心に何かを突き刺した。何だかわからない。とても…いや絶対忘れてはいけなかった、そんなそんな大事なことだ。


息が苦しい。なんなんだ?


なぜ母さんの顔が浮かぶ?


妹の顔が浮かぶんだ?



そしてなぜ…父さんの顔が、脳内に映し出されるんだ!


「まってくれ!なぜ俺に日本語が通じるとわかった!?」


「私の…異世界特典ってやつ?」


俺が初めて盗んだ時に頭に響いたアレのことか?


「あんたぐらいの年頃なのに魔法持ってんなんて…ぅ、お、おかしいんだよね…」


老婆はヘナっとした笑顔でこちらを見据える。俺は何処からか湧いた大粒の水滴で視界が歪む。揺れる。彼女とはたった何日かしか会っていなかったはずなのに、喋ってなかったはずなのに。


「まて、しゃべんなよ!死ぬなよ!俺が助けるから!」


「いいって。これも運命なんだし…さ…んぐ…さて、これを、お前にやる。血が足んなくなってきた」


彼女はそう言って閉じかけた朱色の目で俺の体を見た。そして何かを呟いた。もしくは呟いていないかもしれない。しかし俺には何かが聞こえた。


「やるべきことをしっかりやりなさい。」


≪リンダ=アル=セントラルより称号の献上命令を確認。称号の受諾を強制します。ーーー取得完了。新規称号により新たな能力を会得。称号の効果により特殊スキル『鑑定』を習得。≫


彼女の口がピタリと止まるとまたあの声がゆっくりと流れる。この前と変わらずいつもの淡白な調子だ。以前とは違ってしっかりとこの言葉を聞いた。


嚙み砕くようにゆっくりと聞いた。


しかし彼女はもう限界だった。新しく取得したスキル『鑑定』では絶対治せない。使用して状態を見るなんてこともすぐには無理だ。

どうすればいい?もうヤハーナさんを呼びに行っても時間が足りない。


クソ!どうしたらいいんだよ、俺は!


『楽しかったよ。ありがとう。』


そう、彼女は微笑み、昔親しんだ母国語で俺に告げた。優しい声だった。懐かしい声だった。聞きなれた声だった。そして悲しい声だった。




俺は彼女の息が途絶えるまで腹の上で泣いた。腸なんてどうでもよかった。リンダは自分が逝くまでの間、俺の頭をしきりに撫でた。




だが、彼女は泣かなかった。その微笑みはどこか満足気な表情だった。




お読みいただきありがとうございます!




マッハで続きを書いたので少々至らぬ点があったと思います。


しっかり小説を書けるようになってきたら、感動させる話しかけるのかな?なんて。



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