緩い策略
ふっ…ストックが切れちまったぜ!
俺はいつかの長い廊下を踏み歩き、突き当たりの扉を目指していた。廊下の壁には一定の間隔で松明がかけられており、不安な雰囲気が一層怪しく進化し、俺の足を照らす。外はもう夕方だな。
「こんばんは!おひさしぶりでーす!」
扉の前に着くと俺は勢い良くドアを開けてご挨拶。
向こう側は一面黒焦げとなっており、まだ炭のような臭いが漂っている。未だ俺がしたとは実感を覚えれずにいる。
人の姿は見当たらず、クラウド君を助けた時から復興は進んでいないようだし、綺麗にすることを諦めたように思えた。それにどの壁を見ても扉らしき場所は見つからないし、どこか他の場所にでも逃げたのか?
ん、いや待てよ。
「ふふ、僕は知ってるんだよね。こういうのって隠し扉っつーのがあるんでしょ?」
例えばビリヤード台なんかを動かすと下へ続くドアが出てきたりとか、本棚の本を押し込むと本棚が回転して扉になるとか…っていちいち調べるのも面倒くさいしね。一発でやっちゃいましょ、一発で。時間短縮、効率重視!
『英雄の黄槍』
何本もの雷を纏った複数の槍が壁や家具に衝突し、もろもろと焦げた炭がさらに分解される。辺りに電撃が広がって元壁が崩れに崩れる。その間に砂煙りや土埃などが舞い踊り俺の視界を鈍らせた。
少し経つと、まっさらな部屋が誕生していた。そこでよく目を光らせる。すると少しおかしな崩れ方をしているところが目立った。
どう考えても開けてくださいと言ってるようなもので、この扉はこの前ボスが座っていた事務机があるところと同じ床だった。
『英雄の赤槍』
緋く火炎を灯した槍は暗くてなにも存在しない部屋を綺麗に映し出す。この2つの槍魔法は昨晩、村に戻った際シナミィさんから教えていただいたものだ。何か使えることがあれば使って欲しいと粋な計らいである。
シナミィさん…唯のドS魔法少女からドSツンデレヒロインに転職したんだね!僕は嬉しいよ!
ドガァンと何かが破壊される音が暗黒の空間に響き、破壊された扉の奥を槍の火が赤く照らしている。
俺はゆっくりとそこに向かい歩いた。
しかしそこは行き止まりだった。壁が三方向に展開されてどう考えても行き止まりってやつだ。
でもまあ、攻略方法はあるよね。
四方八方に『雷撃』を発動しまくる。ガガガッという連射音が頭に響き、反響する。
電圧に耐えきれなくなったのか右手の壁がボロボロとこぼれ落ちてそこには小さな扉が仕掛けてあった。しかしこの扉よく壊れなかったな。
それをゆっくりと開くと綺麗な小部屋が姿を現した。
そこは人が1人十分に生活できるスペースで、ベッドと暖炉、それから事務机が設置してある。
天井にはいつでも脱出可能なのか大きめの窓が備え付けてあった。その窓から外を見ると大通りから1本ずれた路地のマンホールにつながっていた。
その窓は開いており、涼しい風が部屋の籠った臭いを外へ弾き出していた。
「イライラさせないでくれよー。ただ話がしたいだけなんだよ…っね!」
ベッドを身体強化した体でひっくり返す。
そこには体を丸くして息をひそめたボスがふるふると震えていた。
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「な、なんのご用でしょうか?」
俺は小部屋の中にあったソファーに座りボスは前のイスに腰を下ろした。2歳児にそんな緊張と殺気を向けるものではないよ、まったく。
もっとマシなフェィントかけるとかさ?ベッドの下でふるふる震えられても困るんだよね。窓なんか空いてたらそっから逃げたと思うじゃん。
「あのね。アントラキスタス邸にお邪魔したいんだけど、なんかツテってある?」
唐突な提案に一瞬唖然とするボス。確かにこんなスラムにいそうなガキに街一の富豪邸に侵入させろと言われればそりゃあ口だって開く。が、すぐにいつも通りの顔に戻り、いつも通りの口調に戻る。無理してるのバレバレだけど。
「あるのはあります。ですがなぜあのような場所へ?」
「それ関係ある?」
「い、いえ。わかりました。ですがそれ相応の報酬を頂かないことにはこちらも商売ですので。」
なるほど。そこは強気なんだね、裏路地の主さんって。確かに裏路地運営は辛そうだよ。けどもっかい生まれ変われるならスラム経営者ってのも悪くないな。
「なにがご希望が?」
「ええ。少しばかりの金貨をあの富豪から掻っ攫っていたたければと。」
ふむ。金貨ねえ。ガキの手持ちでは今払えないと見たのかな?それにしても勘の鋭いやつだねー。俺が今から何かを盗むってわかったのかよ。
「わかりました。10金貨ぐらいでどうでしょう?」
「そんなにもいりません。5でどうでしょうか?」
「わかりました。交渉成立ってわけで。」
金貨5両なんぞ軽すぎるわい。普通に10でもよかったのだがなぜだろうな。例の石を取るついでに金庫でも開けますかね。ピッキングはしたことないけど…。
「でも、俺が裏切るかもしれないよ?」
お金払わない可能性だって十分にあるし、こいつなら盗れると信用しすぎるのもどうかと思うし。
「それなら安心してください。案内役を連れて行かせますので。」
なるほどね。監視役ってことか。獣人の女の子がテンプレなんだけどなあ(チラッ)
「それにもうあなたの身柄はばれちゃってますし。」
痛いとこをつかれた!
「で、ツテのお話なんだけど」
「ええ。実はあのオヤジ、私達の居場所を守る代わりに保護金を払えなどと言って、毎月莫大な金を要求してくるんです。もちろん私達だって、やすやすと場を蝕まれるわけにもなりませんので、その為に1つずつ準備をしてまいりました。これを見てください。」
どんどん大富豪の呼び名が酷いことになってくな。
そう言って彼は俺たちの座るソファーと椅子の間にある小さな机に何枚かの書類を出す。その書類にはこの街の地図が記されてあり、ありとあらゆる抜け道が書記されていた。
「まずこちらです。この3番街路地に入っていただき、奥まで進んでもらうとチンケなレストランがあります。そのレストランのオーナーに『我ら子牛となり反抗する者』と伝えてください。さすればあとはこちらで手筈を整えておきますので。」
「でもこんな大切なものを僕のために使っちゃっていいの?」
「ええ。今回その案内役がお仕事をしてくれるので。」
ほう。エリート系巨乳獣人か。悪くねえな!
「うん、ありがとう!」
なかなか頼りになるよね。裏の人達って。
俺がここに来て情報を求めたのはただの憶測でしかないけどやっぱりアタリだったようだ。この前のゴロツキに謝っとこ。
俺は再びお礼を言い、その部屋から駆け出していつもの道へ戻った。なぜここに来るまでの道を覚えいたのか、ってことなんだけどこの前ヤハーナさんと屋根の上を登って走っていた時にリサーチしといたのだ。いつか使うんじゃねーかってね。
昔から道を覚えるのは割と得意でしたから。
さ、日課としておばあちゃんのところ行っときますかー!
お読みいただきありがとうございます!
明日日付が変わる頃に投稿します。




