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親バカな親

「んーー。ついた!」


「お疲れ様でした、坊っちゃま。」


やっと帰ってきたいつもの村。なんの変わりもしなかったこの村は俺の事を何度安心させたのだろう。家に帰れば母がいて、夜になれば父が帰ってきて、一緒に飯食って…ふふ。


試練に第2段階があるなんて聞いてないよ?


「母さん!」


俺は全力で家へと帰る。俺の事を迎えに来てくれた女性のことなどもうとっくに忘れていた。とりあえず聞きたかったのだ。俺があれほどまでに緊張し、考え、焦った結果…まだ試練があるのか?と。


「おかえりー!無事クリアできたんでしょ?流石よね。さすが私の分身よねー!リハンも喜んでたわよ!」


いかにも飛びつきそうな勢いでアンジュが俺の元へ走る。


「それについてなのですが、母上。」


俺はいつもしない真剣な表情をつくる。


「どうしたのかしら?」


「第2段階があるというのは嘘ですか?嘘ですよね。嘘と言ってください!」


「ウソ…………じゃないわ。」


ちょっと期待した俺の心を弄ぶのはやめろー!心は健全な2歳児だよ?…あ、ちがうわ。体は健康な2歳児だよ?!


「う、うぅ…」


「また明日からウォール街に行ってもらいます!次のお題はじゃじゃん!」


俺の心中も知らず、意気揚々とアンジュが机にあったカゴから取り出したのは赤色によく熟れた木の実だった。木の実というよりフルーツ…果物といったほうが適切かもしれない。

1番近いのは…リンゴかな?おれも最近になって食べたので名前は知らないんだけど、


「これはアプリ!甘くてテルも食べたことあるでしょ?これを取ってきてもらいまーす。ガジャん時とあんまり難易度は変わらないから、大丈夫でしょ?」


「2度も同じようなことをする意味はなんでしょう?」


うん、それなら一度成功すれば良いではないか。しかも同じ難易度だというし、今回の試練でそれで実力が遺憾なく発揮されたわけであって自慢の息子を疑う余地はないと思うが?


「慣れてもらうためよー。なぜか貴方には罪への意識があるからね。そんなんじゃ生きてけないわよ?」


「うぅ…わかりました。」


いや、ない方がおかしくない?

しかし、ないとは言い切れない。ガジャを取ってしまった時のなんとも言えない感じが心に杭を打つ。


しかし、日本国民としてあんまり慣れちゃダメなことだとは思うけどもうここは異世界。日本の法律、憲法なんて偉大で立派なものは存在しない。ましてや盗賊なんてのが政権を持つ地域だってある。

ならばそこに適応した場所で生きていかなきゃ、俺は死ぬ。親にも見捨てられて…挙句には今の親孝行もできないまま。


「ただいまー。……テル!!帰ってたんだね!」


「おかえりなさい!とーさん!」


こんな人達でも孝行はしてあげたいし、こんな親バカでも悪くはないしね。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



翌日の早朝、天気はすこし雲がかかって降るかどうか微妙な天気だった。そんなパッとしない天気の中、俺たちファミリーとヤハーナさんは村の入り口…前回と同じ場所でお別れの挨拶をしていた。


「もう行くのかい?昨日帰ってきたばかりだろ?」


そう言ってリハンは俺に涙目で語りかける。そんな顔されたら僕もう……いや別に新しい性癖とかには目覚めないよ?


「リハン…この子は私たちの手が届かない場所にいるのよ。残念だけど見守ってあげましょう。」


「…うぅ。一昨日までまだ赤ちゃんだったのに…」


アンジュが父リハンにそっと肩を抱かれて、豊満な胸が父を包む。いいなあ。

あ、つい本音が!


「この人達はほっといていきましょう。さ、坊っちゃま。」


親バカコンビを置いてけぼりにしてヤハーナさんの馬車に乗り揺られること30分。

なかなか馬車とか馬の揺れにはなれないんだよね。


「1日ぶりだね、ウォール街。」


「さ、昨日の宿とは別の宿に行きますよ。」


この前の綺麗な宿とは別に小さ目なホテルに着いた。中は普通の宿だ。この前の酒屋とは違い、1階も泊まることのできる、実に効率の良いホテルだ。


「じゃあ、私はここにいますから。頑張って!」


「はい!」


やっぱ、ヤハーナさんかわいいわあ。うん。天使。

3階の一室から窓の外へと飛び出し裏庭へ出た俺は早速アプリを探しに市街地をウロウロし始めた。



「また来ちまったよ。」


俺はまた裏路地へと足を運んでいた。そして行き着く場所は彼女の場所だ。なぜかあの人には何かがあるような気がして仕方がないんだ。

そして吸い込まれるように軽い足取りでここまで来た。


「おお。またきたんかい。」


「こんにちは。リリスおばあちゃん!」


やはりこの笑顔には癒されるなあ。別に熟女が好みってわけではないからね。そこはご理解願いたい。


「テル坊に言っておきたいことがあるんじゃが。」


「う、うん。どうしたの?」


リリスは視線を俺の背後へずらし、言いにくそうに口を開いた。


「リンダ…リンダと呼んでおくれ。」


「へっ?…あ、うん!わかった!」


なんで急に名前が変わったんだ?そういやお付きのコワモテにはそう呼ばれていたような呼ばれてないような?



その後は究極にたわいもない世間話をコワモテの人たちを混ぜて1時間ほど話した。このコワモテさんは、ばあちゃんの息子だったらしい。名をビザリアとリザビアというそうだ。名前が似過ぎてごっちゃになるからコワモテ兄弟で良いよね。


正直、冒険者か何かだと思ったんだけどなー。すっごい魔物を討伐する話聞かされたし……いや、もう冒険者やれよ。


「さて、ばあちゃん。俺おつかい行ってくるね!」


「ああ。いってらっしゃい。」


気分も落ち着き緊張もほぐれたので先ほどコワモテに聞いたアプリを売ってそうなお店へと向かった。

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