偶然
「ごめん、葵」
「まだ..喪服だったの?」
忘れてた。
普通の服に着替えるのを忘れて、祈と一緒だったんだ。
「最近さ、湖乃実..おかしくない?」
「どうして?」
「何事にも熱くなってるっていうか..」
最近のわたしは、葵とかいろんな人に話しかけられてる。
普通に接してるつもりなのに、おかしいの?
「高校のとき、湖乃実ってあまり笑うようなキャラじゃなかったよね?」
わたしはキャラであまり笑わないのを演じているわけじゃなかった。
笑い声はうるさくなるからいやなだけ。
それで先生に、このクラスはうるさいくらす、なんて思われたくないから。
「別に、わたしはいつもどおりだけど?」
思い出した。
接しているといえば、一度だけ瑛花と関わったことがあった。
「わたし、瑛花と関わったことがある」
「?」
「朝にね、委員会で早く来ていた瑛花と教室で二人っきりになったの」
瑛花は3年生の先輩に裏でいじめられていた。
特に美術部。
美術で使っていた絵の具を瑛花がいないときに、教科書の表紙を
絵の具でぐちゃぐちゃにして..。
当然、その教科書も、一緒に机に入っているもの全部が絵の具で汚くなっている。
わたしと瑛花は席は遠かった。
ずっと本を読んでいたわたしと、一生懸命ハンカチとティッシュで絵の具を落とす瑛花。
そのうちに、見ていられなくなって、わたしは瑛花に、
家庭科の実習で使う予定だった、布巾2枚をすべて貸した。
お礼を言われたかは、覚えていないけど、真剣な目をしていた。
「その布巾..返してもらったの?」
「ううん。返してもらってないけど..」
瑛花のお母さんからは、何も貰わなかった。
布巾、今思うとどこにあるのだろう?
数日後
そろそろ秋中旬となり、外はすごく冷えている。
マフラーを首に巻いて、手袋をして、わたしは外に出かけた。
そこで、祈と会った。
祈はわたしの隣町に住んでいて、バスで3時間かかる。
それなのに、わたしの住んでる町で偶然会うなんて。
わたしは、学校ではいつもクール、クールって言われていたけど、
普段着は、スカートも多い。
初めて私服を見られた男子は、祈が最初だった。
「今から、俺たちの高校にいく」
「.....え?」
久しぶりに来た高校は、なんだか家のように暖かく思えた。
1年生のときの教室は、今は使っていないでそのまま。
わたしたちが2年生になるときからずっと、使われていない。
だから、空気もあの時と一緒。
「この席..絵の具がついてるな」
「..瑛花の席だよ。そのころの3年生にいじめられてた」
「それは俺も知ってる」
適当に席に座って、祈がいろいろと真実を教えてくれた。
「瑛花のいじめをいつもかばってくれた人..湖乃実は知ってる?」
わたしは首を左右に振った。
「水嶋先輩」
「?」
「だから、水嶋先輩がずっと瑛花をかばってたんだって」
新事実..発見?




