存在
また、みんなで集まる日になった。
この日が来るまで、瑛花のことを一切考えていなかった。
わたしは考え直した。
少しだけの力だけでいい。
全力は尽くさない。
そう決めていたのに....
「今日は、皆さんに言いたいことがあります」
葵がマイクで呼びかけた。
「今日みたいに集まる日以外は、瑛花のことは忘れてください」
葵も同じことを思っていた。
毎日、バカみたいにずっと瑛花を気にしてた。
それって、意味がないと思う。
瑛花のことも大切だけど、この高校を卒業してからの何年間かは
自分のために時間を使うのもいいんじゃないかと。
「はい」
誰かが手を上げた。
「瑛花のこと、新しいことが分かりました」
それは果奈だった。
「瑛花は、2ヶ月前に亡くなっています」
もしもそれが本当なら。
それが正解なら。
今までの苦労は何?
「わたし、遺書を瑛花のお母さんから預かってます」
~元1年生のとき、一緒だったみなさんへ~
わたしは、教室にいるのがつらかった。
いつも、声をかけてくれる友達がいるわけじゃないし、
ご飯を一緒に食べるような友達もいなかった。
それでもね、わたしはもうすぐ3ヶ月になる子供がいます。
父親の名前はわたしも忘れて、分かりません。
まだ1歳も経たない子を置いて、わたしだけ空に旅立つときが来ました。
自殺じゃないもん。
病気だから。
それでは、また会う日まで。
冬月瑛花
「わたし、瑛花のお母さんに口止めされてるんです」
わたしはなぜかを聞いた。
「クラスには迷惑かけたくないって、言ってたみたいなんで」
今日は、それだけが分かっただけで十分。
わたしたちは、予定の時間よりも1時間早く解散した。
葵と祈とわたしの3人で、瑛花の家を訪れた。
すると、喪服を着て、瑛花の母が姿を現した。
「何でもいいんです、瑛花のことを教えてくださいませんか?」
わたしたちよりも先に、母がそう言ってきた。
瑛花のこと、母もあまり知らないと言っている。
「子供は児童施設に一日中預けてます、わたしだけじゃ育てられません」
でもひとつだけ聞いた。
なぜ亡くなったのか。
「瑛花は子供を産んですぐ、子宮頸がんになっていました」
「......」
「1ヶ月の手遅れで、全身に癌が転移して、先生は手術しても手遅れだと言いました」
子宮頸がん。
女性だけに現れる癌のこと。
乳がんと一緒で、切断手術を行わなきゃダメになってくる病気。
子宮を取り除くということは、子供を産まない覚悟があってのこと。
瑛花の場合、子供を産んでからだったため、きっと...幸せなときもあったと思う。
「亡くなる前日に、朦朧とした意識で遺書を書いていました」
「...遺書」
「余命も分かってたので、止めることはしませんでした」
その話をしている間に、祈は用事で出て行ってしまった。
葵とわたしは、ひたすら意味もなく誤り続けた。
すべては、1年生のときの影でのいじめが原因でもあると思ったから。
「お葬式..まだやってないの」
「....?」
「みんながこのことに気づいてくれたら、やるつもりだったの」
お葬式、わたしたちも出ることになった。
瑛花の家庭は親戚も少なく、葬式をやるだけの人がいない。
だからって、1年生のときの一緒のクラスメイト全員と大学の一部の関係のある人。
全員を呼ぶことになった。




