Lo205.勇者よいそげ
突如街中にアンデッドが出現した混乱の中、ガイナスさんが助けに来てくれました!
ガイナスさんはハルテンで最初に出会った冒険者です! あのときは先輩として、駆け出しの私達を親切にも助けてくれました!
半年ぶりに会いましたが、相変わらずめちゃくちゃ頼もしい背中です!
相手が赤くて3倍速そうな騎士ゾンビでも、負ける気がしません!!
一方、ララちゃんがガイナスさんに向かって睨みを利かせながら言います。
「その白銀の鎧……神聖騎士だな! 何をしにこっちに来た! 何を企んでいるんだ!!」
「普通に助けに来た……と言っても信用されなさそうだな。神聖騎士への信頼も地に堕ちたものだ」
「当たり前だ! 信用できるか神聖騎士なんて!! エール様をいじめてるくせに!!」
いや、むしろボコってるのエールちゃん側なんですけどね。
どうやらララちゃんは神聖騎士の鎧を身に付けているガイナスさんを信用できないようです。私はララちゃんに言います。
「安心して良いですよ! あの人は私の仲間のガイナスさんです! そしてなんとエールちゃんのお兄ちゃんです!」
「エール様の兄、ガイナスだと……? じゃあなんでその鎧を……?」
「事情があってな。この鎧は俺もあまり好きではないのだが……」
「きっと今は神聖騎士団のスパイをしてるんです!!」
「……概ねそんなところだ」
「スパイだと……じゃあ許す!」
どうやら許してくれるらしいです。ララちゃん、聞きわけが割と良い。
そして他の孤児たちの反応は……
「ガイナス……? もしかして王族殺しのガイナスか!? 元六聖の!?」
「すげー! 本物かよ!!」
「大罪の叛逆者じゃん! 捕まえれば賞金貰えるかな!!」
何故か子供たちが大喜びしてます。いや、なんか喜ぶポイントがズレてる気がしますが。
あと賞金貰おうとしないでください。
「ところでガイナスさんはどうしてここに?」
「積もる話は後だ」
赤騎士が今度はガイナスさんに襲い掛かってきます!
ですが、ガイナスさんはその剣撃を盾で見事に捌いています!
そして敵の攻撃をしのぎながらも、ガイナスさんは会話を続けました!
「こいつはこの騒動の首魁ではない。お前はこんな小物に構っている暇はないはずだ」
「え、小物って……その人、元【六聖】のグレインフリー先輩なんですけど知らないんですか!?」
「【紅蓮の刃】ジグレインだ。当然知っている。2年前、エールに倒された」
「えと、つまり……」
「妹が倒した相手に俺が負けては、兄の面目など立たないということだ」
そう言ってる間にもガイナスさんは赤騎士の攻撃を先読みしているかのようにことごとく防ぎ、逆に反撃までしています!
これを見れば誰だってわかります! ガイナスさんが優勢です!
「黒い炎か……生きていた頃と比べて、随分と禍々しい色をするようになったものだ」
「す、すごい」
「だが動きを読むのは容易い。スペック自体は生前からさほど落ちていないが……何も考えてない相手は楽だな」
ガイナスさんの剣は相手のまとう黒い炎ごと切り裂き、相手にダメージを蓄積させていきます!
というかなんであの黒い炎平気なんですか!? 熱くないんですか!?
あ、なんかガイナスさんの剣と盾にオーラっぽいのが纏わりついてます。あれがなんか色々してるんですかね?
「お前たちは手を出すな。敵意をこちらに向けられてるだけなら対処は容易いが、やつのターゲットが分散すれば攻撃が読みづらくなる」
「あ、はい。私達はどうすればいいんですかね?」
「……そうだな。そろそろ次の動きがあってもいいが……」
次の動き? どういうことでしょうか?
そう思ってると、突然……
ド オ ン
大地が震えます。腹の底に響くような重い衝撃が大気を走りました。
私のケモ耳と尻尾がピーンと立ち、ざわっと悪寒を感じました!
今のは……一体……!?
「……動いたか」
「な、何が……?」
「おそらく、今回の首魁だ。近いな……闘技場の方向か!」
「え、闘技場?」
どうやらガイナスさんも感じていたようです。
闘技場……あそこで何か起こってるんでしょうか?
確かめるように見渡すと、闘技場の空にぐるぐると暗雲が渦巻いていました。
ここより魔障がずっと濃いです。あそこにこの異変の首魁が……
ララちゃんが焦ったように言います!
「おいマズいぞ! 闘技場にさっき避難したやつらが大勢いる!!」
「ええっ!?」
なんでそんなところに……!? と思ったんですけど、よく考えたらあれだけ目立つ建物ですし、なんとなく避難場所に選ばれても仕方ないです!
街中にこれだけアンデッドがいるんですし!
しかし今回はそれが裏目に出たわけです!
ガイナスさんは言います。
「チーちゃん、お前は闘技場にいけ。ここは俺が引き受ける」
「え、私が?」
「……これだけの異変を起こすのは只者ではない。おそらく悪神か、それに類するものだ」
「悪神ですか!?」
なんと、このゾンビパニックを起こしたのは悪神だとガイナスさんは思っているみたいです。
たしかにここからでも感じる邪悪な気配……かつて戦った悪神オオイカヅチに匹敵する気がします。
「悪神オオイカヅチを倒したお前の力が必要だ。【ハルテンの小さな勇者】であるお前のな」
「ふええええ……」
ひええ、なんか期待されてるんですか私? 確かに私は悪神を倒しましたけど……あのときは全くよく分からずに倒してしまいましたし、同じことが出来るか分かりません。
それに……懸念もあります。私は自分の手に神気を集中させました。ぼわーと出る神気。
……やっぱり出がなんか悪い気がします!
「ガイナスさん、実は私……あのときより弱体化してて、私が行ってもなんとかなるかどうか……」
「シャイナスは言っていた。お前には大きな力が眠っていると。俺はそれを信じる」
お、おう。シャイナスさんが言うなら……仕方ないですね!
というか、私がここで浄化しても魔障が無限供給されてるゾンビどもに対してあんまり力になれそうもないのは事実ですし。
カッ!
突然、闘技場からもう一つのとてつもない気配が解放されました!
圧倒的な闇の気配と、それに対抗する光の気配……!! これは……!?
「……もう戦いは始まっているようだな」
「え、戦いですか?」
「これほどの神気……特級聖女のもので間違いないだろう。おそらく、強大な敵と戦っている……」
「エールちゃんが!?」
会場の外にいても感じるほどの強い気配。既に戦いが始まっているということですか!?
「ここは大丈夫だ! 早く向かえチーちゃん!」
……どうやら迷っている暇はないようですね! エールちゃんを助けなければ!!
「頼んだぞ……俺達の妹を、助けてくれ」
私の神気はかなり弱体化してるんですけど……それでも私が行けばなんとかなるとガイナスさんは思っているようです。
……エールちゃんには色々とお世話になりました。私を牢屋から出してくれましたし、色々と問題のあるこの国でもぬくぬくと過ごせたのはエールちゃんの庇護下にあったからです。
ちょっと暴力で解決しがちで真面目なのにどこかズレてて変な子ですけど……
でもまぁ、そうですね。
そんな不器用な彼女だから助けたいと思ってるんですよね、私。
「チーちゃん! 発進します!!」
私は闘技場に向かって駆け出しました!
頭の中をダイの大冒険OP「勇者よいそげ」が駆け巡ってました!




