Lo204.紅蓮の刃、ジグレイン
私は赤い鎧の騎士ゾンビと対峙してました。
他の孤児達は、幼い年齢ながらもゾンビやアンデッドと交戦し、奮闘しています。
多くのゾンビやスケルトンはろくに武装もしておらず、動きも大したことはありません。要するに、数だけ多い烏合の衆と言えるでしょう。ですので、数でこちらが負けていたとしてもまだ優勢は保てます。
だけど、こいつは危険です。
こいつだけ剣と鎧で完全武装しており、動きも別格です。そこらのゾンビのようにのろのろ動くのではなく……速いんです!
逃げることも検討するつもりだったんですけど、この赤騎士ゾンビの速さは逃げ切れるかどうか……
赤騎士ゾンビが手に持った大きなフランベルジュを横突きの形に構えます!
構えを使う……!? つまりゾンビでありながら、人間の技を使うということですか! 思考能力があるんですかね? それとも生前の記憶をなぞってるのか……どちらにせよ厄介です!
そしてその標的は、どうやら私のようです。
……好都合です。子ども達を守るためなら、私も覚悟を決めましょう。勝算はたぶんあります。私は櫂をちゃきっと構えます。
「チーちゃん……大丈夫?」
「大丈夫かどうかは分かりませんが……なんとか対応出来ないこともないです。西蓮寺さんは私が交戦してる間に、後ろから魔法をぶっぱお願いします」
「わかった……でも何の魔法を?」
「当然、アンデッドには火です!」
私は櫂を持ち、相手に向かって突進しました! 向こうから近寄られたら、こっちの味方が危ないです。
少しでも距離を取るためにも腹を決めて、私から突っ込んでやります!
大丈夫! さっきの速さなら対応できます! にゅわーーー!!
迎え撃つ赤騎士ゾンビは私に向かって突きをしてきました!
でも今度は受けてやりません! 私はのけぞりつつその突きを避けました! そして神気を櫂に込めて、ぶっぱします!!
至近距離浄化アタック! ちゅどーん!!
私の浄化の光が相手の頭で爆発しました!
ぐらりと赤騎士ゾンビの頭が揺れます!!
「今です!」
「わかった! 【火龍の息吹】!!」
西蓮寺さんが杖から、なんかかっこいい名前に改名した炎の魔法をぶっぱします!
名前をいくら変えてもやってることはいつも同じなんですけどね!(人のこと言えない
私は神気の光で身体を覆いました!
大丈夫! たぶん耐えられます!
炎はまるでドラゴンのブレスのように大きく、直線的な軌道で進みます!
すさまじい豪炎が私ごと赤騎士を包みました!
ごうごうと燃え盛る炎の中ですが、私は神気のバリアで無事でした。ユーくんとの特訓で、火魔法への耐性がどれくらいあるかは把握しています。目の前で炎が渦巻いてるのは恐ろしいですが、たぶん大丈夫です!
これではゾンビもひとたまりも無いでしょう……そう思ってると……
爆発するような音がしました。
そして……なんと、騎士ゾンビを燃やす炎が吹っ飛んで消えました!
そこから現れた赤騎士ゾンビは多少焦げ臭いにおいがするものの、五体満足で立っていました!
「な、なんですとぉ……!?」
「効いてない……? どうして……」
次の瞬間、赤騎士ゾンビの身体から、ぶわっとあふれ出るように黒い炎が出ます!
にゅっ!? 相手も炎使いなんですか!?
「相手も火魔法……それで私の火魔法を打ち消した……?」
「むむむ、火に対して火で対抗するとは……鎧が赤いだけありますね!!」
メタ的に考えたら赤い鎧を装着してる時点で、火を使うことを想定して然るべきでした!(ただの先入観)
赤騎士を見て、何かに気付いた孤児達が呟きます。
「ねぇあれって……もしかして……」
「ああ……赤い鎧、フランベルジュ、そして炎の魔法を使う……間違いない。【紅蓮の刃】ジグレインだ……」
「ジグレイン……! でもそれって2年前に死んだはずだよね?」
「……蘇ったんだ……! 地獄の淵から……!!」
……えと、ジグレインさん? なんか知ってる前提で話進んでますけど有名な人なんですかね?
ついていけない私は孤児たちに聞きます。
「あのー……有名な人なんですかアレ?」
「知らないの!? 元【六聖】の一人だよっ! めっちゃくちゃすげー強いぞ!!」
「ついでに言うと前回の【聖王御前試合】の優勝者な!」
ま、マジですか!?
強めの色違いゾンビ程度かと思ってましたが、そんな大物だったとは……!
たしか【六聖】ってイーグレス神聖国でも最強の6人に与えられる称号ですよね。そんな人物がゾンビとして蘇ったなんて……
西蓮寺さんは再び魔力を杖に込めます。
「……よく分からないけど、相手が火属性なら水を使う。ポケモンで習ったタイプ相性」
「そ、そうですね! 水を使えば『こうかはばつぐん』のはずです!」
「業務用水魔法【高圧洗浄機】!!」
「けるひゃー!」
西蓮寺さんの杖から高圧の水がジェット噴射のようにぶっ放されます!
相変わらずぶっぱ力だけはすごいです!
その高圧の水が赤騎士の黒い炎にぶつかりました!
ぼわんっ!!!
突如として爆発するような音!
そして放たれた水が白い蒸気になってあたりを覆いました!!
その蒸気を浴びた子供たちが声を上げます!
「あっつ! 熱い!!」
「熱気がぁー!! 熱気がぁぁぁぁー!!」
「やめてーー! あつあつだよーーー!!」
めっちゃクレーム来てます!
私は神気のバリアで熱さ自体は無事ですけど、視界がもうもうと水蒸気が漂って何も見えません!!!
「西蓮寺さん! 解除!! 解除お願いします!!!」
「か、解除!」
西蓮寺さんは急いで水魔法を解除しました。水蒸気ごと水が消えていきます!
シュウウウウ……
赤騎士のまとう黒い炎は、先ほどより多少勢いは落ちましたが、まだメラメラ燃えています。
ララちゃんが言います。
「水蒸気爆発だ……!」
「すいじょーきばくはつ……?」
「熱せられた水が一瞬にして蒸気に変わったんだ! そして爆発した! それだけあの黒い炎が熱いんだ!!」
「えええええ、まじですか!? 火属性なのに水が弱点にならないじゃないですか!!」
なんと、あの赤騎士は属性相性を覆すほどアツアツらしいです! そんなんズルじゃないですか!!
というかララちゃん賢いですね。この世界の教育水準はどうなってるんでしょう?
今度は赤騎士が剣を振るい、その切っ先から黒い炎を西蓮寺さんに対して飛ばしてきました!
剣士なのに遠距離も出来るんですか!?
それを見たララちゃんが素早く種を地面に投げつけます!!
「護れ! 【耐火樹】!!!」
地面から何本もの樹が生えて、黒い炎を遮ります!
おお、植物は火に弱いと思っていましたが、その対策もばっちりなんですね!!
ララちゃんの植物魔法、めちゃくちゃ応用力があります!!!
「くそっ……【耐火樹】もあんまり保たないか……!」
それでも、ララちゃんの生やした樹は半分ほど燃え尽きました。
そして赤騎士は今度はララちゃんに向かって走り出しました!
このゾンビ……もしかしてさっきからヘイトを稼いだ人に向かって攻撃対象を変えているんですか!?
まるで機械みたいです!!!
「ララちゃん、危ないっ!」
「ぐっ!」
駄目です! 速い!! 間に合わない!!!
まさか前衛にいる私を無視してララちゃんを狙うなんて!!!
赤騎士がフランベルジュを振り上げました!
ララちゃんが! このままじゃ斬られる!!
そう思った時でした。
キィン!
剣を弾く金属音が聞こえました。
赤騎士ゾンビとララちゃんとの間に割り込むように、白銀の全身鎧を身に付けた騎士が立っていました。
そして持っているその盾で、赤騎士のフランベルジュを防いでいました。
あの鎧は……神聖騎士?
え、でも神聖騎士が1人で何故こんなところに……?
こういうときの彼らって王様の周りを護っているんじゃないんですか?
その白銀の騎士は一言言います。
「よく持ちこたえたな」
その騎士の顔はフルフェイスの兜で覆われていて分かりませんが、その兜の下からどこかで聞いた声がします。
え、もしかしてこの声は……
「後は任せろ。こいつは俺が倒す」
白銀の騎士はそう告げました。
……間違いありません! 私は、彼の名前を呼びました!
「ガイナスさん! 助けに来てくれたんですか!?」
「名前を堂々と呼ぶのはやめろ。見ての通り、潜伏中だ」
ガイナス・J・キルロード。
シャイナスさんの兄で、ハルテンで私達を助けてくれた頼りになる冒険者。
神聖騎士の鎧を身に付けたガイナスさんが助けに来てくれました!!!
(没ネタ供養)
ド オ ン
!?
ガイナス……さん?
どうして今ここに……




