Lo203.アンデッド・イン・イーグレス
ゾンビが、スケルトンが、街中で人を襲っています。
現実のものとは思えない光景です。
ここはイーグレス神聖国の首都です。
街は高い外壁に囲まれていて、魔物は入ってこれないはずです。
では何故ここにアンデッドが湧いてきたのでしょう?
「ええい!考えるのは後です!」
私はぱちんと頬を叩きます! そしてまだ呆然としてる3人に言いました。
「とりあえず現状をなんとかしましょう! ララちゃんとノノちゃんは孤児院のみんなを護りに行ってください!」
「う、うん! お前はどうするんだ!?」
「ちょっとだけ戦って考えます!」
「え、ちょっとだけって……?」
「勝てそうにないなら逃げます!」
とりあえず、相手のことを知らなければなりません。一番知りたいのは強さです。
……何気にアンデッドと戦うのは初めてなんですよね。ハルテンではココッテちゃん以外に会ったことがありません。
あのハシノ村の中も彼女以外アンデッドいなかったですし。
推測するに、自然発生するタイプのアンデッドは生前から強い人間じゃないとなれないんじゃないかと思ったりします。分かんないんですけど。
もしかして、この湧いて出てくる大量のアンデッドも強いのかもしれません。ですが私も50階層突破者ですし、それまでに魔物の攻撃を普通に食らったことも何度かあります。
そんなことがあっても、どうやらこの身体は結構丈夫みたいで、致命傷になることは無かったです!
だから、私が人柱になって敵の実力を測ります。背中に背負ってた櫂を私は抜き、構えました。
「え……? 状況がよく分かんないんだけど人に肩車されながら戦闘をするつもりなのチーちゃん」
「はい!」
「あと何でしゃもじ持ち歩いてたの……? 邪魔じゃない?」
「しゃもじじゃなくて船の櫂です! 私は常に常在戦場の心構えをしてるんですよ!」
ぶっちゃけ控え室に置いておくの忘れてました。人混みの中邪魔な荷物でしたが!
でもこうやって今役に立つならオールオッケーです! 櫂だけにね!(激ウマギャグ)
とりあえず、久々の神気ボールです! 櫂の先端に神気を集めます!!
「いきまふ! ギガンティックゴッドスマッシャー!! にゅわー!!!」
櫂の先端から、光輝く玉が発射されました! 技名は……元の技名忘れたので適当です!!
そして光の玉が人混みの中で暴れているアンデッドの集団に直撃!!
その場で光が爆発して、直径10mほどの範囲を巻き込みました!
「チーちゃん、人も巻き込んでるけど……」
「大丈夫です! この攻撃は魔障を浄化するだけなので、人間にはたぶんノーダメージです!!」
「おお……すごい」
浄化の爆発が収まりました。爆発範囲内にいたアンデッド達は糸が切れたかのようにバタバタ倒れていきます!
「やった! やりました! やっぱりアンデッドは浄化に弱いみたいです!! これなら私が戦闘面で役に立てそうです!!!」
普段、いまいち火力の低い私。最近は神気のオーラを解くことで魔物にダメージを与えることが出来るようにはなりましたが、それでは通常攻撃しか出来ずにやはりダメージは低かったのです。
うう、必殺技が欲しい。
ですが、今回のアンデッドは浄化するだけでしっかりと倒れてくれるので大丈夫みたいです!
やれます! これならやれますよ!
イージーモードです!!!
そう思っていたんですが……
大地から黒い瘴気が湧き出てきます。
そして、その瘴気は動かなくなったアンデッドに吸い込まれていきます。
ぎぃ……ぎぎぎ……
先ほどまで倒れてたはずのアンデッドが、ゆっくりと立ち上がってきました。
「復活……した……?」
「そ、そんなのアリですか!?」
動きだして再び人々を襲い始めるアンデッド達。
更にボコリ、ボコリと地面が盛り上がり、そこからゾンビやスケルトンが現れました!
「か、数が増えてます!」
「なんで地面からゾンビが生えてくるの……!?」
「分かんないですよ!」
とにかく! 人々が襲われてる以上、なんとかしなくちゃいけません!!
「チーちゃん、どうするの……?」
「幸い、浄化してから復活するまで時間がありました! ここはとりあえず時間稼ぎだけでもして、人々が逃げるのを助けましょう!!」
「チーちゃん、えらい」
「その後私たちも逃げます!!」
「チーちゃん、そういうところとってもえらい」
とりあえず方針は決まりました! 相手が復活するなら退却戦です!!
私は再び神気の光を大砲のように発射し、アンデッドを浄化します!
ぶわっと広がる光の爆発。くっ、先ほどより神気を多めに込めましたが、それでも爆発範囲はたったの直径20m程度です!
どうやら私自身、悪神オオイカヅチと戦った頃よりかなり弱体化してますね……!
私の浄化の光に包まれて、バタバタ倒れるアンデッド。しかしまた魔瘴がアンデッドを包み、再び動き出しました。
ううう、数もどんどん増えていきますし、キリが無いです!
西蓮寺さんが言います。
「わ、私も何かやった方が良いかな……」
「人が避難するまで絶対に殺傷力のある魔法は使わないでください」
「ええ……? 妨害用の魔法なんて練習してない……」
脳筋すぎませんかこの魔女?
百歩譲って水魔法なら使っても良いんですけど、ゾンビやアンデッドに水って有効なんでしょうか?
私達が苦戦していると、どこかから勝ち気な幼女の声が聞こえました!
「あいつらを潰せ! 【絞め殺しの木】!!」
地面から太い触手みたいな木がうねるように生えてきました!
そしてその木はゾンビに巻き付き、容赦なくぶちゅりと潰します!
「ララちゃん!」
「みんなは連れてきたからな! これからはこのララがゾンビどもを植物の養分にしてやる!!」
ララちゃんが応援に来てくれました!
一回戦で使ってたのより凶悪そうな木の魔法を使ってます! もしかしたらこの子、一回戦は手加減してたのかもしれないですね?
「ノノもいるぞー」
ずしんずしんと地面を揺らして足音が響きます! 土の巨人に乗ったノノちゃんも来ました!
そしてノノちゃんの後ろを見ると、孤児院の子達が思い思いに武器を取り、アンデッド達と応戦してました!
みんな無事ですか! 良かったー!
「倒しても復活するなら、動けないように潰してやればいいんだ! いくぞノノ!!」
「おー」
ノノちゃんの土の巨人がスケルトンを踏み潰します! バキバキっと骨が折れ、粉砕される音がしました!!
「手足を狙えー! うごけなくしろー!」
「ぜんぶつぶせー!」
「ぶっころせー!」
「おー!」
他の戦える孤児達も武器を振るい、アンデッドの群れを撃退していきます。
うわようじょつよい(ショタもいるけど)
孤児院の子達には避難してもらうつもりでしたが、逆に助けられてます!
エールちゃんの教育はおそろしいです!
「な、なんとかなりそうですかね……?」
「いや……どんどん増えてる……」
孤児院の子達の加勢で一瞬だけ優勢になりましたが、次から次へとアンデッドは湧いてきます! そして他のところからもアンデッドが大移動してこっちに来ました! その数は、えと……100や200どころじゃないです!!
たくさん!! 数は分からないけど、とにかくたくさんいます!!!
ノノちゃんが呟きました。
「あのときと……おなじ……」
「え?」
「どわーふのおーこく……ほろぼされたとき、こんなだった……」
ドワーフの王国? たしか滅んだというのは、ドゥ・イルツ鉄鋼国でしたよね……ノノちゃんはそのときの生き残りなんですか?
「ほんたい、いる。こいつらたおしても……いみない」
「本体? それを倒さなきゃいけないってことですか?」
私がノノちゃんの話を聞いてると、突然ゾンビに巻き付いた【絞め殺しの木】がバラバラに切り裂かれました!
「ララの生やした木が……何者だ!」
ララちゃんの【絞め殺しの木】を切り裂いて姿を現したのは、血のように真っ赤な鎧を身に付けた騎士でした……しかしその兜から覗く顔は、腐っています!
赤い鎧の騎士のゾンビ……! 強そうです!!
赤騎士のゾンビは他には目もくれず、まっすぐこちらに向かって来ました!
その手に持つのは波打つような凶悪な形をした刀剣、大きなフランベルジュです!!
このままでは西蓮寺さんが危ないです!
私は肩車してもらってた西蓮寺さんの肩を蹴り、ジャンプしました!
そして櫂を振り下ろしました!
「チーちゃん!」
「うにゃー!」
ガキィン!
私の櫂と相手の剣がぶつかります!
たたらを踏み、後ずさる私。相手も警戒するように足を止めました。
ぽとり。
剣とぶつかった櫂の先端部分が切れ落ちました。
うぐぅ……私と1ヶ月の苦楽を共にした櫂が……
「くっ、私の櫂を切り落とすなんて……恐ろしい達人です。この騎士ゾンビ……」
「チーちゃん……それ木製だからそうなるのは当然というか……」
「もしかしたら敵の首魁かもしれません! みなさん、気をつけてください!!」
私は赤い騎士のゾンビと対峙しました。
うぐぐ、強そう。でも斬れたのはほんの先端だけだし、まだ舞えます!
私は西蓮寺さんに声をかけました!
「西蓮寺さん! ここらへんの人は大方逃げました!! やりますよ! 『自爆攻撃』!!!」
「う、うん! 分かった!」
こうして私達+孤児達と、赤騎士率いるアンデッド軍団との戦いが始まりました。
まさかチーちゃんの櫂をあっさり破壊する強敵が現れるなんて……!!
とても絶望感あるシチュエーションで次回に続きます!




