Lo201.西蓮寺さんはネトゲではどんなキャラ使ってました?
さて、第五~七試合が終わりました。
あんまり見てませんでしたけど、おそらく勝った方が勝ったと思います(確信)
私達は試合会場に行くまでの通路を進んでいきます。
しかし、西蓮寺さんが途中でうずくまりました。
「どうしたんですか? 体調悪いんですか西蓮寺さん」
「……うん、なんか……風邪? たぶんそれ……」
西蓮寺さんは気分悪そうに震えながら言います。
でもおでこ触ってみた感じ熱も無いし、咳も鼻水も出てないです。
「ごめん……風邪ってのは嘘ついた……」
「緊張してるだけですね」
「うん……たぶんそう。めちゃくちゃ緊張してる……」
西蓮寺さんは見た目はクールな美少女に見えます。今もクールな表情のままです。
……でもめちゃくちゃこういう舞台に弱いんですよね。
「……チーちゃんは怖くないの? こんな人前に出て……たくさん人がいる」
「まぁ……私は幼女アバターですし」
「アバター?」
「本来の姿では無いですからねコレ」
私は本当はコンプレックスまみれだったりします。生きてたときは少なくともそうでした。
でも……
「この姿でいるときだけはコンプレックスも何も無く、本当の自分をさらけ出せたんですよね。だってこの姿、可愛いでしょう?」
「確かにかわいい……」
「つまりアレです。私は……ネトゲでお気に入りキャラを使ってる気分でこの世界にいるのです!」
「……え? ネトゲ?」
「そう、この世界はネトゲです!!!」
私はそう断言します!
いや、色々とツッコまれるところあるのは分かりますよ。ゲーム気分でやってると後で痛い目見るみたいな展開とかありがちですし。
でも……現実じゃ私は駄目駄目だったんですよ。だから多少は良いじゃないですか。ゲームのようにこの世界を楽しんでも。
「この世界が……ネトゲ?」
「VRMMO(バーチャルリアルMMO)ってあるでしょう。なんかのマシンを頭につけてゲームするやつです。まだ実現してない技術ですけど……きっと将来、こういうリアルな世界が再現されて異世界を旅できるようになると思います」
「VRMMO……オバロとかキリトとかそういうの?」
「そう、そういうのです! たぶん私達はそれを先行体験しています!!」
「……臨死体験じゃなくて?」
「……まぁそうかもしれませんが!」
「草」
西蓮寺さんが草を生やしました。相変わらず真顔ですが……でもまぁ、少し調子取り戻してきたということです!
「西蓮寺さんはネトゲではどんなキャラ使ってました?」
「……魔法使いの純アタッカー。私、ヒーラーとか複雑なの苦手だし、一番操作楽だから……」
「今と全然変わらないじゃないですか」
「全くもってその通り」
やっぱり西蓮寺さんはネトゲでは姫プしてたんですかね?
きっと介護されて火力を出すタイプです。
ならば私が西蓮寺さんの為にやることは……私は手を差し伸べます。
「あなたは西蓮寺静香ではなく……『サイレンジ・ウィッチ』です!」
「私は……サイレンジ・ウィッチ?」
「そして私はネトゲのフレ、チーちゃんです! いまチーちゃんがログインしました!」
「こ、こんばんは?」
「よろしくお願いします! ウィッチさん!!」
「よ、よろ!」
私と西蓮寺さんは手を繋ぎました。ここからはまともなバトルじゃありません。
ネトゲのバトルの時間です。
第八試合
『神聖騎士エクセル&ワート』 VS 『リュミエールB』
私達は試合会場に入場しました。
相手も入場して来ます。
相手は相変わらず神聖騎士の白銀の鎧で……よく見分けがつきません!
ですが、雰囲気はさっききなこちゃん達が戦った人たちより落ち着いていて堂々としている感じがします。
騎士の人が話しかけてきました。
「獣人……幼いな。キミ達が特級聖女様の推薦枠か」
「はいっ! チーちゃんです」
「武器もまるで玩具のようだが……それで戦えるのか?」
「たぶん大丈夫です!」
「大した自信だな……では我々もキミを侮ることはしない」
「え、侮ってください。こんなに小さくて可愛いんですよ?」
「……やはり油断ならない、か」
ひえええ、なんか冷静です! 強そうです!!
かわいい幼女の私を見て油断しないなんて……!?
前評判によると相手は若手の神聖騎士の中で最強格らしいです。
下位貴族ながらも、現場の叩き上げで兵士からのし上がってきて神聖騎士にスカウトされたとか。
なんでそんな人が一回戦で当たるんですかねぇ?
あ、聖王の作為ですね。分かります。
とりあえず仕方ないです。作戦通りにいきましょう。
配置は私が前に出ます。そして西蓮寺さんは壁ぎりぎりまで下がります。
負けたらそれで別に良いですが……せいぜい派手に散ってやりましょう!
カァン! 試合開始のゴングが鳴りました!!
「騎士エクセル! 参る!!」
「チーちゃんです! 手加減おねがいします!」
エクセルさんが剣を抜きました! 大きな両手剣です!!
ですがサイズ感では私の櫂も負けてません!
むしろこっちの方がリーチ長いまであります!!
私を目掛けて振るわれる両手剣に、私は櫂を振り回して当てました!
がぃん!
両手剣と櫂が衝突し、お互いに弾かれます。
「にゅわっ!?」
「今のを防がれたっ……!? やはり油断を誘う為の擬態か!!」
なんか言ってますけど、よくわかりません!
チーちゃんはチーちゃんなので!!
「ワート! 後ろの厄介そうな魔女は頼んだぞ!!」
「分かってる! 【炎投槍】!!」
後ろにいる騎士さんが、炎の槍を生み出しました。
この人魔法使いだったんですか! 鎧着てるから騙されました!
「西蓮寺さん! 遠慮しなくて良いです! やっちゃってください!!」
「うん。もう準備してた……やる」
私が西蓮寺さんに声をかけると、西蓮寺さんの両手杖にとてつもない魔力が集中してました!
「な、なんだあの魔力は……規格外だ!?」
「これが『魔女』の天恵か!? くっ、だがこっちの方が速い!!」
炎の槍が西蓮寺さんのところに飛んでいきます!
西蓮寺さんは呟きます。
「ぶっぱなら……私の方が速い。【暴龍津波】」
圧倒的な水量が解き放たれました! まるで津波のようです!!
水の無いところでこれほどの水遁を……!? やはり天才か!
放たれた津波は炎の槍をかき消すだけでなく、試合会場全てをまとめて巻き込みます!
ぎゃー! 巻き込まれるーー!!
で、ですが私には神気があります!
にゅわー! 神気バリヤーよ!! 私を護ってください!!!
私の身体が光に包まれました!
そして津波は容赦なく全員を巻き込みます!!
「がぱっ! 馬鹿な!? 味方ごとだと!?」
「ぶはっ! ま、まずい!! このままでは息が……!! 相手の魔法使いを仕留めないと!!!」
水中で懸命に泳ぐ騎士さん達。ふはははは! 鎧が重そうですね!!
ですが私はバリアで護られてるのでプカプカ状態です!! セーフ!!!
そして試合会場はエールちゃんの強力な結界で護られてるので観客席に水は逃げません!
つまりここは今! 水族館の水槽のようになってます!!
西蓮寺さんも水中に沈んでますけど、そのまま次の魔法を唱えます!
「がぱぱごこっ!(上級雷撃魔法)」
強烈な雷撃が水の中で炸裂します!!!
ビビビビビビビビビビビッ!!!
うぎゃー! 耳鳴りがあー!!
私は神気のオーラで護られてるからダメージは無いですけど、水中を走る耳鳴りがすごいです!!!
「ぐばあああああああ!!!」
「ぎゃあああああああ!!!」
騎士二人も感電しました! あ、死んだ。
そのまま騎士達は力を喪い、ぐったりと水に沈んでいきました!
「ぱごこ(解除)」
西蓮寺さんが魔法を解除すると、あれだけあった大量の水が消えていきました。
魔法で生み出した水って、実は魔法の効力が切れると無くなるんですよ。魔法の水なので。だから水のないところであれだけの水遁が出来たんですね。
ちなみに空気中にある水分を集めて操るなら、魔法を使っても水は無くなりません。それは実在する水なので。勉強になりましたね?
水が引くと倒れた騎士二人と、立っている私達二人がいました。
「……勝った」
「虚しい勝利ですね……」
私達はそう言いつつも手を挙げてガッツポーズを取ります。
「し、試合終了ーーー!!! なんと神聖騎士の若手最強2人を破り、『リュミエールB』の勝利です!!! なんて無茶苦茶な試合だったんでしょう!?」
ふっ、アナウンスさんも驚いています。
これが強力な魔法使いですがとてつもなく不器用な西蓮寺さんを最大限に活かした、私たちの『自爆作戦』です。
西蓮寺さんの魔法で全てを巻き込み、私達は頑張って生き残ります。
魔法使いは自分の使った魔法には強い耐性が出来るので西蓮寺さんは割と無事です。そのへんは火魔法使いが自分の魔法で火傷しないのと同じ理屈です。まぁ実は許容量越えるとダメージ受けるんですけど。
そして私は神気のバリアーで頑張って耐えます。
相手は死にます。
こんなのまともな試合になるはずもありません。
ただのクソゲーじゃないですか。
会場が呆気にとられる中、私達はクールに去りました。
はぁ……雷撃の耳鳴りで頭痛いです……ふにゅう……




