Lo184.エールちゃんに洗いざらい話すことになりました
ダンジョンから帰投!
私達が特級聖女の部屋に戻ると、エールちゃんが難しい顔で書類を読んでました。お仕事お疲れ様です。
そして私はそこにいたエールちゃんに向かって開口一番、元気よく声を上げます。
「我らエールちゃん親衛隊! ただいま戻りました!」
「……えと、親衛隊? なんですかそれ?」
「私達のチームの名前です!!」
「なるほど」
なるほど、で済ませちゃうのが実にエールちゃんらしい。そういうところは適当です。
だからこそ私も自由にやらせてもらってるんですけど。
「というか、まだ2時間しか経ってませんけど……もしかして1階で引き返してきたんですか? 5階までって言いましたよね?」
エールちゃんが怪訝な顔をします。
「え? そんな時間がかかるんですかあのダンジョン?」
「1階層あたり早くて1時間。まぁ短く見積もって5時間はかかると思ってました」
あ、そんなにかかるもんだったんですか。
え? 魔法少女パワーで1階層10分でクリアしましたが?
まぁきなこちゃんが強かっただけで私は何にも偉くないですけど。
朝でかけて、お昼前には帰ってくる。うん、ちょっと長いお散歩ですね。
「爆速で攻略して帰ってきました!」
「……分かりました。信じましょう。それで、証拠は?」
「え、証拠?」
「5階層ボスの魔石があるはずです」
「……えっと、ちょっとタンマです! 作戦タイム!!」
他3人を集めてこそこそ話をします。作戦タイムです!
私は鞄から本日手に入れた魔石を取り出しました。80階層のボスの魔石です。
「……どうします? これ。たぶん見せたら、5階層のボスのものじゃないとバレますよね?」
「うーん、どうしようもないんじゃないかな……」
「これエールちゃんに正直に言っちゃっていいんですかね? だって1階層あたり1時間かかるとかいう認識ですよ? それをいきなり80階層とか……」
「私達の力がバレちゃうよね……」
確かに、私達の力を迂闊にバラしていいんですかね? 西蓮寺さんが呟きました。
「でも……特級聖女様に隠し事はしたくない」
「Huuum、だがアヤツはこの国の人間。いざとなれば国につくのでは?」
「【勇者召喚】の儀式っていう怪しい儀式をしたのもこの国だし、神聖国は正直信用できないところがあるっていうか……」
「臭い飯も食わされましたしねぇ。この国には」
まぁ色々あって、私たちのこの国への信頼度は地に堕ちています。
牢屋にいきなりぶち込まれたり、臭い飯食わされたり、そもそも【勇者召喚】の儀式ってのが欺瞞らしいですし。
ぶっちゃけ私もまぁまぁこの国が嫌いです。エールちゃんがいなければとっくに見限ってる程度には。
そんなことを考えてると、西蓮寺さんとルナ子ちゃんは言いました。
「でも……彼女個人は信用できる。いや、信用したい」
「うん……ちょっと暴力的なところはあるけど、なんだかんだ牢屋から助けてくれたし」
ふむ、この二人は特にエールちゃんと一緒に行動することが多かったですからね。今では彼女のことを信用してるようです。
一方で、きなこちゃんも言います。
「この国を敵に回すより、アヤツ一人を敵に回す方が実際コワイ」
なるほど。きなこちゃんは戦力としてエールちゃんを危険視してるからこそ、あまり敵に回したくないようです。
この国を敵に回すより怖いとは、すごく高い評価に思えますが……まぁ特級聖女ですしそれだけすごいんでしょう。
私は3人の意見を聞いたうえで、自分の意見を述べます。
「そうですねぇ。私もこの国でエールちゃんだけは信用しても良いと思っています。可愛いので」
「可愛いで判断するんだ……」
重要ですよ、可愛さは。片目隠しの幼女かわいいです。
まぁとりあえず意見はまとまりましたし、エールちゃんには色々話してもいいでしょう!
「……と、いうことでエールちゃん。話は色々あるのですが……ルナ子ちゃん! 良い感じにまとめてください!!」
「え? 私? ここでも?」
「まぁまぁ、足りないところがあれば私が補完しますから」
「まぁ別にいいけどさ……」
私が語っても良いんですけど……なんかこう、シリアスな話するのに向かないんですよね。私って。
幼女っぽい可愛さがあふれてるせいでしょうか? わかりません。
とりあえず一番まともそうなルナ子ちゃんに任せるに限ります。
「……というわけで、エール様。ダンジョンで何があったかを聞いて欲しいんですけど……」
「わかりました。聞きます」
エールちゃんも素直に聞く姿勢になりました。
そしてダンジョンで何が起きたかを、ルナ子ちゃんが順を追って話しました。
……中略。
あらかた話し終えた後、エールちゃんが80階層で得た魔石を手に取り確認しています。
「……ふむ。にわかには信じがたいですが……確かにこれは80階層のボス、アメジストゴーレムの魔石ですね。あれはなかなかの防御力を誇る難敵でしたが、どうやって攻略しました?」
「急激な熱変化を与えて装甲を脆くして、そこに攻撃を加えました」
「……なるほど。よく分かりません。私は何度も殴りましたが……大変でした」
あ、エールちゃんも倒したことがあるんですね。しかも口振りからすると物理で強引に倒したっぽいです。脳筋幼女すぎる。
「そしてダンジョンマスターである闇龗神との出会い。ルナコとキナコの正体は魔法少女。サイレンジシズカも魔法少女になったと……よく分かりませんが、この短い間に色んなことがあったんですね」
「はい、ありました!」
「とてもびっくりです」
エールちゃんもかなりびっくりしているようです。いつも通り、あんまり驚いてるように見えませんけど。
「そして【勇者召喚】の儀式は偽り……本当の勇者は別にいると?」
「そうみたいです。その神様が言うには……ですが」
「ふむ……そうですか。ところで私も先ほど気になる情報を得たのですが……」
ふむ。気になる情報ですか。唐突に話題を変えましたね。なんでしょうか?
あ、エールちゃんがさっきから難しい顔で読んでいたその書類のことですか。
エールちゃんはその紙を広げながら、私に見せます。
それはマル秘のマークがついてる報告書でした。ほえー、分かりやすい秘密文書ですね。
「先日、ハルテン国という小国で『Sランク冒険者』が誕生したらしいのです。世界に数少ないSランク冒険者……悪神を討伐した功績が認められて昇格したらしいです」
あ、それ私のことですね。確かハルテンから旅立つちょっと前に認定されましたから……10日ほど前ですか。
今頃情報が届いたんですかねぇ。
「ですが、その『Sランク冒険者』は……アメルキア冒険王国に行く途中に突然、何らかの召喚魔法により消えてしまったそうです。ちょうど、タイミング的にはこの国で勇者召喚の儀式が行われた……一週間前と重なりますね」
「……えと、これ何の話?」
「あいどんのー」
ふむふむ……そんなことがあったんですね。いやー、偶然もあるものですね。
一方、他の3人は良く分からないといった風に首を傾げています。
「行方不明になったそのSランク冒険者の名前は……『チイ・コイト』。通称『チーちゃん』。『ハルテンの小さな勇者』とも呼ばれている……緑髪の小さな獣人の少女らしいです」
「あ、それ私ですね」
「いや、しらばっくれても…………あれ? 今認めました?」
「はい、認めました。それ私です」
私がそう答えると、エールちゃんがじっと睨むようにこちらを見つめました。
あ、なんか怒ってる感じします。静かに怒気をはらんでます。
「……なんで言わなかったんですか」
「えと、タイミングを見計らってたら1週間過ぎてました」
「ちょっと殴っていいですか?」
か、堪忍してください! わざとじゃなかったんです!!
……いやまぁ、多少は「事情話すのめんどくさいなー、また今度で良いか」と思ってましたけど!!!
というかそもそも、この国が信用できないところも悪いじゃないですか!!!
自分の身の安全を考えると、あんまり変なこと話せませんよ!!!!
「えと……ナントカの小さな『勇者』……貴方が?」
「またオヌシは……ふぁっきゅー」
「……チーちゃん、私達に言ってないことたくさんあるよね?」
あ、他3人もなんか怒ってます!?
わ、わかりました! 全部事情をお話しします! 話しますから怒らないでくださいよー!?




