Lo182.お前も魔法少女にならないか?
西蓮寺さんは自称ダークネス・ドラゴン(本当は水の神様)の闇龗神から勧誘を受けました。
「お前も魔法少女になりゃないか?」
まるでどこかの勧誘する鬼のような誘い文句です。きっと煉獄さんなら即レスで「ならない」と答えるでしょう。伯治さんもうやめて。
西蓮寺さんは少し考え、質問をしました。
「……さっきから『巫女』とか『魔法少女』とか言ってるけど、結局どっちなの?」
「りゅ……そのへんは上手く説明できりゅ気しないから……じゃあ月読命の巫女に答えてもりゃおう」
「え、私!?」
闇龗神はそう言ってルナ子ちゃんに話を振りました。
おお、このへんの投げっぷりは神様っぽいですね。
アワシマ様といい、神様って結構そういうとこあるようです。いい加減学習してきました!
ルナ子ちゃんがこほんと咳払いし、説明を始めました。良い子。
「えっと、じゃあ説明するけど……そもそも『巫女』っていうのは巫女服を着て祈祷とか信仰を広めたりとかして神社で働いてる子ってのは分かるよね?」
「うん、分かる。東方projectの博麗霊夢みたいなの」
「うん……うん? ま、まぁいいか。それでね、巫女は裏の役割として、魔を祓ったり戦ったりして人々の暮らしを守ってたんだ。もちろん全ての巫女がそうじゃないよ。戦闘特化の巫女、そういうのが昔からいたの」
ほへー、戦闘特化の巫女ですか。かっこいいですねぇ。
「で、『魔法少女』は何なのかっていうとね。これは要するに『戦闘特化の巫女』のことなの。そう呼ばれ出したのは30~40年くらい前かな? 悪魔がだんだんと強くなってきて、より強い戦闘力に特化した巫女が対策として求められた。
そこで『変身』することによって一定時間の間、より戦闘力を強化した状態の巫女が現れたの。それが今では『魔法少女』って言われてる存在」
「つまり穏やかな心を持ちながら激しい怒りによって目覚めた伝説の巫女……それが『魔法少女』ってことね……」
「あーうん、いいんじゃないかなそういうことで」
なるほど、戦闘特化の巫女が魔法少女ってことですか。それまでは全部巫女って呼ばれてたんですね。
「要するに、魔法少女ってのは広義でいうと巫女の一種ってこと。神様から貰った力を行使する、神様の代行者……それが魔法少女。私は『月読命』って神様から力を貰って、きなこちゃんは『猿田彦神』って神様から力を貰って活動してる」
「その魔法少女っていうのは、人によってそれぞれ担当する神様が違うの?」
「うん。日本は多神教だから色々とバリエーションがあって面白いよ。まぁ、一神教の海外ではまた違ってくるんだけど……とりあえず日本の場合はそんな感じ」
ふむふむ、そういうことですか。分かりやすい解説ありがとうございます。
……なんか龍の角を生やした幼女も隣で「なりゅほど……勉強になりゅ」とか言って頷いてる気もしますが、気のせいですかね?
「……それで私が魔法少女になった場合のメリットとデメリットを知りたいんだけど……」
「ああ、そりゅは……」
「教えて、月子」
「また私!?」
西蓮寺さんは神様の話を遮って、ルナ子ちゃんに聞きました。
「……まどマギの影響で、契約したらどうしても悪い結果になりそうな感じがしてならないの」
「あー……」
「信用できるのは月子だけ。教えて……」
「なんでここまで信頼されてるのかなぁ……まぁ悪い気分じゃないけど」
どうやら、西蓮寺さんは『魔法少女まどか☆マギカ』という鬱アニメを観てしまって影響を受けているようです。確かにあれを観ると魔法少女に対して嫌なイメージを持っても仕方ないですけど。
なんとなく西蓮寺さんは3話でマミりそうな雰囲気ありますし。
「えっと、メリットとしては神様の力を使って強くなることが出来るかな。デメリットとしては悪魔とかと戦ったり、呪いを浄化したりする役目を負うことだけど……」
「ん、そこりゃへんは心配しなくてもいいりょ。くらちゃんはそういうの強制しない方針りゃ。まぁ力を求めてる人に与えるかりゃ、大体強制しなくても皆戦うんりゃけど」
「……元々、魔王と戦うことを求められてる私にとっては実質デメリットなし?」
「『力ある者の責務を負う』……って感じだけど、日本ではともかくこの世界ではデメリットは薄いかなぁ」
「ジャパンだとただの奉仕活動」
「まぁ……そういう面はあるね。それなりに危険だし」
「魔法少女ってボランティアなの……? 要するに、クマ退治をするハンターみたいなもの?」
「うん……身も蓋もない言い方すればそういう感じ。日本で普通に生きたいなら、デメリットしかないかも……」
「就職には有利?」
「職歴には書けないから不利だよ……まぁ、コネでいいならいくつかルートがあるらしいけど」
「ワタシは将来甲賀の里でニンジャになるから、そのへんはOK。学歴いらぬ」
ふむふむ。魔法少女って職歴に書けないんですか。私が採用担当だったら即採用しますけどね、面白そうですし。
「まどマギのQBみたいに願いを1つだけ叶えてくれるとかは?」
「そういうのはあんまり無いかなぁ……過去に色々あってそこらへんはね」
「でもたまにお菓子くれる。スシも。お供え物おんりー」
「じゃあ……月子たちはろくな報酬も無いのに、どうして魔法少女をやってるの?」
「うーん、私は小さい頃からやってるし、なんとなくかな。まぁ、やりがいはあるよ」
「ニンジャは見返りがあってやるものではない。らいと?」
なんと、お二人ともほぼ無報酬のボランティアでやってました!
まじで熊撃ちのハンターじゃないですか! あれも1頭3000円とかめちゃくちゃ安い報酬なんですよね……専業は絶対無理です。
「あと、バレない範囲なら日常でもこっそり魔法を使っても良いらしいよ。あんまり私利私欲に使うと力を没収されるけど」
「この前ギャンブルでイカサマに魔法使ってるやついた。即没収されたが。ざ・ふーる」
「やっぱりそういうズルは駄目なんですねぇ」
まぁ、魔法の力を悪いことに使うのは駄目ですよね。そのへんはしっかりしてて良かったです。
「……私は『魔女』という天恵を既に持ってるけど、やっぱり魔法少女の方が強いの?」
西蓮寺さんが尋ねました。確かに気になるところです。少なくとも、神聖国の人達は『天恵持ち』にすごく期待しているわけですよね。
だから弱いはずないと思うんですが……
しかし、闇龗神はバッサリ斬りました。
「その天恵とかいうのは確かに強くなることができりゅが……だけどそれは偽物の希望だりゅ。そもそも神気無しじゃ魔王に対して1ミリもダメージ通らないりゅ」
「……そうなの?」
魔王相手には神気無しでは全くダメージを与えられないですか……ふむ。確かに、そうなのかもしれません。
そもそも魔王は混沌魔物と同じで魔障を纏っています。魔障を纏った混沌魔物は、物理も魔法もかなり通りが悪くなり、その時点で魔障対策として神気を使えないと無理ゲーになります。
あのとき私が会った『魔王の影』は、特別な魔障……【闇の衣】を纏っている為、ほぼ無敵状態だったらしいです。唯一通ったのは、サクちゃんがその存在全てを使った攻撃……【昇華】のみ。
転生者にばらまかれた天恵程度では、魔王に対して太刀打ちできないのでしょう。
「それに『天恵』とか言うけど、そもそも【勇者召喚】というもの自体が欺瞞だりゅ……あれはやってはいけない儀式だったりゅ」
「それは……どういうこと?」
「覚えてないりょ? お前達がどうやってこの世界に来たのか。この世界にくりゅ前に何があったのか」
闇龗神は問いかけます。私達は顔を見合わせました。
「……一週間前、とある学校の生徒がバスの事故に遭ったりゅ。新入生オリエンテーションで合宿に行く途中だったりょ」
闇龗神は語ります。それを私達は固唾をのんで聞き入りました。
「不思議だったのは、乗っていた生徒が皆行方不明になってたことだりゅ。事件当時何があったのか……警察は今も捜索を続けてりゅ……」
「……それってもしかして、私たちのこと?」
「そう、【勇者召喚】の儀式と呼ばれている呪われた儀式のせいで、お前たちは無理矢理この世界に連れられてこられたりゅ」
「それは順番がおかしいよ! だって、私達はバスに乗ってるとき偶然にも落石事故に遭って……それからここに……あれ、私達、確かあのとき死んだ、はずじゃ……?」
そこまで言って、ルナ子ちゃんが気付いてはいけない何かに気付いてしまったかのように、ハッと息をのみました。その顔が、見る見る青ざめていきます。
「落石? 現場にはそんなもの無かったりゅ。それに落石程度じゃ魔法少女が死ぬはずないりゅ。お前たちの前には……ホントは『なに』が降ってきたりょ?」
「私達の……前に……?」
ルナ子ちゃんときなこちゃんが目を見開いています。
二人がここに来て初めて、激しく動揺しているのが分かります。
ルナ子ちゃんは脂汗がしたたり落ち、息が荒くなっていました。
「あのとき……あの、とき…………っ!」
「……月子、どうしたの……大丈夫……?」
「死……そう、恐ろしい……死神の、影……小さな……女の子の……ああ、そうか。そうだった。
私達は、事故に遭ったんじゃなかった……!!」
西蓮寺さんが心配する中、ルナ子ちゃんが苦しそうに、頭を抑えながら言います。その身体は小刻みに震え、恐怖の汗が顔を伝っていきました。
「私達は…………あのとき、【魔王】に……会っていた……!!」
泣きそうな顔で、ルナ子ちゃんが吐き出すように言いました。
本作品の魔法少女の設定については活動報告でもうちょっと詳しく語ってます。知りたい方はどうぞ↓
「チーちゃん補完計画④魔法少女について」
https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/635162/blogkey/3528333/




