Lo179.爆速攻略。実際スゴイ魔法少女
76階層をずんずん進む私達。
ここに来たとき感じていた重圧も、きなこちゃんが先導する安心感からかいつの間にか感じなくなってきました。
紫水晶の洞窟はどこか幻想的ですね。
あ、なんかでっかいゴーレム。間髪入れずきなこちゃんが近寄り、雷撃のような一撃を加えます。
ゴーレムの胸部にあるクリスタルのようなものを砕くと、そのまま動かなくなりました。
なんで弱点モロだしなんですかねぇ……
「Nuuum……カタい。ヒリヒリする」
「あ、堅かったんですか。簡単に倒してるように見えました」
「イージーではない。ノーマルゲーム」
「普通なんですか?」
「きなこちゃんがこう言うときは、普通より結構強いと思う」
弱点モロだしに見えたけど、かなり堅い相手だったようです。
やっぱそこそこ強いんですかねこの階層。
「面倒だからとっとと抜ける。ふぉろーみー」
「あ、まってくださいよー」
「ちょ、きなこちゃん。私も足遅いんだから手加減してよー」
まるでおそれを知らぬ勇者のようにずんずんと進むきなこちゃんに、私達はついていったのでした。
このニンジャ、全く忍ぶ気がないです。やはり忍者ではなくニンジャなんですね?
そしてあっさり77階層。
「結構簡単に1階層攻略しちゃいましたね……」
「歩行距離、大体1km。10分くらいで踏破。魔法少女すごい……」
「やってることほぼ物理なので魔法少女とは言いたくないんですけどね」
私と西蓮寺さんは感心しました。ほんとすごいですねきなこちゃん。
襲ってきたのは、なんかデカくて堅い系の魔物ばかりでした。オーガ、ゴーレム、トロル。それらをきなこちゃんはカラテと手裏剣の物理で屠っていきます。
しかも私達はほぼ戦闘に参加してないのでソロです。
いや、戦闘に加わったら逆に危ないかなぁと思いまして。特に西蓮寺さんは(強調
ふむ、現代日本の魔法少女……ですか。成長した今のユーくんとココッテちゃんと比べたらどのくらい強いのでしょうか?
少なくとも5か月前のユーくんと比較すると、きなこちゃんの方が強い気がするんですけど。
ところで疑問が一つ。
「なんか迷うことなく道を進んでますけど、なんで正解の道進めるんですか?」
「どんとしんく、ふぃーる(考えるな、感じるんだ)」
「ぜんぜんわかりません!」
きなこちゃんが言ったのはブルース・リーの名言「Don't think, feel」だと思うんですが、もうあんまり知ってる人いないと思います。古いネタなので。何十年前のネタですかこれ?
「えっとね、なんかこう……魔力の流れに沿って強い方に向かってるというか。私達魔法少女はそういう探知能力高くなきゃ、広い街中とかで歩き回って悪いモノを祓うとかやってられないから」
「ほえー、そうなんですか」
「ここは街と違って人間がいなくて建物とかゴチャついてない分、いつもより簡単かな……」
「ルナ子ちゃんもそういうの探知してるんですか?」
「あ、探知は変身しなくても出来るよ。じゃないと変身姿で街中歩くとか間抜けなことになっちゃうから」
「たしかに……そんな魔法少女いませんね」
「すごい……月子、結婚して」
「なんでここで求婚するの!?」
なんかお二人にはセンサーみたいなのが備わっているようです。ちょっと高性能過ぎませんか、魔法少女?
あと西蓮寺さんの恋愛パラメーターがぐんぐん上がってます。吊り橋効果ですか?
77階層、78階層、79階層と爆速で攻略していきます。平均ペース1層10分。難易度は76層とほぼ変わらず。
あれ? おかしいですね? こういうダンジョンってもうちょっと冒険とかして苦労して攻略していくものかと思ってたんですけど、なんかイメージと違いました。
あ、扉です。大きな扉が目の前にあります。
「80階層……もうこんなところまで……」
「来ちゃいましたね、あっさり……」
75階層に飛ばされたときはかなり絶望感あったと思うんですけど、まさかの楽勝でした。なんなんですかこれ?
「きなこちゃん大丈夫? まだいける?」
「あと1時間はよゆー」
魔法少女お二人はそう言ってました。それで疑問が沸いてきました。
「あの、きなこちゃんは変身してからすごく強くなりましたけど、やっぱその姿って制限時間があるんですか?」
「ある。ワタシは2時間」
「きなこちゃんはすごく長いよね」
「……ちょっと待って。それで……長い方なの? じゃあここまでサクサク来たけど、逆に2時間以上かかってたら……」
「……うん、ヤバかったね。このダンジョンが短くて助かったよ」
そうルナ子ちゃんが言いました。げげ、意外と綱渡りだったみたいです。
だから瞬殺を繰り返してわき目も振らずにずんずんと進んでいたわけですか……
「ちなみに……ルナ子ちゃんはどのくらい変身できるんですか?」
「変身するだけなら長い時間持つけど……全力で戦ったら3分くらいかなぁ? いや、それより短いかも……」
「そんなに短いんですか!?」
「コヤツの燃費はふぁっきん」
無敵かと思った魔法少女モードに思わぬ弱点がありましたね……
3分とかウルトラマンみたいです。
「そう……それはかなり大きな弱点ね」
「あはは、知られたら困るからあまり言いふらさないでね。変身が解けたら一般人とそんなに変わらないから」
「絶対に言わない」
「ありがと」
……この事実は知られたらヤバそうなので、まじで秘密にしとかなきゃいけませんね。もし悪い人に知られたら、確実に狙われる弱点です。
魔法少女になれることを隠してたのは、そういう側面もあったんですね……
「まぁ、現代日本ならそれほど問題なかったんだよ。そんな長時間戦うこと自体が無いからね。それでいて、悪魔は時代を経るごとにどんどん強くなっていくから、燃費の良さを犠牲にして出力を高くすることが求められたんだ」
「そう……悪魔?」
「あ、呼び方ね? 今の時代だと『悪魔』って呼ぶことが多いけど、敵の名前は時代によって様々だよ。『妖怪』『怪異』『化物』『魔物』……まぁ総称して『魔』のものかな」
「色々あるんですねぇ」
なんか色々といたみたいです。私の住んでた日本に悪いものがたくさん。
彼女達が語る日本は私の知ってる日本と同じはずなのにファンタジー要素たっぷりです。なんか聞いててびっくりですね。
「悪魔は、さ。人の悪意とかで生み出されるとか言われてて、要するに人口が増えるごとに強くなるんだよ……」
「都市部は特に強い。トーキョーはカオス」
「私達、東京の魔法少女だから強い悪魔と戦うこと多いんだよね。まぁ、その分味方も多いからなんとかなってるんだけどさ」
「へー、都民だったんですね」
「いや、今は東京ってだけで普通に田舎出身だよ。実家は岡山だね」
「あ、私は四国です。もっと田舎です」
「そうなんだ。中四国出身はあんまりいないから、私は嬉しいよー」
「いえーい」
私はルナ子ちゃんとハイタッチをします。岡山ですかぁ。意外と近いところですね。私の実家からだと車で2時間も運転すれば行けますね。
あ、なんか西蓮寺さんが若干じっとりとした目でこちらを見ています。嫉妬ですか?
「まぁそんな感じで、魔法少女が燃費を犠牲にして高出力を求められたのも時代の変化かな? 人口が少ない昔はもっと燃費が良かったっぽいし」
「へー。スーパーサイヤ人とスーパーサイヤ人3みたいなものですね。魔法少女は常にスーパーサイヤ人3で戦ってると」
「分かりやすいけど、ドラゴンボール知らない人にとっては全然わからない例え……」
「え、みんな知ってますよね? ドラゴンボール」
「まぁ知ってるけど……リアルタイムでは知らないよ?」
「オヌシら、雑談はそこまでだ」
先頭に立ったきなこちゃんが振り向いていいます。
目の前の扉は光っています。恐らくこの先に80階層のボスがいるのでしょう。
「れつごー。最初はワタシが戦うが、ボスの強さによっては月子も変身しろ」
「うん、分かってる」
「このサイレンジ・ウィッチの魔法の真髄は……?」
「広い部屋だったら使っても良いけど……くれぐれも誤射はやめてね?」
「合点承知の助」
「はい、私は応援してますね!」
「チーちゃんはブレないなぁ……」
そうして、私達はボス部屋の扉を開けたのでした。
・合点承知の助
「激おこぷんぷん丸」と似た傾向のギャル語と見せかけて、多分50年くらい前の流行語。古い。江戸時代に使われてたとかいう説もあるが定かではない。
意味は「承知した」「任せておけ」みたいな感じ。
何故か西蓮寺静香が返事として好んで使う。語感が好きなようだ。
なんでこんなことを言うやつがクラスメイトからは「クール系美人」で「高嶺の花」扱いされてるのか、さっぱりわからない。




