Lo177.黄金の光まといしクノイチ・ニンジャ
きなこちゃんがトロルに向かって一人駆けていきます!
トロルの大きさは10mほど。
こうやって数字で示すと大したことのないように思いますが、実際に見ると大迫力です!
ヒグマの立ち上がったときの身長を知っていますか?
3mです。
実際に対峙してみたら、勝てるはずの無いサイズ差だと理解できるでしょう。
まだトロルまで距離があるので、私からすると大したことの無い大きさに見えます。
しかし前を進むきなこちゃんにとっては、だんだんと近づいていくトロルはまるで巨大な壁のようなプレッシャーを感じているでしょう。
しかし、迷わず距離を詰めるきなこちゃん。
明らかに普通の女子高生ではない……戦闘経験のありそうな動きです!
そして……速い! 以前、エールちゃんと戦ったときより若干速い気がします!!
そのままトロルの足元に潜り込み、ヒジでスネを強打しました!
多くの格闘技ではヒジを攻撃に使うことは禁止されています。理由は良く分かりませんが、たぶん肘打ちが強い技だからでしょう!
きなこちゃんはそれをスネにぶちこんだのです! 痛そう!!
しかし……
トロルはその攻撃を受けても微動だにしませんでした。
全然効いて……ない……?
そしてトロルは今きなこちゃんの接近に気付いたかのように、巨大な棍棒を振りかぶりました!
ズガアアアアン!!
そのフルスイングは、思っているより数倍速く横なぎに振るわれました。
これが76層の魔物のレベルですか!? とてつもない圧力です!!!
きなこちゃんは咄嗟に腕を前に出してそれをガードします!
しかし、地面をえぐるようなフルスイングがきなこちゃんのガードの上からヒット!
そのまま勢いよくきなこちゃんは洞窟の壁に叩きつけられました!!
「きなこちゃんっ!」
私はきなこちゃんの名前を呼びます!
やはり、無理だったんです! ただの女子高生が、あのような巨大な怪物と戦うなんて……!!
きなこちゃんは……あの一撃で粉々のミンチに……
しかし心配する私と西蓮寺さんを尻目に、ルナ子ちゃんホッとしたように言いました。
「良かった。あの程度で。あれなら……多分きなこちゃんは負けない」
「……え?」
きなこちゃんが叩きつけられた壁は、その一撃で大きく凹み、周囲に紫水晶の欠片が飛び散っていました。
あんな一撃を受けて無事なはずが……?
金色の光が――解き放たれます
土煙がその光の奔流によって、吹き飛んでいきます。
光の中心には、壁に叩きつけられたはずのきなこちゃんが堂々と立っていました。
きなこちゃんは、ガードした腕をさすります。少し腫れてるのか若干赤みがかってました。少し涙目に見えます。
「……少し痛かった。きるゆー」
多少の怒気を含んだ声で、きなこちゃんはトロルを睨めつけました。
私はぽかーんとその光景を見ています。
「……え? これなんですか」
「ああ、えっと、これはね……」
「私よりずっとスーパーサイヤ人じゃないですか!?」
「そっち!?」
そうです! この金色の光……絶対スーパーサイヤ人です!!
穏やかな心を持ちながら激しい怒りによって目覚めた伝説の戦士です!!!
つまりきなこちゃんは……スーパーサイヤ人だったのです!!!
かめはめ波が使えた理由ももしかしてこれが伏線だったんですか!!?!?
「いや、チーちゃん違うからね」
「え、そうなんですか?」
「それに……ここからだよ、きなこちゃんは」
……へ? どういうことですか?
きなこちゃんは、ポケットから十字型の手裏剣のようなキーホルダーを取り出しました。
え? なに? 忍者ごっこのおもちゃですかねアレ?
きなこちゃんがその手裏剣を握りしめると、更に金色の光が強くなりました!
うわ、まぶしっ!
――≪変身≫――
小さくつぶやいたその声が、妙に大きく響きました。
きなこちゃんがまばゆい光の繭に覆われていきます。
そして、やがてその繭から解き放たれるように、きなこちゃんが再び姿を現しました。
その姿は……ニンジャです!
光の繭の中から、黄金の光まといしクノイチ・ニンジャが現れました!!
「ニンジャです! きなこちゃんが可愛いニンジャコスプレしてます!!」
「えと、というかいま、『変身』って……?」
「ごめんね、二人とも。今まで秘密にしてて。私達は……」
ルナ子ちゃんが言い切る前に、きなこちゃんが動き始めました。
速い! 今までと次元の違う速さです!!
その速さはまるで雷のようです!!
動きの鈍いトロルは全く反応できてません!!!
そしてきなこちゃんが手の指をピックのように構えて、その一点でトロルの膝を突き刺しました!
金色の光をまとったその一撃はあっさりと膝を貫き、骨をベキリと折ります!
「グギャアアアアアアアアアアア!!!!?!?」
トロルは悲痛な叫び声をあげます。そして膝からガクリと崩れ落ちました!
きなこちゃんはその間に、トロルの背をタンタンっと登っていき、トロルの肩に乗りました。
その手にはいつの間にか、きなこちゃんの身長ほどの巨大な手裏剣が握られてました!
「あれは……いわゆる『風魔手裏剣』!?」
「風魔手裏剣……!」
「なんかニンジャの漫画とかでよく使われてる、ちょーでかくてカッコイイ手裏剣です! 風魔一族が使ってたとか言われますけど、現実であんなの使ってる忍者は絶対にいません!! つまりフィクションの武器です!!!」
「フィクションの武器……でもかっこいいかも」
「はい、かっこいいです!」
私と西蓮寺さんが風魔手裏剣を見てワクワクします。かっこいいですよねアレ!
きなこちゃんは風魔手裏剣を振りかぶり……トロルの首に至近距離からぶつけました!
いや、近いですよ!!? もっと遠くから投げるものなんじゃないんですかアレ!?
手裏剣が押し当てられたことにより、トロルの首はザクッとはねられました!
ずしんと首が落ち、コロコロ転がっていきます! ひいいい、殺伐!?
「wi、終わった」
きなこちゃんがトロルの肩から飛び降ります。
首を失ったトロルが消滅していきます。あ、そっか。ダンジョンだから魔物の死体は残らないんですよね。
あとに残ったのは、魔物の魔石だけでした。
きなこちゃんは魔石を拾って戻ってきました。
ルナ子ちゃんが声をかけます。
「大丈夫そう?」
「おーいえー」
今しがた強大な魔物を倒したというのに、あまりに普通な『日常』のようなやりとり。
これは一体……ただの女子高生ではありえません。
ルナ子ちゃんが言いました。
「……私達、実はね……」
「ニンジャソウルによって目覚めたニンジャなのだ」
「そうだったんですか!?」
「違うからね?」
きなこちゃんが余計な口をはさんできましたが、ルナ子ちゃんはすぐに否定しました。
ニンジャソウル関係ないんですね。
「実は……『魔法少女』なんだ。私達」
「え、まほーしょうじょ……?」
「『クラスのみんなには、内緒だよ♪』……なんてね」
どこかのアニメで聞いたことのあるような台詞を言って、ルナ子ちゃんは悪戯っぽく微笑むのでした。




