Lo172.エールちゃんにシゴかれつつ一週間経ちました
特級聖女リュミエール様の奴隷兼メイドになった私達。
今ではクラス1のクール美人である西蓮寺静香さんも勝手に傘下に入り、自らの意思で奴隷の首輪を嵌めてメイド服を着ています。
私は彼女に問いました。
「いや、それでいいんですか貴方?」
「……なんか、仲間外れ嫌。どうせなら私も奴隷になりたい」
いやでも、自ら奴隷堕ちとか。いいんですかねこれ?
「あの、なんでですか? そうなるしか無かった私達と違って、西蓮寺さんは元々優遇される立場なのに……」
「一国に囲われてる以上は、クラスの他の人達も奴隷みたいなもの。……結局は誰の首輪を選ぶか。ならば自分の飼い主は自分で選びたい」
ふむ、なかなか含蓄があることを言います。実はこの子、頭よかったりします?
「……特級聖女様は私に似てる」
「え、そうですか?」
「強いけど、孤立してる。あの子はきっと私だ……」
西蓮寺さんは遠い目をしてそうしみじみと言いましたが……多分、いや全然似てないと思います。
だってこの人弱いし……わりと見掛け倒しのポンコツの陰キャじゃないですか?(酷
でもまぁ、思うのは自由です。そういうことにしときましょう。
とりあえず、私個人の思惑としては「ユーくん達の救助待ち」という方針は変わりません。
その上で、出来ればエールちゃんは味方につけたいところです。彼女が仲間になれば、おそらく魔王討伐においてもかなりの戦力になることが期待されます。
彼女も私達を魔王討伐の戦力と見ているらしく、目的は一緒なのでちょうど良いでしょう。しかしお互いに利用する間柄ってのは少し寂しいですね……
もし彼女が心を開いて事情を話してくれたら……
……でも、それが出来るのは私では無いかもしれませんね。
そんな感じで一週間経ちました!(はやい
この一週間、私達はエールちゃんの部屋で寝泊まりし、エールちゃんに特訓でシゴかれ、エールちゃんの仕事についていき、メイドっぽく掃除もしたりして色々ありました!
あ、訓練以外は割と自由にしていいらしく、私は絵を描くための画材を買ってもらったのでご満悦です! 他の人はエールちゃんの仕事についていくときもありましたが、私はケモ耳なので免除されてます。
まぁイーグレス神聖国は人間至上主義国家なので、あんまり私は表に出ない方が良いのだと思いますが……暇なときはお部屋でお絵描きしてるので満足です!
エールちゃんは特級聖女なので実は結構仕事を抱えており、魔障で穢れた土地の浄化や怪我人の治癒、会議や式典への参加が色々あるらしいのです。特級聖女は暇ではないのです。
でもまぁ、そのへんの話は割愛しときます!
何故なら私、参加してませんからね!!(どやぁ
お外で人前に出る仕事はきなこちゃんも私と同様に戦力外通告されることが多く、そういうときに付き従うメイドは主にルナ子ちゃんと西蓮寺さんの二人でした。きなこちゃんは奇行が多いですからね。
それにあの二人は見た目が良いので、なんかエールちゃんも使い勝手が良さそうでした。
特に西蓮寺さんは私達の前ではポンコツっぽく見えたのに、他人が見ているところでは結構シャンとしてるらしく、周りの評価はめちゃくちゃ良かったりするようです。外面が良すぎて詐欺です。黙ってればクール美人なんですよね。
そして西蓮寺さんがあえて奴隷の首輪をはめた意味もわかりました。どうやら聖王派のお偉いさんから戻ってくるように言われてたらしいんですよね。
聖王派としては、『魔女』の天恵持ちであり高ステータス、更に見た目も美人な西蓮寺さんをどうしても手に入れたいようです。見かけ上のスペックはクソ高いんですよこの人。残念ながら。
でも西蓮寺さんは「私は特級聖女様の奴隷ですので」で切り抜けました。奴隷の所有権はエールちゃんにあり、自分の意思では抜けられないのです。つまり、聖王派はエールちゃんを説得しない限り西蓮寺さんを手に入れることは出来なくなりました。
エールちゃんは当たり前のように手放す気ゼロなので、西蓮寺さんは奴隷でありながらもエールちゃんの庇護下でぬくぬく過ごしております。か、賢い……なんて処世術……サイレンジ・ウィッチ恐るべし……!
そして気付きました。
あれ、もしかしてこの4人の中で私めっちゃ使い勝手悪い子なのでは……?
ま、まぁ、そんなことは良しとしましょう! ほら、私絵が描けますし!!
さて、今日は朝からエールちゃんが私達を集めて言いました。
「そろそろ実戦しましょう。貴方達4人でダンジョンに潜ってください」
「えええええっ! ダンジョンですか!?」
突然こういうことを言い出すんですよね、この幼女!
「これまで訓練はしてきましたけど、貴方たちのレベルは1のままです。それは何故かというと、魔物を倒さないとレベルが上がらないからです」
「そうなんだ……」
「だからある程度戦えるように訓練をしたら、後はガンガン魔物を狩るのが強くなるコツです。これからはガンガン強くなってもらいます」
「ho、テーマパークみたいでエキサイティング」
うむぅ、きつい訓練と魔物退治。どっちが良いかと言われると悩みますね……きなこちゃんは乗り気ですけど。
「攻略するダンジョンは全100階層となります。今回これを攻略してもらいます」
「100階層!? そんなにあるんですか!?」
「はい。神聖国内最大のダンジョンになります」
「なぜそんなダンジョンを……?」
「一番近いからです」
「それなら仕方ないですね!」
なんか東大受ける理由に「一番近い大学だから」って言ってる異常者みたいですね。まぁ、近所にあることは重要です。なんせ近いので。
「5階ごとにボスがいて、倒せば宝箱を貰えます。そして帰還のポータルクリスタルも5階ごとに配置されていて、ボスを倒すごとに使用できる階層が増えます」
「つまり途中離脱しても、最初からじゃなくて5階層ごとに再開できるってことですか?」
「そういうことです」
「まるでゲームみたい」
はい。まぁダンジョンは神様が作ったとか言いますし、そこに作為があったりするんでしょう。
つまりゲームみたいなダンジョンも、「神様がそう作ったから」でしか無いと思います。
西蓮寺さんがダンジョンについて質問をします。
「……ボスの周回狩りは出来る?」
「同じボスは1人1日1回までです」
「効率狩りは無理、か。可能なら宝箱マラソンになってた」
「ネトゲ廃人の発想ですねぇ。私は嫌ですよ、周回プレイ」
まったくもう。近頃の若いもんはすぐ効率プレイに走りたがる。困ったものです。
「とりあえず今日のところはお試しなので日帰りです。5階層のボス倒したら帰ってきてください」
「エールちゃんはついてこないんですか?」
「私は普通に仕事があります。それに私がついていっても貴方たちは成長しないでしょう?」
そう言うエールちゃんですけど、私は少し懸念があるんですよねぇ。
私と同じ考えに至ったのか、西蓮寺さんがボソっといいます。
「こういうときテンプレだと……ダンジョン内で他の人たちから嫌がらせにあったりする」
「そうですね……たぶんえっちなこともされますね」
「いや、そこまでは言ってない……」
いや、されます。絶対されます。女の子4人ですよ?
こんなのエッチなシチュそのものじゃないですか。
普段はエールちゃんがいるから怖くて手を出せない聖王派の人たちが、欲望のままに襲い掛かってきたりするんですよ、きっと。こわい。
しかしエールちゃんは言います。
「たぶん大丈夫でしょう」
「え、何でですか?」
「チーちゃんがなんとかするはずです」
「そう、チーちゃんが…………えっ! 私ですか!?」
「普段あんまり役に立ってないので、こういうときに頑張ってください」
あ、やっぱ普段役に立ってないんですか私?
というか何で私にこんなに期待するんですかこの人!?
私、どうみてもただのケモ耳幼女ですよ!?
作中ではいきなりざっくり一週間経ちましたね。
実はこの一週間色々と絆を深めるイベントがあったはずですが、詳細を書くと完全に日常系になってしまって話が長くなりそうなのでかっ飛ばしてます。
たぶん、その間の話は単行本のおまけとかで掲載されるはずです。
尚、書籍化の予定は一切ありません。




